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あれから3日、ダットレイはすっかり回復していた。まだ腹に包帯を巻いているが、気持ち的にはもうそこら中走り回っても大丈夫だというぐらい元気だった。
「まあこれなら退院しても大丈夫でしょ、脳にも異常はみつかりませんでしたしうんもう大丈夫だ。帰ってもらって大丈夫ですよ」
「どうも、ありがとうございました。」
白衣を纏った老人に頭を下げた後ダットレイは病院の廊下をまっすぐ進んで正面の入り口へと向かった。
「あ、ダットレイさん!」
そしてちょうど入口のすぐ隣にあるカウンターに差し掛かったところでポールがこっちに向かって走ってきた。
「ああ、ポールか早かったな」
「ええ、ちょうど時間が空いたものですから」
「それで例の件はどうだった?」
「はい言われた通り調べてみたところ、やはり行方不明になっているのはダットレイさんの言っていたアッシュウェイトの弟でした」
「おお、そうか!」
誘拐した相手と入れ替わる方法、それは血縁者を誘拐することだ。それなら元の顔立ちも似通っているだろうし実際ダットレイの会ったあの女は顔立ちも声も中性的だった。
「で、尾行調査の方はどうだった」
「それが・・・この3日間アッシュウェイトの後をつけてみたのですが、この3日間特に変わったことがないんです。」
「変わったことがない、それはどうゆうことだ?」
「普通なんですよ、朝家を出て夕方家に帰る、途中友達と遊びに行ったりはしますがダットレイさんの言っていた森には一度も入っていないんです。」
「なんだと・・・」
てっきりあの森のどこかに、例えば洞窟とか山小屋とかで監禁しているものと思っていたが・・・だがわざわざ俺を橋の上から落としたんだ・・・あいつが犯人のはず
「俺が言ったあれはどうだったんだ?」
「ダットレイさんが言っていた食料調達も行っていないんですよ、ほんとに友達と遊びにいかない時はそのまま家に帰ってるんです。」
「じゃあ残る可能性はあいつの家か」
「ええ私もそう思ったのです、ダットレイの家は結構な豪邸であの大きさなら余っている部屋の一つや二つはあるはずでしょうから、、、ですが入る手段もないので」
「それで俺のところに来たと」
「はい」
確かにアッシュウェイトの家は父親が政府の役人で相当な大きさだ、親に隠して人を監禁するのも不可能ではないはず
「よし・・・わかったあの家に踏み込もう」
「でも令状なしでは・・・」
「ああだから少し強引なことをする」
「強引なこと・・・・・もしかして!」