第一章:GM
早速だが結果を言おう、目新しい情報など存在しなかった。
ゴブリン城下町は俺たちの命がかかっていなかったころと同じようにただにぎわっているだけの街だった
プレイヤーもかなりの数が居たが「命がかかっているんです!」なんて言えるはずもなく
ただただ「普通のプレイヤーです」という空気を出して思った以上に多いNPCの定型文を聞いて回っただけだった。
その間に3回朝日を見ることになった。
この世界は1時間が2分になっているので1日は48分で回るようになっている・・・・なので2時間24分経ったということだ。
ただそれだけ探索しても全く眠くならないし疲れない。
多少の違和感があるが疲れないに越したことはないのでその点を無視する。
そして何もここにはないということを確認した俺たちは次の街、次の街としらみつぶしに探した。
だがどこも以前と同じNPCは変わらない。
そんなことをしているうちにゴブリン城下町の分を合わせて合計10回ほど朝日を見た。
時間にして8時間、労働基準法で示された勤務時間レベルで行動しているのを知り多少顔を顰める。
現在5つの街のNPCを網羅した、その結果過去にやったクエストの内容やクエストが終わった後どうなったかなどの詳しい情報が手に入った。
興味は惹かれるが現在必要ないのである程度効き飛ばして次へと進む。
そしてまた次の街へ行こうとした時、健吾が急に立ち止まり俺たちを大通りの端へ誘導する。
おそらく友人から連絡が入ったのだろう、黙りこくっている。
その間俺と大樹は道中で商人に話すついでに補充したアイテムの整理をすることにした。
今まで行かなかったところに意外な掘り出し物が有ったりして今回の探索は割と有意義な感じがした。
そしてそうして待つこと10分ようやく話が終わったようで健吾が話し始める。
健吾『・・・喜べお前ら、GMが直々に来てくれるらしいぞ』
俺『え?まじで?!』
大樹『信じてくれたのか?』
健吾『信じたわけじゃないが「死んだ友人のキャラが意思をもって動いてる」ってことしつこく言ったら俺たちのアカウントを運営が覗いたみたいだ、それで解析してどこのPCともつながっていないのに動いているのを確認したので不審に思いGMを向かわせて話を聞きたいらしい・・・今の場所を教えたから数分で来るみたいだぞ』
俺は少しほっとした。
即アカウントを消されるのではなく一番強力な協力者が増えてくれることで何か打開策が出るかもという淡い希望を俺が持ち始めているのだろう。
安心した俺たちはそこで通りがかる人をチラチラ見ながらじっと待っていた。
するとしばらくしてイベントでよく見たことがある派手なTシャツを装備したどこにでもいそうな顔をした人族の男性がこちらに向かってくるのが見えた。
案の定こちらを見つけると駆け寄りパーティ参加を希望してきたので即了承しパーティに加える。
GM「初めまして、私はGMの【はまち】です。あなた方が件の幽霊さんたちですか?」
どうやらマイクで話しているようだ。
多少高めの男性の声が聞こえてくる。
その声は真面目なのだが内容が珍妙なので変な感じを受ける。
(幽霊・・・確かに俺たちは今そういう状態なのだろう、都市伝説になりそうだな)
そう思っていると健吾が返答する。
健吾『ええ、そうです、はまちさん、よろしくお願いします』
そう健吾が返答したあと俺たちもよろしくお願いしますと挨拶する。
が向こうからの連絡が無いどうかしたのだろうかと不安になる。
心配になって話しかけようとするとようやく返事が帰って来た。
GM「今試しに別のPCでセーバスさんのアカウントに入ってみたのですが確かに勝手に動いてますね、チャットウィンドウが勝手に開いて文字が打ち込まれて・・・・今あなたがどこを見ているのかもわかりますよ」
健吾『え?本当ですか?』
GM『はい、試しに私が言うところを見て見てください』
GMはそう言うと通りの反対側に居るNPCや空や自分の手を握る、向こうまで歩いて帰ってくるなど色々指示してきた。
