⒏
お久しぶりです。
完結しますといいながら、申し訳ございません。
今度こそ完結まで。
「好きなだけ食べろ」
と透から作った料理を差し出されても、一意の心臓はまだどきどきしていて、食事どころではない。
聞きたいことは、たくさんある。
さっきの言葉の意味。
からかっていただけなのか。
料理を作ってくれた理由も聞きたい。
明らかに一意は動揺していた。
その動揺を押し隠すように、一意は野菜炒めをとにかく勢い良く詰め込む。
一意が食べている間、透は一意から視線を外さない。
そのため落ち着かず、なんだか食べづらい。
「透は、食べへんの?」
じっと見詰めてくる透に耐えかねて、尋ねてみても、にっこり微笑まれてはぐらかされた。透のそんな微笑みにますます心臓が煩くなる。
「美味しいか?」
そう聞かれても。
正直味なんか分からない。
「うん」
それでも、一意はごまかすように勢い良く頷いた。
そう答えるだけで精一杯だ。
「そうか。良かった」
一意に美味しいと言われて、透は安心したように笑った。
その笑顔にどきっとする。
これ以上、ここに居たら心臓がもたないかも知れない。
一意は、箸を置いた。
「もうあかん」
「何が?」
「俺の……、心臓が、壊れそうや」
「なんで?」
「透の所為や。お前が……からかうから」
「からかうって?」
「さっきから、その……、」
言葉にしようとして、一意は言い淀む。
恥ずかしすぎて言葉に出来ない。
「ん?」
「いや、だから……。やっぱり良いわ。なんでもない」
気を取り直して、食べ物に集中しようと箸を持った。
その手を透に掴まれた。
「透?」
「俺が、治してやろうか?」
「何を?」
「決まってるやろ。一意の心臓」
治す? どうやって?
確かに透にしか治せないけど。一意の透への恋心は気付かれていないはずだ。
また、からかわれてるんやろうか? 俺。
そんなことを考えていると、一意の顎に透の手が添えられた。
いつの間に移動したのか。
テーブルの向かいに座っていた透は隣に座っている。
驚く間もなく。
ゆっくり上を向かされた。
そのまま、唇に柔らかいものがあたる。
気が付けば透にキスされていた。
驚きに目を瞠る。
思考が追いつかない一意は、されるがままになっていた。
読んで下さりありがとうございます(。˃ ᵕ ˂ )ƅ