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第4部:湖底の危機

湖底で発生した地震タイタンクエイクは、探査機を危機に陥れると同時に、エリディアンの力を初めて直接目の当たりにする場面を生み出しました。湖全体の調和を守るために振動を整えるエリディアンの行動は、彼らの知性と本能の両方を垣間見る瞬間です。この第4部では、未知の存在との共存の可能性が示唆されるとともに、彼らが持つ調和の力が物語の核心に近づきます。

挿絵(By みてみん)


湖底の静寂の中、ラーシュは触手を微かに震わせながら、広がる振動を感じ取っていた。その振動は湖底の深層から湧き上がり、徐々にエリディアンたちの周囲に伝播していた。湖底に生きる彼らにとって、このような振動は生命そのもののリズムに等しかった。

ラーシュは仲間たちに共鳴の信号を送り、触手をさらに広げて振動の源を探った。近くには奇妙な人工物が沈んでいたが、ラーシュたちはその振動が湖底の秩序を乱しているわけではないことを感じ取っていた。むしろ、湖底の深層から湧き上がる自然の振動が、この人工物に悪影響を与えているように見えた。彼らはその状況を理解し、湖全体の調和を取り戻すためのリズムを奏で始めた。

ラーシュは触手を震わせながら、湖底全体を覆う振動の乱れを感じ取っていた。この安定とは、単に物理的な均衡を指すものではなく、湖そのものの生命を支える調和を意味していた。そしてその調和には、湖底に沈む奇妙な人工物――探査機が発する微かなリズムも含まれていた。

「このリズムを見逃せば、湖全体が不安定になる」

ラーシュは仲間たちと共鳴を深め、その振動を調整するリズムを奏で始めた。それは湖の均衡を保ちつつ、新たに加わった探査機のリズムを取り込もうとするものだった。エリディアンたちのリズムは湖底の広範囲に影響を与え、乱れた振動を徐々に整えていった。彼らは、湖そのものの一部としての意識を持ちながら、新たな存在とのつながりを模索していた。

ラーシュは触手をさらに震わせ、リズムを調整しながら仲間たちと共鳴を深めていった。調和の振動は湖全体に広がり、探査機が湖底に及ぼす影響を和らげていった。彼らの意識の中では、人類とのつながりが微かな可能性として芽生えつつあり、それが湖全体の安定と共鳴するものだと直感していた。

エリディアンたちは振動を重ね、秩序を取り戻すための穏やかなリズムを奏で始めた。ラーシュが触手を湖底に滑らせると、振動は共鳴し、他の仲間たちのリズムと融合していった。

湖底全体が微かに震え始め、その振動が複雑なパターンを描きながら、堆積物の流れを和らげた。人工物が動きを止め、湖底が静けさを取り戻しつつあった。

「秩序が戻った」ラーシュはそう感じた。

エリディアンたちは振動を弱め、元の位置へと戻っていった。その触手は静かに波を切り、湖底に新たな調和のリズムを刻んでいた。

「この振動、ただ事じゃないな」ノヴァック博士がスクリーンを見つめながらつぶやいた。「堆積物が動き始めている。探査機が巻き込まれる可能性がある」

「手を打つしかないわね」カレン隊長が即座に指示を出した。「探査機を堆積物の流れから引き離す方法を考えましょう」

しかし、操作は思うように進まなかった。探査機の一部が動作不良を起こし、湖底に沈み込むように傾き始めていた。

「これ以上は危険だ」ダニエルが警告した。「探査機のメインスラスターを停止し、補助ユニットを起動するべきだ。この方法なら、堆積物への沈み込みを最小限に抑えられるはずだ」

そのときだった。探査機の外部センサーがエリディアンの動きを捉えた。複数のエリディアンが触手を広げ、湖底全体に振動を送り始めていた。

「何をしているの?」ジョアンはスクリーン越しにその光景を見つめ、背筋に冷たいものが走るのを感じた。エリディアンたちの触手が湖底の広範囲に広がり、複雑な振動を生み出している。その振動はただ湖底を整えるためだけでなく、まるで湖全体と語り合っているかのように感じられた。その意図が何であるのか掴めない不安と、あまりにも壮大な行動を目の当たりにした驚異が、彼女の胸を締め付けていた。

「わからない……でも、振動のパターンが変わってきている」ノヴァック博士が答えた。「彼らが湖底全体を制御しているように見える」

エリディアンたちは複雑なリズムを触手で奏で、地震タイタンクエイクを徐々に整えているようだった。そのリズムを選んだ理由は単純だった。彼らにとって振動の乱れは生存に直結する問題であり、調和のリズムを作り出すことで、湖底全体の安定を取り戻すことができると本能的に知っていたのだ。彼らのリズムは、湖の均衡を守るための古くから受け継がれてきた「知恵」の一部だった。その結果、探査機の周囲の堆積物が落ち着きを取り戻し、動きが鈍くなっていった。

「まるで……調和しているようだ」ジョアンは、畏怖と安堵の入り混じった声でつぶやいた。

堆積物が完全に安定した瞬間、探査機の傾きも解消され、安全が確保された。

「彼らが……助けてくれたの?」カレン隊長が驚きの声を上げた。

「そうかもしれない。それとも、単に自分たちの環境を守っただけかもしれない」ダニエルが慎重に付け加えた。

いずれにせよ、探査チームはエリディアンの行動を見守るしかなかった。その触手の動きは美しく、そして不気味でもあった。


ジョアンの日誌・第244日

今日、タイタンクエイクが私たちの探査機を危機に陥れた。しかし、エリディアンが行動を起こし、その振動を整えてくれたおかげで、私たちは安全を確保することができた。

彼らの振動が「助ける」意図を持っていたのか、それとも単に自分たちの環境を守るためだったのかは、まだわからない。ただ、その触手が奏でたリズムは、調和と静寂をもたらすものだった。

私たちは今、未知の存在と共にこの湖の観測を続けている。そして、その存在が何を考え、何を望んでいるのかを知ることが、私たちの新たな使命になるだろう。


ジョアンの日誌・第245日

昨日の振動――エリディアンが湖底に向けて送った共鳴の波――について、私たちはチーム内で分析を続けている。今のところ、ひとつ確信できるのは、彼らが「振動によって湖底環境を制御する能力」を持っているという事実だ。タイタンクエイクというタイタン特有の地震が発生した際、彼らは互いに調和したリズムで湖底全体に共鳴を送り、結果的に堆積物の流れを抑え込んだ。昨日の時点では、それが私たちを助けえくれたのか、彼らの自己防衛のためだったのかは判断できなかった。だが、今は少し考えが変わりつつある。振動パターンの詳細な解析によれば、彼らは探査機の周囲に特に安定した波を集中させていた。つまり、「外部から来た存在」である私たちを、環境のバランスの一部として組み込もうとしていた可能性があるのだ。それは敵対でも排除でもない。むしろ――受け入れ、調整しようとする姿勢。

彼らは振動の波の「山」と「谷」、つまり波の「タイミングや位置」を指す「位相」を巧みに調整しているようだ。これによって別の振動とぶつかり合わせ、まるで音を打ち消し合うように、地震のエネルギーを吸収したり分散させたりしている。この能力は、私たちにはまだ理解できない、彼らの生物的な仕組みから来ているのかもしれない。


お読みいただきありがとうございます!エリディアンが湖底で発揮した調和の力と、それに対する探査チームの驚きや畏敬の念を描いた第4部はいかがでしたか?彼らの行動が「助ける」意図だったのか、それとも単に湖の安定を求めた本能だったのか――その謎が、物語をさらに先へ進める鍵となります。次回の展開もぜひご期待ください!

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