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ディファレントワールド  作者: へたれしし
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第一章:お休み


 俺たちはGMもとい運営と渡りをつけ、死を回避するための無敵パッチの配布を約束され、少し前までの空元気ではなく安心感で本当に元気になっていた。

 先ほどまで8時間に及ぶ聞き込みをしていたのだが疲れる無いので問題ない。

 むしろ精神的に楽になったので前よりもよくなっているくらいである。

 端的に表すと台風の日の警報が3つ出て、朝連絡網で「今日は休みです」と言われた小学生のような気分だ。

 現在俺たちは「近き王の間」にて所定の位置に待機して休憩中である。

 何も知らない第3者が今の状況を見たら玉座に座る憮然とした王とその近くで王の発言を待ち、不動の姿勢で待機する忠実な部下に見えるような構図だ。

 だがその実情外部には聞こえないパーティチャットを使いバカな話をして暇をつぶしている。


俺『そういや俺らが住んでたボロアパートの大家って今旦那の不倫で喧嘩になってて熟年離婚の調停中らしいぜ?』

大樹『あ~だから最近なんだかイライラしてちょっとのことでガミガミうるさかったのか・・・・。』

健吾『ごみの分別、町内会主催のゴミ拾いボランティアへの出席、資源ごみ回収について・・・あのおばさんゴミゴミうるさかったよなぁ・・・・あ、だから旦那にもゴミのように捨てられたのか。』

俺『辛辣すぎるwさすがの俺でもちょっと大家が不憫だわw』

大樹『大家の娘は割とカワイイのにな・・・・今21で大学生だっけ?』

俺『良く知ってるなお前・・・・さては・・・!』

大樹『大家本人が自慢してんだよ、写真も持ってきてドヤ顔で「自慢の娘だ」ってさ。』

健吾『あ~そういや家賃回収の時に自慢して来たわ、早く帰って欲しくて頷いてたらいつまでも話やがって・・・』


 ・・・などなど近況やら大家への愚痴やら、いろんな話に花を咲かせていた。

 ある程度話が落ち着いたところで黒騎士が真面目な声で話し始めた。


大樹『・・・お前ら、ちょっと聞いてくれ。』

俺『さっきから聞いてるじゃんか。』

大樹『真面目な内容だ、いいから聞け。』

俺『わかったよ・・・・で、何の話だ?』


 ここで大樹少し間を置く、そしてゆっくり自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


大樹『・・・もしも、運営のパッチ配布でもどうしようもならない事態が起きたときどうするべきか話し合うべきだと思うんだ。』

俺『縁起が悪いことを言うな・・・とは言いたいが・・・・。』

健吾『まぁ考えないわけにはいかないよな・・・それでどういったことを話すべきだと思うんだ?。』


 健吾が大樹に先を促す、大樹は少し逡巡しながら述べる。


大樹『・・・もしものために遺書でもさ、書いておくべきだと思うんだ。』

俺『遺書?』

健吾『要するにもしも死ぬ・・・っていうか消える前に家族とかに言っておきたいこととか残しておけっていうことか?』


 大樹の光沢のある兜が上下に動く、その時こすれるカチャリというあまり大きくない音でも

 今の何の物音もしない室内では大反響しているような錯覚を起こす。


大樹『ああ、そうだ、俺たちは確かに死んでしまったがまだ残した家族に何か伝えることが出来るのならなんでも伝えておくべきだと思って・・・・俺も警察やってればいつか書くことになっただろうからと少し考えてな・・・』


 大樹はそういうと少し黙り込む。

 俺はそれを聞いて残された家族のことを考える。

 健吾は少し黙考したのち一つの提案をする。


健吾『・・・それじゃあ俺があいつに内容を書面に移して送ってもらうように言っておくから纏まったら俺に内容を伝えるように。』

俺『何その羞恥プレイ。』

大樹『お前にそんな趣味があったとは・・・』

健吾『茶化してるとお前らの部屋にあったアレとかそれとか・・・・あ、もう見つかってるか悪い。』


 瞬間俺は絶望した。


 (部屋がきれいに片付けられているということは・・・・つまり・・・・!俺の机の・・・・・引き出しの・・・・捨てようにも捨てられなかった・・・・!!?)


