第8話「涙の雨」
サタレはヒンロを部屋に通した。
そして、リビングの椅子に座る様に促した。
向かえの席に座るサタレ。
やがてサタレは口を開いた。
「訓練を積んで戦士になる必要がある。訓練キャンプは国外にある。」
ヒンロが尋ねる。
「外国?どこの国?」
「太中だよ。彼らが諸外国の革命戦士に訓練場を提供してくれている。武器も資金も。」
ヒンロは答えた。
「俺がいない間、母さんを頼める?」
するとサタレは答える。
「大丈夫だ。ボランティア仲間に頼んでおく。現地へは俺も一緒だ。」
ヒンロは少し考え、それからゆっくりと口を開いた。「自由のために!」
夜。ヒンロは母に告げた。「仕事、決まった。外国に行くよ。」
母は驚いた。「外国?本気なの?」
ヒンロが返す。
「あぁ、本気だよ。ボランティアに母さんの事は頼んである。来週出発する。」
母はそれ以上何も言わなかった。
しかし、微かに瞳に光るものがあった。
夜、ヒンロはふと目を覚ました。
するとまだキッキンの明かりが灯っている。
ヒンロはゆっくりとベットから降りると静かに居間を通り抜ける。
飲んだくれた父がイビキをかいている。
そっとキッキンの扉を開き、隙間から中を覗いた。
母が椅子に座り泣いている。
母の泣いている姿をヒンロは始めて見た。
たくさんの涙の雨が降っている。
母は「ヒンロ、ヒンロ…。」と言いながら泣き続けた。
ヒンロは再び自室に戻ると、ベットに横になり涙を流した。
「母さん…。ごめんな…。母さん…。」
ヒンロにも涙の雨が降った。