9
本拠地の中。
入る事暫し。
玄関から靴を脱いで入る僕達。
そのまま奥の応接間らしき部屋の畳を剥ぐ明日香。
見ると畳の下は地下へと続く階段が有りました。
年代を感じさせる其れは昨日今日で作られた物という感じではない。
どうやら明日香さんの言葉は真実みたいでした。
「不用心すぎる」
カツンカツンと階段から地下に有った通路を歩く僕達。
「警備の人が少なすぎるから?」
「そうだね」
はっきり言えば会ったばかりの此の子を信用して良いか分からない。
「罠にはめたかもしれないと私を疑ってる?」
「うん」
僕の心の内はお見通しか~~。
「其処は否定して欲しいんだけど」
「いや~~会って一日も経ってない子を信じろと?」
「其処は愛する妻を信じるよと言って欲しいな~~」
おどける様に手を広げる。
通路に備えれた明かりが彼女の笑顔を浮かび上がらせる。
「印鑑の偽造をして届け出をした人を信じろと?」
「うん愛してるから信用してほしい」
ニコニコと笑うその姿に僕は視線を逸らす。
「僕に恐怖したからと言ってなかったけ?」
「ああ~~其れ方便」
「はい?」
思わずフリーズした。
「実は昔ね旦那様に一目ぼれしたの」
「はあ?」
「だからね機会を伺ってたんだ」
もじもじした明日香は一番奥の部屋までたどり着く。
其れについて行った僕は彼女の言動に目を丸くする。
途中で枝分かれした通路や部屋があるがスルーしていた。
彼女の話に集中していたからだ。
「なんてね」
「はい?」
ニコリと笑う明日香。
其れに伴い通り過ぎた別の通路や部屋から足音がする。
「動くなっ! ママチャリライダーの息子」
「しやああ~~」
「グル~~」
僕の背後から怪人が現れる。
三人。
嫌……三体か。
「明日香此処は一旦切り抜けてから後で話を……」
「必要ない」
そう言いながらカツカツと怪人たちの方に向かって歩く。
無防備に。
変身もせず。
「ご苦労だったワニ怪人」
「いえ」
その光景に僕はポカンとした顔をする。
明日香は冷たい顔で怪人二人の後ろに回る。
「どおいう事だ?」
「どうもこうも御前は騙されたのさ」
「初めから御前を此処に連れてくるのが目的だったのさ」
「初めて出来た女に浮かれたか? 哀れな」
僕の言葉に怪人三人は答える。
冷酷とも言えるその言葉に僕は言葉を失う。
明日香は何も言わない。
無表情で僕を見る明日香だった。
僕は目を細め周囲の状況を把握する。
一番奥に明日香が。
その前に怪人が三体。
狼に虎其れに鷹型か。
大盤振る舞いだな~~。
戦闘員ではなく怪人。
此処に来る前軽く明日香からレクチャーを受けた事を思い出す。
御父さんの世代である旧式の改造人間と。
明日香の世代である新型の改造人間の事を。
旧式はナノマシンを最小限にした代物だ。
その代わり様々な機械を埋め込んだ状来の改造人間だ。
旧型の利点は圧倒的な攻撃力と防御力を兼ね備えている。
但し予算が馬鹿みたいに掛かり改造期間が長いらしい。
しかも拒絶反応なども無視できないらしい。
其のうえ組織を裏切らない様にした脳改造は其のスペックを低下させるとか。
主に反応速度の面で。
此れが御父さんが組織を裏切り追っ手を圧倒できた理由だ。
定期的なメンテナンスは多少の不具合に目をつぶれば良いらしい。
新型はナノマシンを多めに使用した簡略版である。
最新型の其れは新型のナノマシンを使用した改造人間だ。
攻撃力や防御力といった面で旧型に劣るらしい。
但し予算の面や改造期間が短くて済むという利点がある。
しかも状来のナノマシンも併用するため拒否反応は殆どないらしい。
但し組織を裏切る可能性を抑止する方法が状来より低いとか。
其れを補うため様々な方法が試みられてるとか。
唯定期的なメンテナンスをしないと状来の物より低下するとのこと。
此処に居るのは新型が三体。
如何に新型の改造人間といえど其の能力は侮れない。
普通の人間なら対抗できない。
普通なら。
「成程~~其れで此処に御父さんが居るのは噓だった訳か」
「まさか本当さ」
おどけるように言う狼型の怪人。
「御父さんに組織を壊滅されてないのに?」
トントンと僕は金属バットで床を叩く。
「奴は我らが新しい能力を得ていたことを知らなかった……ただそれだけだ」
「だからやられた?」
「そうさ我らが新しい高速再生能力の存在をしらなかったから~~敗れた」
「へえ~~」
冥途の土産にしてはえらいペラペラ喋るな~~。
「一つ聞きたいんだけど」
「何だ?」
「何で唯の一般人である僕をワザワザ罠に嵌めるの? 意味が分からないんだけど?」
「其のことか」
「ああ」
「今年の秋謎の第三勢力が現れたからだ」
「第三勢力?」
はて?
秋?
「ストレス獣と呼ばれる奴の新種が現れたからだ」
「ぶっ!」
おいおい。
ストレス獣?
都市伝説じゃないか?
正気か?
