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一話完結戯曲:『清心館女学院の十分間~銀髪の名探偵:日ノ宮雪乃の謎解き舞台』  作者: 水星 透


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4/4

進路指導室の殺人談義~探偵の罪と罰


下記の戯曲は『ほぼ』シェイクスピア引用だけで書き上げた

Cento(チェントという作品手法です。意味の入れ替え、悲劇のセリフを喜劇に等色々と工夫しているので是非そのあたりをお楽しみください。

   

清心館女学院司書室。夕暮れ。お茶を楽しんでいる雪乃。

慌ただしく萌花が駆け込んでくる。


雪乃「どうしたの、何があったの?」

萌花「大変なんです先輩。生徒指導室で」

  「この上なく卑劣な殺人だ、最も残虐なものだ~とかそんな声が」

雪乃「いま?何があったの?」

萌花「片方は御影先生の声でした。もう片方は知らない人でした」

雪乃「(小さく笑って)二年生にね、引用だけでしゃべる子がいるの」

  「狂気に見えても、筋は通ってる」

  「言葉ばっかり。言葉、言葉、言葉しかもシェイクスピアだけ」

  「そんなに大げさにまくし立てるなら、校内の噂好きにでも言わせたほうが早いよね」

  「騒音と激怒に満ちていて、――何の意味もない」   

  「こんな会話だったでしょう?」

雪乃「きっと毎年恒例、期末試験の追試の話」

  「だから萌花ちゃんは怖がらなくていいのよ」

  「引用だけで話す人、ちょっと怖いか」

萌花「ちょっと……怖いです」


(暗転・二人が向かい合って座っている。図書館司書、御影先生ともう一人は影の中の女生徒)


影「あなたがしようとしていることは最も卑劣な事だ。殺人の中でも最も残虐な」

影「あるのは「ないもの」だけ」

御影「その意図がどうであろうと……悪であろうと善であろうと……」

影「あなたがそう言うなら、早くやってしまうのがいい」

影「運命が私を王にするなら、私が何もしなくても、運命が私に王冠を授けてくれるだろう」

影「今の私には、意志を刺す拍車がない。動かす力もね」

御影「その望み、酔っていたの?希望で身を飾っていただけ?」

影「この件について、これ以上言うことはありません」

御影「やれると言ったとき、はじめて一人前だった。あなたはそんなことを言うのでしょう?」

影「私にふさわしいことならやる。……それ以上は、しない」

御影「それは──魚は食べたいのに、足は濡らしたくない猫?」

(影、紙を指で弾く。成績表か、何かの“計画書”のようにも見える)

御影「失敗したら?」

影「失敗する?——しませんよ」

御影「もう一度聞くわ。何をするつもり?」

影「先生には言えません。ただ……とーっても。目立つことを」

御影「知らないほうが無垢でいられる。──知らないでいられるなら」

影「だから知らないで」

影「終わったことは、終わったことです」


(短い沈黙。紙を畳む音)

(夕暮れが差し込んで御影先生と影の女生徒の髪だけを照らす。つややかな黒髪)


(暗転戻る・萌花と雪乃の会話へ)


(放送が流れる、2年F組日ノ宮雪乃さん、生徒指導室まで、繰り返します--)


雪乃「あら、御影先生が御用なのかしら。ちょっといってくるわね」

(萌花、不安げに雪乃の後姿を見守る)


 誉「……御影先生、さすがですね。ここまで引用にお付き合いいただき、ありがとうございます」


(ドアを開ける音)


(誉の全身に夕陽。流れる黒髪に黒いセーラー服、他校の生徒だとわかる)


雪乃「失礼します。やっぱり、あなただったのね誉」

 誉「恋の軽い翼で、この壁を越えて来たの。石の境界じゃ恋は止められない」

雪乃「知らずに出会ったのが早すぎて、出会った時にはもう手遅れ」

 誉「憎まれて死ぬほうがいい。恋がないまま生き延びるより」

雪乃「この世に無駄な毒はない。善もまた、使い方を誤れば毒になる」

雪乃「今あなたに聞くわ。あなたは薬?それとも毒?」

 誉「We know what we are, but know not what we may be.」*

 誉「誉は、自分が何者であるかは知っているわ。でもね、何者になりうるかは知らないの」

  「これでも神が作りたもうた人間だよ。自分自身を台無しにしちゃうような」


(誉、細い紙片を差し出す。)

