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18 過剰な反応

 椅子を倒すほどの勢いでソフィアの側に行き、その手を握ってロビンが跪いた。


「そうか……僕の子供をソフィアが……ああ、神よ。感謝します」


「喜んでくれる?」


「もちろんだよ! こんな嬉しいことはないさ! 明日にでも父上や母上に報告せねば。レオ兄上、喜んでください! 私は父親になれるようです。そうだアラン兄上にも報告しなきゃ」


 レオが優しい笑顔で頷いた。


「ああ本当に良かったな、ロビン。これからも健康には留意して政務に励め」


「はい! ブリジッドも喜んでくれよ。僕が父親になるんだ! 凄いことだろ?」


「ああそうね、おめでとう」


 そう言うとプイッと横を向いてしまったブリジッドは、何事も無かったようにデザートを平らげた。


「ねえロビン、祝い酒といきましょうよ。ああ、でもソフィアはダメね。妊婦ですものね。レオは仕事でしょう? 私たち二人でお祝いしましょう」


 レオが肩を竦めてソフィアを見た。


「ありがたいですわ、お義姉さま。では私はそろそろ部屋に戻ります」


 ロビンが慌ててソフィアに駆け寄る。


「今夜は君の側にいるよ。悪阻とかは? ああ、心配だ」


 ブリジッドがロビンの腕を引いた。


「今日や明日に生まれるわけじゃないのよ? だから問題ないわ」


「いや、でも……」


 ロビンは腕をひかれながらもソフィアのことを心配していた。


「いいの、ロビン。少し疲れたからゆっくり休ませてもらうわ」


「そう? だったらブリジッドに付き合ってくるよ。部屋まで送ろう」


 レオが立ち上がった。


「戻る途中だ。私が送ろう」


 レオの言葉などスルッと無視をして、ブリジッドは挨拶もせずロビンを引っ張って行ってしまった。


「良かったのか?」


「ええ、その方が助かります。いろいろ考えたいですし」


「そうだろうな。今夜はゆっくり休みなさい。また近いうちに時間をとろう」


 私室の前でレオと別れ、ゆっくりと湯あみを楽しんだソフィアは、侍女も下がらせて机に向かう。

 今日知り得た情報は、とんでもなく重要なのだということは理解したが、いかんせん心が追いついていない状態だ。

 じっくりと精査して飲み込んでいく必要がある。


「まずは、私が『選ばれし者』ということよね? 今日の話では時間を巻き戻しても、前の記憶がある者という意味だわ。記憶を残す必要があった存在……私が? でもそれ以前は選ばれていないってことよね? 何が鍵なのかしら。選びし者は一人だけと言っていたけれど、選ばれし者は? 私だけなのかしら」


 前々世のことも覚えているのなら、比較分析することもできるが、前世だけとなるとどうしようもない。

 ということは、前世でやったことの何かが引っ掛かったということだ。


「前世で一番後悔したこと?」


 ソフィアは目を閉じて前世の記憶を探り出した。

 前世の今日、ソフィアはロビンに懐妊を告げている。

 今日のロビンの喜びようは異常だった。

 前世でも喜んではくれたが、今日ほど感情を爆発させたという記憶はない。


「でもブリジッドと夜通し一緒にいたというのは同じなのよね……あっ、でも来月にはブリジッドに妊娠三か月という診断があるのだわ。ということは、今は二か月?」


 そこまで考えたソフィアは、レオに魔道具に映っていた相手を知らされていないことに気づいた。

 あれはやはりロビンなのだろうか。

 上着が違っていたということだけに縋り、違うと信じたい自分もいる。


「でも……事実は事実として受け入れなきゃ。それに私はとんでもない噓をついているわ」


 当初の計画通りとはいえ、実行してみると予想以上の罪悪感を覚えた。

 あれほど喜んでくれたロビンを騙している自分に嫌気がさす。


「でも死なせるくらいなら授からない方が良いのよ。そうよ、これで良いの」


 無理やり自分を説得するが、心の奥底に刺さった棘はなかなか抜けてはくれなかった。


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