第一章:ペット
早速俺たちはリスポーン地点である拠点に赴く・・・とは言っても俺たち3人の拠点は俺の座ってる玉座の裏側にある隠し通路の奥だ。
通路の一番奥に3つの扉が横並びに作られており、左から健吾、俺、大樹の拠点だ。
(そういえばまだこうなってから拠点に戻っていない・・・どうなっているんだろう?)
期待に胸を膨らませて中に入ると、一見奥にドアが着いた色々家具が置いてある普通のホテルのワンルームのように見えるこれは以前と変わらない。
ベッド横に備え付けてある大きな宝箱を叩くとインベントリと似たような画面が出てくる。
それは課金改装済みなので結構な量の武器防具含む様々なアイテムを詰め込んでいるにもかかわらずかなり空きスペースがある。
(確か3人で飲んでて酔った時に調子に乗ってトランプで負けたら財布の今入っている中身全部課金に使うってゲームで負けてこうなったんだよなぁ・・・数千円分かぁ・・・・)
しみじみ思い出しながら俺はそこからゆっくりと中身を確認し、必要なものを抜出し画面を閉じる。
するとウィンドウが消えると同時に自動で宝箱も閉まった。
次にクローゼットを叩く、するとこれも宝箱と同じように画面が展開される。
確認のために開いただけなのでもう一度叩くと同じように閉まる。
最後に一番奥のドアを開く、するとドアの向こう側は明るい太陽がさんさんと光り、柵で囲われてはいるが外も中も同じように地面が青々とした芝生に覆われその上を俺が捕まえたモンスターが闊歩しており、モンスターが牛や馬であれば田舎の牧場と言われても遜色ない場所だ。
このような場所が地下に出来るのはまさにゲームならではと言える。
俺「うわぁ」
思わず声が漏れる、田舎の牧場に行ったことは何度もあるがその時とは違い、全く獣臭さがしない。
むしろうっすらと香る牧草の青臭さの方が強いくらいだ。
理屈はわからない、おそらく水属性の「洗浄」や光属性の「維持」でもかかっているのだろう。
だが多少の常識はずれなど現状役に立つのであれば無視しても構わない。
そんな考えをしつつ俺は近くですやすやと眠る魔物に近づく。
その魔物は鷲の頭と翼と脚にライオンの体を持つファンタジーお約束のグリフォンである。
あまり強いとは言えないが空でも陸上でもかなりの速度で移動できるモンスターだ。
(こうやって見るとやっぱでかいなぁ・・・・)
俺はグリフォンの前に立ち、トンと指先で触れてみた
するとグリフォンのステータス画面と選択肢のボタン付きボックスが表示される。
モンスター名:ぐるー
レベル55
種族:魔物・グリフォン種
HP :2131/2131(1831|300)
MP :523/523(323|200)
攻撃 :453(423|30)
防御 :227(197|30)
魔法攻撃 :332(302|30)
魔法防御 :335(305|30)
敏捷 :624(524|100)
種族:グリフォン
騎乗スキル:空中高速移動・地上高速移動・風の守り
騎乗可能最大人数:2人
このモンスターを連れて行きますか?
はい
いいえ
強くないとはいえそこそこ高レベルの場所で仲間にしたので
そこらの空を飛び回っているであろう亜竜種の飛龍程度なら軽くあしらえる程度のステータスはある。
(でも空の真ん中で高レベル飛龍とばったり出会ったりなんかしたら落とされて死ぬかもなぁ・・・
これからは一層注意して使わないと・・・)
そう思いながら「はい」を選択する。
するとグリフォンことぐるーが目を開けその体高2m、体長3mの巨体をゆっくりと起こし俺の目の前に立ち、羽にかかる轡のようなものにつながった手綱をわずらわしそうに跳ね除けこちらを見る。
指示を待っているかのようにじーっと見つめてくる。おっきな茶色がかった黒の瞳がかわいらしい。
(くっはー!ボロアパートじゃあペット飼えなかったからなぁ・・・・)
溜まらずそっと手を伸ばし肩辺りを撫でる。
羽はサラサラでふわふわでまるで高級なクッションのようないつまでも撫でていたくなるような感触だった。
だがそれだけ撫でてもぐるーは何の反応も示さない、置物のようにこちらを見つめるだけだ。
それを見ていると何故だが急に気持ちが冷め、撫でるのをやめる。
やはりここはゲームでぐるーは血の通う生き物ではないのだと嫌でも理解させられた。
