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頼りになるのはスマホ

第9章

 「蓋がないと、瓶があっても……」とウインターノは、考えて……そのまま考える事を止めてしまった。

 

 「無い物をいくら考えても、無駄だ。瓶は、小物入れにでもしましょう。でも、この魔法の空間は、本当に便利で、腐らない物は、いくらでも閉まって置ける」


 「今日は、てんさいと言う植物を、育てて、砂糖を作るとして、これで、甘味が味わえるけど……、今まで、塩味しか知らない人間にとって、甘い食べ物って……? でも、果物は甘い? トマトも甘い?」


 ウインターノは、しばらく考えて、自分用の結界を張っている畑で、まず、てんさいと言う植物を育てる事にしてみた。


 「後は、ネットで検索して、そうか……、うん、うん、わかった。収穫出来たら、とにかく作ろう」


 「砂糖が出来たら、何を作る? ドーナッツかな? 小麦粉は、この前収穫したと、リップスさんが話していた。……フライヤーで、できるかしら?」


 その日の夜は、ドーナッツで頭がいっぱいで、楽しく過ごし、夜は、魔王にもらった携帯で、ゲームにいそしむ。


 「――毎日、こんな生活が続くと、異世界での生活が本当に天国に思える」



 ウインターノは、雨を降らす以外、特別な力も発揮する事もなく、どうにか生活出来ているのは、大人しい人が、こちらの国には多く集まっているからで、たまに乱暴を働く人間が現れると、最近は、種や植物等と一緒に、地方に飛ばしている。


 それは、すごろくのスタートに戻るみたいで、また、一から開拓する事になり、地方も緑が増える役目も負う。一石二鳥だと、ウインターノは、勝手に思っている。


 建国されたばかりの国は、住民たちの結びつきも薄く、己を守るだけで、精一杯、他人を気にしている余裕がないようで、ウインターノに、問い合わせをしてくる住民は、一人もいない。


 外の事は、きっと、リップス親子が、どうにかしてくれているが、たまに訪ねてくる魔王の妹は、遠慮なく仕事を持ってくる。


 「こんにちは、ウインターノさん、今日は、友達を連れて来ました」


 「……」


 「彼はケンティと言います。医師を目指しながら、薬の研究もしています。現在、私たちが暮らしている国では、薬草が不足し始めていまして、ウインターノさんに薬草の生産を依頼に来ました」


 「??」


 「あの……、この前も、果物を売ってもらって、お金を頂きましたが、この国では、そんなにお金……、必要でしょうか?私は、お金を使う場所がそんなになくて……」


 「この国が豊かになって、人口が増えたら、やはり、お金は必要になるとおもいますけど……?」


 「そっか、最近、お腹が大きい人を良く見かける。そうか、そうか、人は、どんどん増えるよね。そうなと、お金が必要になるのか……」


 「……」


 「わたりました。それで、どうしたらいいの?薬草を植えるの?」


 「ケンティが、この国の人々に指導してくれて、簡単な薬の作り方なども教えます」


 「薬って、物凄くキレイな工場でなくても作れるの?不思議?薬草って、本当にあるんだ……」


 「……」


 「あります。今は、色々な研究が進んでいます」


 「それって、ポーションとか?」


 「そっか、そうなると、やはり、ガラスも必要になるよね?」


 「だから、あっちの国からガラスの瓶が大量に送られて来たの?」


 「??」


 マリヒューイは、ケンティに薬草を植える場所を探しに行かせて、ウインターノとじっくりと話す。


 「ウインターノさん、確かに、私たちは、この世界では、異質な人類です。しかし、他の人達は、普通の人間と考えて下さい。この世界には、ポーションは、ありません」


 「……ないなら、作ればいいのに……、薬があるのなら、ポーションでもいいのでは?水薬みたいな?」


 マリヒューイは、しばらく考えて、前世の記憶をたどる。


 「――ええ、思いつきませんでした。失礼しました。そうですね。何も時間をかけて、無理に乾燥させる必要もない物もありますね。そっか、だから、兄の国では、ガラスの生産が始まったの? ああぁ、ポーションのいいアイデア頂きました。ありがとうございます」


 「ガラスの瓶って、見せてもらってもいいですか?」


 ウインターノは、空間収納をマリヒューイに見せて、納得してもらう。あまりにも大量の瓶の山に驚きながら、

 「どうして、使用していないのですか?」と聞く。


 「蓋がないの……。だから、コップになるのかしら?でも、私は、コップは一つあればいい感じなの。たくさんあっても、一人暮らしだから……・」


 マリヒューイは、ウインターノがいつも使っている素朴なコップを見て、ウインターノの欲の無さを実感する。


 「ウインターノさんは、兄上と似ています」


 「??」


 「兄上は、あの趣味の悪い王宮の修理もせずに、自分のいつもいるところだけを、魔法で整えただけで、暮らしています。ウインターノさんも、この素朴な家に住んで、質素に暮らしていて、本当に、よく似ていると思いました」


 「蓋は、兄を呼んで、魔法で作る方法を聞きましょう。素材がないと、思いつきませんよね?」


 「ねぇ、魔法って、やっぱり、魔法学校とかで習うの?あなたは闇の魔法が使えますとか?」


 「本来なら、きっと、誰かに魔法を習うと言う事が必要でしょう。しかし、わたくしも身内以外には、習った事がありません。わたくしも、そのような学校があれば通って見たかったです」


 「そうだよね。私なんか高校も卒業しない内に、こっちに来たでしょう。この携帯がなかったら色々な事が、まったくわからなかった。砂糖って、植物から作れるって本当に知らなかったから……」


 二人が話していると、魔王は通常通りに登場して来て、手には、パソコンを持っていた。

 

 「うっそー! ありがとう。本物? これ、最新の? すごーい!」


 マリヒューイは、何も話さない兄を見つめ、少し微笑んでいる。

 「兄上、ウインターノさんにガラス瓶の蓋の作り方を教えてあげて下さい。素材は、何がいいでしょうか?」


 「……これからできる薬草がいいのでは?マリヒューイは、今日は苗を持って来たか?」


 「ええ、良いアイデアです。今日持って来た薬草の葉は、薬の材料に使いますが、蔓は鉄のように固くて、丁度いいです」


 その時、ケンティが帰ってきて、話し合いに参加する。


 「丁度、防腐の役目をする葉っぱを持って来ているので、それで蓋をして、蔓で閉めるのはどうでしょう?」


 魔王は、魔法で見本を見せて、それを見たウインターノは、真似をする。

 「できた。できた。嬉しい、これで瓶が使える様になった」


 ケンティが、

 「ウインターノさん、薬草の畑は、リップスさんと話し合って、少し遠くの場所に作る事にしましたが、よろしいでしょうか?」


 「ええ、リップスさんがいいなら、いいですよ。その畑は、ケンティさんが、経営してくれるのですか?」


 「経営とかは、わかりませんが、リップスさんが人を集めてくれて、明日から苗を植えてくれるみたいです。その後の収穫もお願いすると思いますが、薬草は虫などに弱くて、少し手間もかかります」


 「害虫駆除の方法は、また、指導に来るつもりです」


 「その後、薬の作り方も指導して欲しいと、リップスさんに頼まれましたが、どうしますか?」


 ケンティ以外の3人は、黙ったまま『う~~~』と言って、しばらく考えていた。


 魔王は、絶対にマリヒューイとウインターノの会話を聞いていたに違いなく、ウインターノは、本当にどうしたらいいかわからない。マリヒューイは、ポーションと言うワードが頭から離れず。


 そのまま、3人に、沈黙が流れている。


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