健吾はその通りのものを見て動いた。そしてまた黙ってしまった。
数分ぐらい黙っていたと思うとまた喋りはじめる。
GM『すみません、予想外の出来事で我々一同驚いてしまって少し簡単な話し合いをしていました』
尤もな反応だ。
自分でもそんな状況に直面して冷静にいられそうにない。
健吾『お気持ちはわかります、ところでこれから私たちはどういった処遇になるのでしょうか?』
健吾が恐る恐る話しかける、それが一番気になる事項だ、3人が固唾を飲んでGMを見る。
GM『今までいろいろなバグや不具合がありましたがこんな直接的な症状は初めてですので我々では対処しかねます、なので今上と掛け合っていますので少々お待ちください』
そうGMは言うと黙ったままになる。
俺たちも思った以上にことがうまく進むので期待を込めてただ黙って立ち尽くす。
そして20分ぐらい経っただろうかようやくGMが口を開いた。
GM『お待たせいたしました、私GMの上司になります、ここからはGMに代わり私が話をさせて頂きます』
どうも事態を重く見た上の人と交代したようだ。
先ほどとは打って変わって低めの声がキャラクターの口から聞こえる。
俺たちはよろしくお願いしますと返事して話を聞く。
そして先ほど健吾がやったことを3人全員が行う、そしてまたしばらく待ってGMが話す。
GM『何度もすみません、ですがこんな異例な事態は想定されてませんのでどうしたらいいか当社も迷っている状態なのです、もうしばらくお待ちください』
そういうとGMはまた黙りこくった。
何回やっても結果は出ないが俺たちは向こうに任せるだけなのでドキドキしながら返事を待っている。
30分ほどたっただろうか・・・こうやってGMと話している間に既に一回朝日を拝んでいる。
GM『ただいま話し合いの結果、暫定的に決まったことをお知らせいたします。まず貴方たちをどうしたらよいのか私たちには判断できませんので社外のSEや研究者を呼び対応策を練ることとなりました。その際はご協力をお願いいたします。そして現状で貴方たちが死亡したときどんな影響があるのかわかりませんので即死回避と絶対にHPが減らない効果がある専用パッチを作り、あなたたちに提供するようにします。
その後研究のための貴方たち用のゲーム内の環境作り等を推し進める所存です。何か今の話で質問はありますか?』
予想以上に俺たちのことを大事に思ってくれているようだ。
研究材料としてという魂胆もあるのかもしれないが肉体が死んだとはいえ人の命がかかっているのでそうそう無茶なまねはしないだろう。
とにかく内容的には問題ないが大樹がある疑問を提示する。
大樹『あのすみません、質問いいですか?』
GM『どうぞ、ゴードさん』
大樹『ありがとうございます、では私たちの家族に連絡をして話すということはできるのでしょうか?』
そうだ、それも気になる、どうなのかとGMを見る。
またGMは黙り20分ほどして答えを出した。
GM『残念ですが現段階ではあなたたちが本人だと自信をもって断定することが出来ません。加えてすでにお三方は鬼籍に入っていますし、肉体すらないので人権の範囲外かどうかの判断もできません。なのである程度判明する時点まで連絡を差し上げるのはご遠慮いただきたいと思います。』
残念なことだが筋は通っている。
少ないが俺たちの財産等も分配されているだろうし、墓に入っている骨以外は本当に何もない状態だ。
感情的には嫌だが今は理性的に動かないといけない時だと無理やり納得し俺たちはわかりましたと頷く。
GM『ご理解いただき感謝します、それではこれから専用パッチ作りに入りますのでお三方は安全な場所・・・・自身の拠点かあなた方以外は入れないような場所で待機していていただけますか?配布環境が整い次第連絡します』
俺たちはその意見に異論はない、ありがとうございましたと礼を言い、俺たちのダンジョンの名前と場所を教え、すぐに連絡できるようにGMとフレンド登録をした。
そして3人で拠点に転移した。