俺はインベントリから「ペット収納箱」と書かれた縦横10cmの魔方陣が書かれた鉄製の正方形の箱を取り出す。
その上に付けられた取っ手を持ち箱を開けるとぐるーが光の粒子分解され箱の中に納まる。
こうすることで箱を開ければいつでもどこでもペットを呼び出すことが出来る便利アイテムだ。
目の前にはぐるーがそこに居たという痕跡は無い、あれだけの大きさを持つ魔物が寝転がっていたのにその下にあったはずの草は元気よく上を向いて光合成をしている。
それに「・・・・やっぱゲームだな」という感想をぼそっと呟きながら準備を終えた俺は元の「近き王の間」に転移で戻った。
「近き王の間」にはもう既に2人が立っていた・・・・2人の装備は特に変わりないのだが健吾の横に見たことのない奇妙な女性が立っていた。
歳は15、6くらいだろうか、身長は160cmぐらいでほっそりとしているが出るところはそれなりに出ており開発途上の未熟な美しさを感じられる。
体同様顔の造形も整っていて多様幼さを残してはいるが芯が強いような印象を抱かせる。
肌は透き通るような白色をしており、髪もその顔立ちに合う燃えるような赤でそれらはすべて合わさり一つの芸術として完成しているような出来で将来が楽しみな美少女と言えるだろう。
ただその件の彼女は無表情で視線はまっすぐ前を向いており、体を微動だにしていない。
とそこまでなら問題ないのだが彼女は首元に見える緑色の鱗と背中から伸びる鱗と同じ色の蝙蝠のような翼を持っていた。
おそらく彼女は竜人族だ。
似た鱗を持つ先ほどのパーティに居たようなリザードマンは善側の魔物・レッサードラゴンに該当し男も女もトカゲチックな様相を持つ。
だが彼女のような竜人族はプレイヤーですら習得できない高度な変身術により人化したドラゴンと人間が交わった結果できた種族の一族なのだ。
その家系に連なる者は外見は人間とほぼ同じでドラゴンの翼と多少の鱗を持っていおり、基礎スペックもかなりのもので物理・魔術のどちらにも適していて、翼で単独飛行可能かつ竜の鱗による高めの耐性というまさに勇者のようなオーバースペックを持つ種族である。
ちなみにプレイヤーの4割は色々職業などの選択肢が多い人族で2割は竜人族と言うくらいに人気の高い種族でもある。
と、その彼女の種族も問題と言えばそうだが俺が一番問題視するのは別の部分だ。
それは・・・・・少し控えめながらも程良い大きさの胸の谷間をのぞかせるように作られた胸元、大部分の裾を覆うふんわりとしたフリル、そしてなまめかしい太ももが見えるくらいに丈が短くなっているスカートを持つ侍女服・・・もといメイド服のことだ。
(あれ?メイド服ってここまで細かい作りだったっけ?)
記憶にあるこの世界のメイド服はリアル準拠の余り露出度が高くない長袖ロングスカートの比較的淡泊な印象のものだ。
作りも細かいようでちゃんとその蝙蝠のような羽を出す部分の穴もきちんと作っているようでドラゴンの翼は邪魔にならないように綺麗に畳まれて背中にくっついている。
量産品のものでないような印象を受ける。
ということはつまり・・・・
俺『・・・・お前・・・・その・・・・・』
健吾『ん?何か問題が?』
健吾はにこやかに答える。
それで理解した。わざわざ課金の「洋服エディットモード」で作ったのだろう。
俺『いや、問題っていうか・・・・』
大樹『・・・こないだの休みに単独で捕まえてきたらしい・・・ステを見てみろ』
そう促され、俺はその赤い瞳でまっすぐ前をボーっと見つめる竜人の女の子の肩を叩く、すると彼女のステータス画面が表示される。
名前:ミリー
二つ名:ドラゴンメイド
レベル64
ギルド:無し
種族:竜人族
職業:フェンサー(上級)
サブ職業:メイド(下級)
HP :3354/3354(2834|520)
MP :718/718(418|300)
攻撃 :650(550|100)
防御 :361(311|50)
魔法攻撃 :315(295|20)
魔法防御 :387(337|50)
敏捷 :763(613|150)
騎乗スキル:空中高速移動
騎乗可能最大人数:1人
ステータス画面を見た瞬間、俺は苦笑せざるを得なかった。
一応メイド服はどの職業でも着ることはできるので普通は気に入ったキャラに着せて満足するところだ。
