黄泉の国で
ここは、黄泉の国。この世での生涯を終えた者たちが集まる所。
縄文人、弥生人、それから、ローマ兵もいる。
そこに現れたのは、平将門。
そして、もう一人は、藤原頼長。
頼長「どうも、保元の乱で、平清盛に負けた、藤原頼長です。将門公。」
将門「そうか。実はわしは今、三途の川の見張り役を、さるお方より、仰せつかっておるのだ。
時々、ここにわざわざ、やってくる者たちがいるのだ。世を儚んで、やってくる者たちだ。最近は、時代が進むごとに、そのような者たちが増えておると感じるのだ。」
頼長「さようか。後の世も、世知辛いのう。」
将門「して、そなたは何用で?」
頼長「ああ、間もなく源氏と平家の大戦が始まるぞ。
こちらに来る者も多くなるだろう。そして、清盛もまた、こちらに来ることになるだろう。」
将門「貴族の力はすっかり衰えたものだな。この大戦は、まさに天下分け目になるだろうな。
勝ち残った方が、まことの武士の世を築いていく、武家の棟梁となっていくだろう。」
頼長「この世で見届けられる時など、たかが知れている。しかし、この黄泉の国でなら、末代まで、この世の行く末を、こちらの黄泉の国から見れば、あちらの世だが、その、あちらの世の行く末を、見届けられるというものだ。
見届け人ほど気楽なものはない。ただ見届けておればよいのだからな。
ただし、どのような結果になっても、ただその結果を見届けることしか、できぬがな。」
それを聞いていたのは、藤原不比等。さらには、行基も、2人の会話を聞いていた。