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完全敗北  作者: 葉月茉莉
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二人で、透の作った朝食を食べて、その後大学へと向かう。

 昨日の晩、あんなことをした後で並んで歩くのが照れくさい。


 なんとなく、無口になってしまって。

 歩きながら、ちらっと透の横顔を盗み見る。


 端整な透の横顔を見て、自然と頬が赤くなる。


 無言のままでいることに堪えられなくて、思いついたことを聞いてみた。


「なあ、透。俺、やっぱり賭けに負けたん?」

「まだ、そんなこと言ってるんか?」


 透は呆れたような顔をして、次に苦笑した。


「うん、やって」


 別に、透のように端正な顔立ちをしているわけでもない。


 今まで、もてていたかというと、そう言う事実もない。


 やっぱり、狙っているなんて言われて。しかも、透からも一目ぼれなんていわれて。信じられないのも無理はない。


「俺がもてるなんていうのは、やっぱり信じられへんし」

「まあ、信じるかどうかは、お前の勝手だけどな。でも、多分……」


 そう言って透は、くしゃりと頭を撫でる。


「今日あたりに、答えが出るわ」


「なんで?」


 その問いに対して、


「一意は一意だから」


 という訳の分からない返答が返って来た。


「……なんやねんそれ」

「それも、今日分かると思うわ」

「透の言ってること。……なんか、謎だらけや」


 そう言うと、


「頑張って推理しろ」


 との無情とも取れる返事が返って来た。


透と別れて、一限目の教室へ着くと、昨日透の家へ付いて行きたいと言っていた友人に声を掛けられる。


「隣、良い? 空いてる?」

「うん、ええで」


 友人は、左隣へ腰掛けた。


 そっちは、キスマークのある方だ。


 しまった。


 うっかり左側を空けて座っていたことを後悔する。


 ―――ああ、間抜けや俺。あほや。


 でも、後悔したって遅いのだと思い直す。


 気を落ち着かせなければいけない。


 虫刺され、虫刺され、虫刺され。と、心の中で唱えた。


「ああっっ!」


 相手の声に、びくっとなる。


「菱沢、それ」


 相手の視線は真っ直ぐキスマークに向けられている。


 とうとう見つかってしまった。恥ずかしい。顔が火照るのが自分でも分かる。


 でも、出来る限り平静を装って、


「あ、これな」


 虫刺されやねん。


 そう言おうと思った言葉が遮られた。


「やっぱりな~」


 深い溜め息を吐かれる。


 何がやっぱりなのか、良くわからないけれど。


 明らかに落胆しているのは、いくら一意でもわかる。


「なんや? どないしたん?」


 取り合えず、首のこれが原因のようなので、聞いてみたものの、


「俺は失恋したようだ」


 と言われて、一意は固まった。

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