だが健吾は愛の深い男なので態々服に合わせて職業を変えていた。
元々の種族自体が強いので職業が変わってもそこまで弱くはならないがわざわざそうするメリットも低い。
(本当にメイド好きなんだな・・・・)
多少呆れとある意味筋が通っているのに感心する感情がないまぜになってため息として口から零れる。
(まぁそれはいいや、でも騎乗ユニットかぁ・・・・確かに優れている・・・・うん、優れてはいるんだが・・・・)
気を取り直して騎乗ユニットとして考えてみると確かにステータスだけを見れば移動用ユニットにしては高い水域にあり、難点は「竜の鱗」が高く売れるのでプレイヤーに狙われやすいのと翼のせいで一部防具が装備できないことぐらいだ。
だがそれでも俺は困惑していた。
別の問題点が一つ浮かんで来たからだ。
俺『・・・・ちなみにどうやって騎乗するんだ?』
そう、今まで騎乗用ユニットは獣型ばかり使用していたので人型の運搬方法を俺は良く知らない。
これは前にお姫様だっこされて空を飛んでいるプレイヤーを見かけたことがあるが、彼女にそれをしてもらうのは健吾と言えど男のプライドはどうなのだろうと思ったが故の発言だ。
健吾『こうやってだよ』
健吾は自信満々に竜人族の少女ことミリーの前に立ち背中を向けるとミリーが健吾の脇の下から手を回し、がっちりつかむと大きな羽を羽ばたかせてそのまま天井すれすれまで飛び上がった。
バッサバッサと羽ばたくたびに健吾は足をプラプラさせながらも満足げな表情だ。
健吾『どうだ?すごいだろう?』
健吾はさながらUFOキャッチャーのアームに引っかかった人形のような姿をさらしながら俺たちに向かってドヤ顔を繰り出す。
ただそれを眺めていて俺はハッと気がついた。
(・・・・・白だ・・・・どんだけ作りこんでやがるんだ・・・・)
NPCに羞恥心は無いのだろうがいたたまれない気持ちになったので俺は目線を降ろし大樹を見る。
俺『・・・そろそろ行こうか・・・俺のグリフォンに乗れよ・・・』
大樹『・・・・おう、わかった・・・・』
俺と大樹は空飛ぶアホを無視して話を進める。
アホは俺たちの上をく数回くるくると旋回した後、満足したのか降りてきた。スッキリした顔がうざい。
とにもかくにも準備は出来たので3人で入口に転移する。
転移はスキルや魔術同様「転移」と叫ぶことで使用可能で自分たちの本拠地及びダンジョンのみ転移位置を指定可能で、現在は自分の部屋と入口と「近き王の間」に飛ぶことが出来る。
などと情報を知っておりゲーム時代は意識しなくてもしていた行動なのだが、さすがに生身で体験するとなると安全だとわかっていても少々勇気が必要だった。
健吾『それじゃ先に行ってるぞ』
と健吾がさっさと転移してしまい、二人だけになると合図しなくてもお互いを見てしまう。
大樹も不安のようだ。
俺『・・・それじゃあ123で行くぞ』
大樹『・・・おう』
そう示し合せ3数えて飛んだのだが「3」で飛ぶのか「3の後」飛ぶのか言ってなかったので俺が先に入り口に出て、次に大樹が出た。
入口付近は松明の明かりで照らされた石の個室だ。
そして「出口」と「ダンジョン入り口」と書かれた木製の扉が対面に設置してある。
ここは挑戦するプレイヤーがダンジョンに突入するときの最終準備を行えるように作っておいた場所だ。
なのでモンスターも出現しない安全な場所だとは分かっている。
だが俺も大樹も先ほどのタイミングについての話し合いをする前に辺りを慎重に伺う。
ダンジョンは閉鎖されているので俺たち以外のプレイヤーキャラはいない。
もう一度周りを隈なく確認してみる、そして本当に誰もいないようだと納得した。
大樹もほっとしたのか腰に伸ばしかけた手を引っ込めて屈めた腰を伸ばした。
健吾『・・・・お前ら何してんだ?さっさと行くぞ』
いつの間にか隙間から明かりが零れる「出口」と書かれた扉付近に健吾が立っていた。
大丈夫だと俺と大樹は健吾に頷く。
それを見た健吾は頷き返すと出口の扉の鉄の取っ手に手をかけ回し、押し開く。
木製の扉がギギィという軋んだ音を立てながら開かれ向こう側からの光があふれる。
俺たち3人は光に眩んだ目を細めて、未知なる場所へ踏み込む恐怖と好奇心に心を震わせながら足を踏み出す。
そして俺たちはダンジョン入り口を背に出て光あふれる外の世界に足を踏み出した。