俺『うおああああああああ!!?』


 俺は頭を抱え蹲る、大樹も何か心当たりがあるのか狼狽している。


大樹『・・・・やっべぇ・・・・あれ捨ててなかったし・・・あ、ビデオ借りっぱなしで・・・・死のう・・・』


 健吾は特にそういう「シークレットファイル」が無いのだろう落ち着いている。


健吾『もう既に向こうじゃ死んでるよ、ほらそれじゃあ解散して内容考えて来い。』


 そう言って俺たちは解散しそれぞれの拠点に入る。

 俺は拠点に入った後ベットに倒れこみシーツを引っ張り羞恥で体をくねらせてもぞもぞした。

 だがいつまでもそうしているわけにも行かず、ある程度落ち着いたら切り上げ、遺書の内容を考える。

 その後ゆっくり一言一言熟慮したのでかなり時間はかかったが言いたいことは一通りそろった。

 そして忘れないうちに紳士の部屋に赴き遺書の内容を伝えてもらう。

 内容を聞いて健吾に苦笑される。


健吾『・・・以上か?』

俺『・・・ああ、以上だ・・・。』

健吾『わかった、それじゃあ伝えておく。』


 健吾は内容を聞いても茶化すことは無かった。


(これが出来る男の貫録というものだろうか・・・・ちょっとじぇらしぃ)


 その後また「近き王の間」に戻り座って待っていると大樹を伴って健吾が現れる。

 全て向こうに送れたようだ。後日俺たちがこちらで消えた時に家族の元へ送られるらしい。

 それを聞いて俺はすっきりとした気分になった。悔いが無いわけではないがある程度諦めがついたのだろう。

 2人も幾分か楽になったようでまたバカ話に花を咲かせる。

 そしてGMからパッチを作成できたとの報告が俺たちの元へ送られる。


GM「適応させるのは今日の深夜0時・・・・あと2時間そちらではあと3日後ぐらいになりますので申し訳ありませんがそれまでお待ちいただくことになります。」


 GMの低い声が申し訳なさそうな雰囲気で言葉を紡ぐ。

 俺たちは逆にあれからそこまで時間が経っていないのにプログラムを作ることが出来たのに驚いているくらいである。


俺『いえ、こんな短い時間で作っていただき感謝します。」


 俺の率直な感謝の言葉に向こうもほっとしたようでありがとうございますと返してくる。


GM「それでは今から作業に取り掛かりますので完了までお待ち下しませ。完了後にまた連絡させて頂きます、ご協力お願いします、では後程。」


 そう言ってGMはチャットが切り、パーティから離脱した。

 俺たちは待つだけなのでまた雑談に花を咲かせることにした。

 そうしておそらく2時間ぐらい経った頃、異変が起こった。


俺『・・・・あれ?』


 最初に感じたのは俺だった。

 何故か頭がボーっと靄がかかった状態になり深く考えられないような状態になったのだ。


大樹『おい、どうし・・・・た・・・?』


 心配そうにこちらを気遣った発言をしようとした大樹も同じ状態になったようだ。


健吾『・・・おい、これって・・・・』


 健吾もだるそうに靄がかかっている頭を振り意識を覚醒させようとしている。


俺『・・・多分・・・・ねむ・・・けが・・・・』


 それが俺の限界だった。

 すぅっと心地良い睡魔に溺れ眠りについてしまう。

 そして眠りの気持ちよさを感じいつまでもこうしていたいと微睡に浸る。


 そうしていると何か遠くから誰かがしゃべる声が聞こえてきた。

 若い男と女の声だ。

 そして何か固い物と金属がぶつかり合う音と炎が燃えるようなパチパチという音。

 それらの音がどんどん近づいてくる。

 それらは俺の眠りを妨げるのに十分であり、俺を眠りから覚めさせるのに充分であった。

 心地良く眠っているときに暖かい布団を剥ぎ取られた時のような苛立つ感覚を覚えながら

 薄く片目を開ける。

 そして俺は音の原因達を見て・・・そして世界に生まれた。


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