(雪乃、受け取る。文字を丁寧になぞるように追う。)

(紙を折り、静かにポケットへしまう。)

雪乃「星よ、その火を隠して。光よ私の黒く深い欲望を見ないで」

   

(室内が闇に包まれる。雪乃、手元の灯り/携帯の画面を伏せる)


(終)




登場人物紹介

日ノ宮雪乃:清心館2年生:探偵

如月萌花:清心館1年生:探偵助手

御影静香:図書館司書:雪乃の師匠的存在

白雪誉:悪のインフルエンサー(モリアーティ教授的存在)


※※著者注:We は君主などが自分を指すときに I の代わりに使う

“Royal We(尊厳の複数)”。ここではインフルエンサーの白雪誉が、王のように“私たち”を名乗る諧謔(=「余」感)として用いている。




以下引用文

========================

MACBETH

========================


[1.7] LADY MACBETH

How now, what news?


[1.7] MACBETH

I have no spur

To prick the sides of my intent, but only

Vaulting ambition, which o’erleaps itself

And falls on th’ other—


[1.7] MACBETH

We will proceed no further in this business.


[1.7] LADY MACBETH

Was the hope drunk

Wherein you dressed yourself?


[1.7] LADY MACBETH

When you durst do it, then you were a man;


[1.7] MACBETH

I dare do all that may become a man;

Who dares do more is none.


[1.7] LADY MACBETH

Like the poor cat i’ th’ adage?


[1.7] MACBETH

If it were done when ’tis done, then ’twere well

It were done quickly.


[1.7] LADY MACBETH

If we should fail—


[1.7] MACBETH

We fail?


[1.3] MACBETH (aside)

And nothing is but what is not.


[1.3] MACBETH (aside)

If chance will have me king, why, chance may crown me

Without my stir.


[3.2] LADY MACBETH

What’s done is done.


[3.2] MACBETH

…there shall be done

A deed of dreadful note.


[3.2] LADY MACBETH

What’s to be done?


[3.2] MACBETH

Be innocent of the knowledge, dearest chuck,

Till thou applaud the deed.


[1.4] MACBETH (aside)

Stars, hide your fires;

Let not light see my black and deep desires.


[5.5] MACBETH

full of sound and fury,

Signifying nothing.


========================

HAMLET

========================


[1.5] GHOST

Murder most foul, as in the best it is,

But this most foul, strange, and unnatural.


[3.2] HAMLET

If you mouth it, as many of your players do,

I had as lief the town crier spoke my lines.


[3.4] HAMLET

Now, mother, what’s the matter?


[3.4] HAMLET

What’s the matter now?


[2.2] HAMLET

Words, words, words.


[2.2] POLONIUS (aside)

Though this be madness, yet there is

method in ’t.—


[1.4] HAMLET

Be thou a spirit of health or goblin damned,

Bring with thee airs from heaven or blasts from hell,

Be thy intents wicked or charitable,

Thou com’st in such a questionable shape

That I will speak to thee.


[4.5] OPHELIA

Lord, we know what we are but know not what we may be.

God be at your table.



========================

ROMEO AND JULIET

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[2.2] ROMEO

With love’s light wings did I o’erperch these walls,

For stony limits cannot hold love out,

And what love can do, that dares love attempt.


[2.2] ROMEO

My life were better ended by their hate

Than death proroguèd, wanting of thy love.


[1.5] JULIET

My only love sprung from my only hate!

Too early seen unknown, and known too late!


[2.3] FRIAR LAURENCE

O, mickle is the powerful grace that lies

In herbs, plants, stones, and their true qualities:

For naught so vile that on the Earth doth live

But to the Earth some special good doth give;

Nor aught so good but, strained from that fair use,

Revolts from true birth, stumbling on abuse:

Virtue itself turns vice, being misapplied,

And vice sometime by action dignified.


[2.4] ROMEO

One, gentlewoman, that God hath made, himself to mar.



========================

HENRY V

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[3.6] GOWER

I know him not.

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