プロローグ:転機
少し短いです
現在の時刻は土曜の午前3時前、最初のネームドハイエルフを狩り始めたのが金曜の午後9時なのでかれこれ5時間はゲームをやっていることになる。
外では台風が近付いている影響で大荒れに荒れ、雨が窓に打ち付けられ雷がゴロゴロ鳴っているがゲームには影響がないようだ。
俺「あ゛~・・・・眠い・・・・・・・・」
大「・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺「・・・・お~い!大樹?起きてるか?」
マイクに向かって大きめな声をかける、するとスピーカーからガタンとヘッドセットが何かに当たる音が聞こえた。
そして同時に隣の部屋でゴスンと壁に何か当たる音が聞こえてきた。
大「・・・・ふわ・・・・あぁ・・・・悪いちょっと寝落ちしてたわ・・・」
俺「わからんでもないがせめてログアウトしてからにしろよ?」
大「いや、まだ少しは大丈夫だ・・・健吾は?」
俺「健吾はトイレ・・・・よし、交換終了っと」
そう言うと俺はコントローラーから右手を話し、プレイ前に机に置いたコーラが入ったコップに手を伸ばし一口啜る。
・・・・・放置しすぎたようだ、小さな氷が浮かびその分薄くなったコーラは眠気を覚ますにはいいが味は薄い。
そして結露がコップから流れ落ち出来た円形の水たまりを台拭きで拭いながらしばしばする目をこする。
俺「・・・とりあえず分け前を分配したら終わりにするぞ・・・明日も休みとはいえさすがにキツイ・・・」
大「同感だ・・・・明日はゆっくり寝て・・・・ああ・・・・明後日昼には帰らなきゃな・・・」
俺「台風通り過ぎんのが明後日になりそうって話だけど大丈夫なのか?今でさえ結構外酷いのに」
大「・・・最悪連絡網が回ってきて明日帰って来いって言われるかもな・・・
大雨が降り注ぎ雷が落ちまくる中を帰るのか・・・・」
そう言うと大樹は大きな息を吐き出した。
警察学校には日曜の夕方までに帰ればいいそうだが月曜日に点検教練なる貸与物チェックの訓練がありその練習をするために生徒同士で話し合い、昼までに帰り練習ということに決まったようだ。
大樹はやらなければならないこともあり、特に文句は無いがイベントを無視しなければならず後ろ髪をひかれる思いらしい。
俺は心の中で一般バンザイと叫んだ。
それに呼応するように外でかっと光りが迸り遅れて音がやってくる、光が見えて音が聞こえるまで3秒程度なので大体1kmぐらいの範囲で落ちたようだ。
そのようなことを頭の片隅で考えながら2人で愚痴を言っていると「はぁ~」とすっきりしたことが理解できる長い息を吐きながら健吾がヘッドセットを取りつけている音が聞こえてきた。
健「おっまた~!いやぁ~最後らへんで急に来て我慢してたから出るわ出るわで・・・」
俺「・・・すっきりしたのはいいからそれぞれに欲しい分を分けるぞ」
俺は深夜テンションでハイテンションの健吾の下ネタを無視し、イベントアイテムの分配を始める。
これはそれぞれが数を調整するのが面倒なので俺がすべて集めてそれぞれに分配するようにしたからである。
そして今俺の手元には40個の「ネームドポーション」がある、それをインベントリ内で10、10、20に分けて・・・・
とその瞬間視界が白に包まれ俺は身動きが取れなくなった
いや、それどころか耳も聞こえない、世界が白で包まれている
・・・・いや、ただ一つ分かる感覚があった・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・痛みだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
感じたことのないまるで生きたまま皮膚をはがされているような壮絶な痛みが頭の先から脚の先まで支配している。
痛みに耐えきれず叫ぼうとするも口を開こうとすると更に痛むので、叫べない。
歯を食いしばり耐えようとする、しかし強烈な痛みの波に飲み込まれる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
頭の中がその単語で満たされ・・・・・俺の意識は闇に落ちた・・・・