表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディファレントワールド  作者: へたれしし
7/13

第一章:戦闘

短い

 冒険者4人は動き出すと同時に魔術を詠唱、またはスキルを発動し始めた。

 一番前を陣取るリザードマンの男とドワーフの男はそれぞれ持った盾を掲げうすい青色の光の靄に包まれ始めた、おそらく防御アップのバフを自身にかけているのだろう。

 その後ろに居る小さなピクシーの少女は前衛2人を指さして何か唱えている。

 記憶にあるピクシーの行動パターンから推測して攻撃力と攻撃速度を上げるバフだ。

 最後のエルフの女性は弓を前に突き出してブツブツ何か唱えている。

 おぼろげな記憶から攻撃速度上昇だったと思い出す。


健吾「おい、ぼけっとすんな!ピクシーとエルフが居るのに糞うざい超級バフ使ってこないってことは少なくとも後衛はレベル80代だ、おそらく腕試し目的だから勝てるぞ!気合い入れろ!」


 健吾は呆然と敵を眺める俺に叱咤し敵についてのおおよその情報を提供する。

 健吾は敵に変身できる都合上ある程度の職業及び種族の使えるスキルを知っているのでそれを使えるレベルなどから敵のレベルのおおよその値を知ることが出来る。

 実際に部屋に行った時に分厚い攻略本が置いてあったので3人の中で一番やりこんでいるのだろう。

 ただしその攻略本はマウスパッドと化していたので今も見ているのかどうかは不明だ。


俺「すまん、霧出すから二人とも突っ込んでくれ!」


 俺は気を取り直して健吾と大樹に指示を出す。

 健吾は「わかった」と返事をし、大樹は素早く頷き赤と青の霧に包まれてる。

 そして健吾はドッペルゲンガー専用スキル『影の病い』を発動させる。

 すると次の瞬間そこには大樹と同様の黒騎士姿に変身した健吾が居た。

 どうやら相手のパーティ構成から物理主体の編成であると判断し物理で攻める事に決めたようだ。

 手を握ったり開いたりして自分の姿がちゃんと変身できたことを確かめた健吾は大樹の方を向き、女エルフとピクシーを指し自分を指す。

 本物の方の黒騎士である大樹は頷き剣を構えドワーフとリザードマンに駆け寄る。

 健吾の黒騎士は少し遅れて赤と青のバフを自分にかけた後、後衛にに肉薄する。

 そして俺も少し遅れながら敵に両手を向けて先ほど何回か練習で使った魔術を唱える。


俺「『闇の濃霧』」


 俺が魔術を唱え終わると敵全員に薄く黒い靄がかかり、赤や青の光の靄が消え紫と藍の陰鬱な光にまとわりつかれる。

 『闇の濃霧』はレベル90以上で習得可能になる大量のMPを消費して使う闇の超級魔術クラスのデバフである。

 効果は3分間敵全員のバフ・回復をデバフ・ダメージに変換&デバフ反射という使いどころを選べばどんな状況でも逆転できる強力な魔術だ。

 個人的な理想としてはお互いの体力が削れた中盤頃が効果的だと思っているのだが今回は安全かつ短期での決着を目標にしたため最初に選択した。

 この魔術にかかりさえすれば後は前衛が死なないように遠くから消費が少ない攻撃をして隙を作り、吸血でHP・MPを回復することで地味だが安全に倒すことが出来る。


(よし、仕事は終了!あとは野となれ山となれっと)


 とりあえずやれることはやったという安心感をもって戦況を眺める。

 大樹黒騎士が前衛の2人を相手取り、その間に健吾黒騎士が後衛二人を攻めている。

 大樹黒騎士の方が受けるダメージが高そうだが相手の攻撃をきちんと防御で受け止めているのでそこまで消費していないようである。

 健吾黒騎士の方はジリジリと近寄りながら魔術を唱え始めた方を狙い、前衛をサポートさせないように立ちまわっている。

 どうやら2人は数時間の練習でこの世界の戦闘に順応出来たようだ。

 自分も削っていこうかなと選んでいるとあることに気が付いた。


(あ、やべ!これ「ボス戦」じゃなかった!「PVP」だった!!)


