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六話

 俺と紅蓮は中学一年の初夏に初めて会った。


「授業なんて、かったるい。なんで、あんな簡単な授業のために息苦しい教室に居ないといけないんだ……?」


 そう呟いては屋上で一日の半分を過ごしていた。


 俺は所謂不良というやつで、教師と目が合うたびに説教を受けていた。だが星ヶ丘中学で俺の成績は常に上位だったため、まわりからは天才だと言われていたが、授業を毎回サボるため全体の評価はあまり良くはなかった。


 しかし俺の威圧感に押されてか、誰も強く怒るものは居なくて俺は教師達から見放されていた。

 

友好関係も上手くいかず、学校では一人で教室にいるのも苦痛。

 そのため、学校の屋上で過ごしていたのだ。


 そんな時だ。アイツに出会ったのは……。


「神崎冬夜。今は1時間目がもう始まってる。今からでも間に合うから、僕と一緒に教室に行こう」

「あ……? 誰だよ、お前」


「僕は如月紅蓮。神崎とは同じクラス。先生から頼まれたから授業を受けさせようと思って、ここに来た」

「俺は授業なんか行かねえよ……」


 それが紅蓮との出会いだった。

 それからというもの、紅蓮は毎日のように俺のとこに来ては授業に受けるように言った。


「だから行かねえって以前にも断っただろ!? 俺のことなんか放っておけよ! なんで俺に構うんだ! 教師だって俺のことを見捨ててる。お前だって、教師に言われたから俺に構ってるだけなんだろ!?」


 その時の俺は、こんな言葉を言ったら相手が傷つくんじゃないかという、人を気遣うという感情を持ち合わせてはいなかった。そのため、言いたいことを言葉にしていた。


「僕は君を見捨てたりしない。教師たちは君がろくでもない大人になるって言ってる。けど、僕はそうは思わない。どうして、そうやって突き放そうとする? もう自分自身を傷つけたりしないでほしい……」

「っ……」


 俺はその時の紅蓮の言葉に救われた。誰もが俺のことをろくでもない大人にならない、問題児などと陰口を言って蔑んだ。でも、紅蓮だけは違った。だから俺は紅蓮と友人になったんだ。

 気がつけば、俺と紅蓮は学校以外のことも話すようになっていた。


「冬夜、僕は中三になったら、この学校の生徒会長になる。だから冬夜は僕のサポートとして生徒会副会長になってほしい」

「風紀委員長の次は生徒会長か。会長になったら何かしたいことでもあるのか?」


「それは秘密。でも、なってくれる?  副会長に」

「ああ、お前が本当に会長になれたらな」


 その時は軽い冗談で返事をした。


 生徒会長になるには学年一位を中三まで維持しなければならない。いくら頭の良い紅蓮でも、ずっと一位は無理だろうと俺はどこかで思っていた。


 だけど俺と紅蓮が中三になった時、紅蓮は本当に学校の生徒会長になった。でも、俺は生徒会副会長にはなれない。


 何故なら、もうすぐ親父の仕事を手伝うため、今日フランスへ旅立つからだ。紅蓮にはそのことを伝えていなかった。


 空港に着き、フランスに行く飛行機が来るまで待っていると


「冬夜!」

「紅蓮、なんでここに?」


「先生から聞いた。お父さんの仕事を手伝うためにフランスに三年間留学するって」

「ごめんな、紅蓮……生徒会副会長になれなくて」


「ううん、大丈夫。でも、生徒会副会長の席はずっと空けておくから」

「そんなことが出来るのか?」


「出来る。……だから、僕が高校三年になった時、高校の生徒会長になったら、その時は今度こそ生徒会副会長になってくれる?」

「ああ、そんなことがお前に出来るならいいぜ」


 それから三年後、俺がフランスから帰国したとき、紅蓮は本当に高校の生徒会長になっていて、副会長の席を俺のために空けていた。


 実をいうと俺は紅蓮のことがこの時、既に好きになっていたのだ。

 だからこそ、フランスに留学して、紅蓮に対する恋心を忘れようと思っていた。男同士ということもあり、結ばれるのは不可能だと思っていたからだ。


 だが、そんな俺が忘れようと思っていた恋心も紅蓮が俺の為に生徒会副会長の席をずっと空けていたことで、俺は紅蓮に対する恋心がさらに高まってしまった。


そして、今、その恋心が紅蓮によって、燃え上がったのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

面白いと感じた方は星をマックスにしてくれると嬉しいです。今後の作者のモチベにも繋がるのでよろしくお願いします。

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