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魔王と魔女の日常

第8章

 スマホをもらってから、一応、どのような人々が生活しているかを、写真とメモで、管理している。


 そこで、その大勢の人達がいるところを、『カシャ!』と、写真に撮り、収穫を任せる。

 「ここにいる人達で、収穫して下さい。食べたい人達は、食べるもよし、売りたい人達は、売る事も許可します」


 「ウインターノさんは、どの位、必要ですか?」

 

 ウインターノは、考えて、「残った分を引き取ります」と話した。


 ウインターノのいい加減な申し出を、いつも、リップス親子は、歯がゆいと思いながら、それでも口に出さずに、周りの人々の行いを見ながら生活している。


 部屋に戻り、写真を見て、内緒で、作った番号制のホルダーを開き、ここの国民を登録してる。

 「やっぱり、パソコンが欲しいな~~~。携帯は持ち運べるから楽だけど、バックアップは、必要だよね」


 夕方になって、リップス親子が、訪ねてくる。二人が来る時は、部屋の中は、この国の様式に変化させていたが、面倒になり、今では、現代形式のリビングに案内して、話を聞いたりしている。


 「ウインターノさん、本当によろしいのですか?折角、美味しい果物が、たくさんなったのに、ご自由にお持ち下さいなんて……」


 「でも、一人では、収穫も出来ませんし、食べきれません」


 「……」


 「それは、私たちもそう思いましたけど……」

 「おばさん達が、ジャムを作りたいんだって、保存もきくし、たくさんの果物が、腐る前に、どうにかしたいらしいよ」


 「ああ、いいアイデアですね。そうして下さい」


 「……」


 「でもね。保存する瓶が無いんだって、昔は、王都では、たくさんのガラス製品を販売している市場があって、品質も良くて、その瓶が欲しいらしいよ」


 「……」


 「面倒だから、ジャムは諦めて、食べつくすのはどうでしょうか?」


 「……」


 「わかった。おばさん達に、そう言っておくね」と、エザルールは、リンゴを頬張りながら、急いで外に出て行った。


 残ったリップスは、

 「みんなは、ウインターノさんに話せば、どうにかなると思っている事が多いと感じます。実際、砂糖もなく、ジャムが作れる訳がないのです。昔、どこかの国から、瓶に入っていたジャムを食べた事がある記憶を頼りに言い出したのでしょう」


 「そうだよね。なんでもできるわけないのよ。これがまた……。でも、リンゴは塩につけても美味しいよね。後は、太陽の下で、薄く切って干すのもありだけど、どう思う?」


 「柑橘系の果物も、干せば長持ちすると思うけど……」


 「やってみます」


 「そうそう、リップスさんのお茶に、さっきリンゴとオレンジを入れて、ほら、綺麗で美味しいのよ。甘くなって、これならいくらでも飲める。後、ジュースにしてもいいよね?」


 「そっちの方が名案ですね。この国では、甘味が不足しています。それがいいでしょう」


 「そっか、砂糖がないのか……」


 「ウインターノさんは、この国をどのようにするとか、方針みたいのはありますか?」

 

 「いいえ、全然、ありません。ただ、毎日、食べて、たまにポテトを売って、生活出来たらいいと、考えています」


 「ふふふ、私達と一緒です。でも、今回のような事は、これから沢山起こるでしょう。誰かが指揮を執ってくれることを、集まった人達が願い始めました」


 「――それって、私って事?」


 「わたしにそんな力はありません。学級委員長ですらしたことがないのよ。国の代表なんて、そんなの大役を……・」


 「しかし、役所みたいなのは、必要になりそうです。実際、人口も増えて、勝手に家を建てて、自分の領土だと主張する人達も現れました」


 「私が、もし役所をつくるなら、体が不自由な人に頼みたい。健康な人は、今日みたいに収穫したり、畑を耕したりできるけど、戦争で、手足を失った人達には難しいし、辛い生活の事も理解できると思うのよね」


 「リップスさんの心配も理解できますが、まだ、この位の人数ならどうにでもなると思うよ」


 「はい、わかりました。もうしばらく様子を見ましょう」


 その後、ジャムを作りたいと言う野望は消えたらしく、みんなはジュースを造ったり、乾燥させて保存する道を選び、ウインターノは、シャキシャキしているリンゴを一日1個は、食べる様にしてみたが、それでも、大量に残った。


 「仕方がない。彼に相談するか……」


 スマホを取り出し、メールすると、魔王とマリヒューイが、初めてやって来た。


 「いらっしゃい。すごい、やっぱり早いね」


 「丁度、兄の所に、食事を届けていました。リンゴとオレンジの件、承ります」

 

 「??」


 「彼女の国では、今は、食料難は、起こっていないが、あの爆発を起こした国は、やはり、食料が足りない、元々、そんなに裕福な国ではなく、復興までには何十年もかかるだろうし、支援する国にも限度がある」


 「ウインターノさんが、下さった作物を、兄の国でも生産してもらい、その作物を、色々な国に売っています。勿論、ウインターノが、欲しいモノがあれば、こちらにお持ちしますけどどうでしょうか?」


 「ええ、では、リンゴとオレンジをお願いします」


 「ウインターノさんは、何か欲しい者はありませんか?」


 「パソコン?」

 「パソコン?」


 「後、砂糖と瓶が欲しいらしいです」

 「砂糖は、てんさいと言う作物からとれるらしいので、てんさいを探してお分けします」


 「瓶は・・」

 「瓶は、王都に売っている物があるみたいで、そのお店の物がいいらしいです」


 魔王が、

 「ああ、王都の店にあったらそこで買って送ってやるよ」


 「ありがとう。在庫処分もしてくれて、欲しい品物も手に入って、本当に助かる」


 「しかし、パソコンは、何に使うのか?」

 「携帯で、写真を撮って、人間の整理をしているけど、やはりパソコンの方が、整理しやすいと思って……」


 「国を治めるのか?」

 「いいえ、まったく、そんな気持ちはありませんけど、色々な人がいて、訳がわからないから、この人は、どんな人なのかとか、メモしているだけ、暇つぶし?」


 「ウインターノさんは、国民の為に、道を整えたり、河川の整備や、その様な事を魔法で行っているのですか?」


 「いいえ、まったく、広場でポテトを販売しているだけです。でも、いつまでも、そうして暮らせるか、わからないとは思っています」


 「住民からの要望はありませんか?」

  

 「あるかも知れませんが、仲良くしてくれている親子が、もしかしたら防波堤になっているかもしれませんね……」


 その後、魔王の兄弟は、残っている果物を一掃してくれて、マリヒューイは、てんさいの苗をプレゼントしてくれた。



 魔王は、ガラス製品を扱っている店に出向き、すべての品物を買い閉め、ウインターノの所に送ってくれた。


 その後、王都では、久しぶりの大量購入で、大騒ぎになり、誰もがガラス製品に力を入れ始め、街は、活気を取り戻し始めるきっかけになった。


 

 一方、ウインターノの家には、訳のわからない瓶が、続々と送り込まれ、びっくりしていると、ある事に気が付いた。


 「蓋がないわ……、密封できない」




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