 いつもはこの部屋ではボスとして立ちふさがり戦闘をするのでヴァンパイア用ボス補正で闇魔術の全体化という特性のおかげで少ないMPでも多人数に対抗できる。

 だが今回はPVPなのでHP上昇補正は無く、ボス特性もない。

 なので一人一人HP・MP回復薬を使いながらつぶしていかないといけないので幾ら隠したとはいえ短期決着は望めない。


(しまったなぁ・・・でもまぁとりあえず勝たなきゃいけないから今回はポーションの大盤振る舞いをしないとな・・・)


 そう思いながら今はピクシーに魔術攻撃しスキル吸血を発動させ回復しながら健吾を手伝うこととする。

 健吾がエルフの方へ攻撃の矛先を変えたのを確認した後、即座に闇初級魔術「ダークボール」を打ち出す。

 魔術はピクシーに向かって一直線・・・・には飛ばず4つに分かれて敵全員に命中する。

 そしてHPは満タンなので変わらないがMPがじわっと回復したのを感じた。


俺「へ?」


 つい間抜けな声が出てしまうがそれを気にせず俺はステータス画面を確認する。

 そこに表示された現在のHPは普段の数倍、MPは『闇の濃霧』で消費された分から吸血ダークボール1発で回復した分をたした時よりも多い数が出ていた、おそらく残り3発当たった分も回復しているのだろう。


(も、もしかしてこれは・・・・)


 そう、これは現状PVPと同じほぼ互角に近い戦闘人数であるのにボス補正がかかっている無双状態と言うことである。

 そう思い戦う2人を見ると確かにバフが裏返っているとはいえ多対一で戦っているのに普段戦っている時よりもかなり余裕があるように見える。


(あいつらもボス補正がかかってるみたいだな・・・でも俺のように回復も出来るんじゃないか?)


 そう思い試しにMPポーション大よりも回復はかなり劣るが味方全体に効果があるMPPTポーション中を使用してみた。

 インベントリからMPPTポーションを抜出し手に力を籠め握りつぶす。

 すると自分たち3人にキラキラと回復エフェクトがかかりMPが回復したのがわかる。

 見た目だけではなく体中にあたたかいものが広がるのを感じる。


(ホントに回復したよ・・・・これチートだろ・・・)


 それを見たのか外見からはわからないが驚いたのかピクシーの動きが止まる。

 その隙に健吾黒騎士が切りかかる、ピクシーは直撃を喰らいその場に倒れ体が光の粒子に代わり掻き消える。

 回復役が消えて慌てたのかドワーフが大樹黒騎士に背を向け斧を明後日の方向へブーメランする。

 大樹黒騎士がここぞとばかりに通常攻撃を連打し、バックアタックボーナスで瞬時に沈める。

 俺はその隙に闇中級魔術「ダークファイア」を使う、するとやはり全体に攻撃が行く。

 その後はもう消化試合だった、2対1で均衡していた相手に1人で敵う訳ない。

 リザードマンが落ち同時に女エルフも落ちた、そして敵は誰も居なくなった。


(・・・・ゲームの時なら「余裕」だろうけど実際にやると緊張感がやばいな・・・・)


 もう何も来ないことを確認して俺は王座にドッと倒れこむように腰を降ろす。

 体は特に疲れているわけでは無いが頭に靄がかかっているような気疲れを感じる。

 勝てる戦いだというのはわかってはいたがそれでも命がかかると全く別物になると言うのがよくわかった気がする。

 健吾は元の姿に戻り多少疲れた顔をしながらもHPポーションを飲んでいる。

 大樹はその場に胡坐で座り込み手前の地面を見つめボーっとしている。

 少々大樹が気になったのでちょっかいをかけることにする。


俺「おい、大樹」


 俺は大樹を呼び、手に持ったポーションを投げつける。

 ポーションは振り向いた大樹の顔面に直撃し割れる。

 そして柔らかな光エフェクトに包まれ回復できたことが確認できた。

 大樹は当たったあと少しの間固まっていたがため息をつくように頭を下におろした後すっと上げいつの間にか持っていたMPポーション小をお返しに俺の顔面に投げつける。

 ポーションのガラス瓶は魔法で作られたもので割れてもすぐに消える。

 そういうシステムで良かったと俺は顔をぬぐいながら思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