「そいつは突然現れて暴れだした」
正気みたいですね~~。
「一人だけだったから捨ておいたが……」
「集団で現れたから脅威とみなし探っていた?」
「そうだ」
当たりかよ。
「其の捜査上浮かび上がったのは御前一人だけだ」
「いや知らんし」
「生憎他の者は記憶を失っていてな~~」
はて?
ああ~~。
何か知らないけど集団記憶喪失事件というのが新聞で有った気がする。
因みに僕も其の被害者です。
何故か知らんけど。
「成果は無かったと?」
「ああ」
「でしようね」
僕が一番マシだったんだ。
他のやつは全員尋問しても意味ないだろう。
「だから僕を罠に嵌めて情報を引き出したかったと?」
「そうだ」
「期待されてるようで申し訳ないですが……」
「やはりお前もか」
「そうですね」
「まあ~~尋問してみれば良いか」
「ですよね」
さて眼前の状況をどう打破するか考える。
まあ~~上手くいけば問題何いんだけど……。
「狼怪人」
「何だワニ怪人?」
明日香に視線だけ向けて喋る狼怪人。
「他のメンバーと首領は?」
「今関係あるか其の話は?」
其の言葉に明日香は焦りの声を上げる。
「当然だ」
「はあ?」
明日香の言葉に困惑する。
「此奴は私をたった一人で打ち破ったんだぞ」
「「「なっ!」」」
明日香の言葉に動揺する怪人たち。
え~~と?
何で其処迄動揺する?
「嘘だろう……ママチャリライダー以来の天才児と呼ばれた御前が……」
マジですか。
「ああそうだ」
「おいおい」
「首領たち抜きで捕縛出来ると思ったのに」
「マジかよ」
ゑ?
明日香さん?
御父さんに戦いを挑んでたから唯の独断専行と思ったけど……。
まさか本当に実力者?
マジで?
「圧倒的だった」
違います。
いや本当に。
「マジかよ」
「しかも生身でな」
お~~い。
「「「ひっ!?」」」
お~~い。
御父さんが居た事を省いてない?
良いけどさ。
「気を付けろあいつは強い……途轍もなくな」
「「「……」」」
明日香の言葉に息をのむ怪人たち。
折角だし上手く活用しますか。
「さて僕は生身で怪人を圧倒できる」
引いてますね。
「……」
おいおいドン引きかよ。
今更。
「此れの意味は分かるな?」
「まだ変身してない状態で……」
すみません。
変身できません。
「という事は……俺ら四人で襲っても勝ち目がないっ!」
「おいっ!? どうするこんな化け物相手に出来ないぞっ!」
化け物は余計です。
「首領に連絡をっ!?」
「首領は奥の部屋でママチャリライダーを直々に脳改造を施されておいでだ」
「ならママチャリライダーを人質にすればっ!」
「いや無理だ此奴が連絡をする時間をくれると思わないっ!」
怯え過ぎと思う。
僕の言葉に怯える怪人たち。
うん。
ベテラン怪人にしては慌てすぎである。
「慌てるなっ! 三人で時間を稼ぎつつっ……」
ゴンッ!
近づいて一発殴る。
ズダンッ!
壁に叩きつけられた怪人。
ズルズル~~。
「ぎゃっ!」
余りにも隙だらけだったので狼型の怪人の頭部を殴りました。
金属バットで。
しかも思いっきり。
狼型の怪人は白目を剥いて気絶。
天井に思いっきり飛びました。
うん。
ナイスホームラン。
「心配するな峰打ちだ」
「「金属バットにそんなものは無いいいいいいっ!」」
残り二人の怪人が叫ぶ。
ナイスツッコミ。
「ワニ型怪人御前も変身しろっ! 応戦する」
「ええ」
虎型怪人の言葉に明日香は頷く。
「なら僕も変身させてもらう」
「「ひっ!?」」
虎と鷹型怪人が悲鳴を上げる。
「変身」
明日香の言葉辺りに響く。
そうして明日香はワニ型怪人に。
そして僕はこう唱える。
「変身ママチャリ」
「「「ひっ!」」」
其の言葉と共に走りスイング。
変身は唯のハッタリ。
振り下ろされる金属バット。
僕の言葉に萎縮する怪人。
「なっ! 変身ママチャリだとッ! 報告に無いぞっ!」
「待てっ! ワニ型怪人何をするっ!?」
ガシッ!
明日香に虎と鷹型の怪人が捕獲される。
「悪いわね旦那様の為に死んでちょうだい」
明日香に首根っこを押さえられ動けない虎と鷹型の怪人。
そう明日香は最初から僕を裏切ってなかった。
御父さんと此処に居る残存戦力の存在を聞き出すために一芝居うったのだ。
僕の金属バットが唸る様に轟音を放つ。
「必殺うううううタコ殴りっ!!」
バットを振るう僕。
「「変身してねええええええええっ!」」
二体の怪人のツッコミが決まる。
ゴキッ!
ゴキッ!
二体の怪人の頭部に炸裂した。
取り合えず突っ込み有難う。
後には白目を剥いた怪人が二体倒れていた。
血とか色々飛び散ってるけど気にしない。
どうせ死なんだろうナノマシンで。
「死んだ?」
「死んでないよ」
「此れで?」
「安心しろ峰打ちだ」
「金属バットの何処に峰が?」
明日香さんジト目で見ないで。
貴方死んでちょうだいと言ったろうに。




