第9話「旅立ち」
トミリが正式に王立陸軍レインジャー部隊に入隊する日が来た。
両親は思い切りトミリを抱き締めた。
「がんばれよ。」父が言う。
「身体にだけは気を付けてね。」母が言った。
トミリは両親に手を振り旅立った。
一方、ヒンロはサタレの中古の古いピックアップトラックに乗り、共に旅立った。
分離壁のゲートには国軍の警備の兵士がいる。
車を停めチェックを受ける。
すると、サタレが一人の兵士に100貫の紙幣を渡すのが見えた。
「いいぞ!通過して良し!」
車の通行許可が出た。
サタレとヒンロは再び車に乗り込んだ。
分離壁の外は久しぶりだ。
「サタレあの…。」
ヒンロが口を開くと、すかさずサタレが答えた。
「兵隊は簡単に買収出来るんだよ。だから拳銃も持ち出せた。この前のやつな。」
ヒンロは続けて尋ねた。
「ああやって銃や武器を壁から出したり入れたりするの?」と。
サタレが教えてくれた。
「お前はもう仲間だから言うけどな。他の誰にも言うなよ。ちょっとした小物程度はさっきのやり方で出し入れする。ただし、大量にあったり、大型のものは、隠しトンネルを使う。秘密だぞ。」
ヒンロは成る程納得した。
そして、自分がどれだけ命懸けな事に足を踏み入れたかが分かってきた。
二人を乗せた車は、港に続く道を走り去った。
2時間ほど走ると港が見えてきた。
外国へ続く海の道。貿易港だ。
サタレは埠頭に車を駐車した。
「ヒンロ、着いたぞ、降りろ。」
車を降りたヒンロの目に入ったのは大きな貨物船だった。
「でかい船だろ?こいつで行く。」
サタレは船員にカネを渡す。
二人は船に乗る事を許可された。
今日から1週間の船旅が始まる。
ゆっくりと港を離れる太中行きの貨物船はヒンロの希望を共に乗せて出港していった。