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魔王の彼女になったよ

第37章

 ウインターノは、マリヒューイと話した事を思い出しながら、慣れないベットで寝返りをうちながら考えていた。


 「私が転生させられた意味ってあるのかしら?大体、私はどうして死んだのかもわからない……」


 ×××××


 食べて飲んで、眠り、マリヒューイの公邸にやっと慣れた後、リカの国の視察を始めた。リカの国は、素朴な国で、この世界に幸福度ランキングがあれば、絶対に1位に輝けるようなゆっくりとした国だった。


 貧困との格差が少なく誰でも生活ができ、学ぶ機会もある。それに教師の人材が豊富で、誰もが長老たちを尊敬し、そして、幼いマリヒューイを国王と認め尊敬もしている。


 「マリヒューイさん、本当にすごいです。私は、今、とりあえずの国王として、会議に出席していますけど、橋が出来て両国の往来が多くなったら、他の誰かが国王に就けば良いと考えています」


 「でも大使たちはウインターノさんを、グリーンランドの国王と認めていますよ」


 「それは内外で言ったら外だけで、あの国で認められた訳でもありません」

 「それは兄もそうだと思いますけど……」

 「……」


 「モヤモヤ気分を吹き飛ばす為に、馬車で外に出ませんか?」


 「ええ、ありがとう」


 マリヒューイと二人で出かけるのかと思っていると、ケンティと魔王も一緒に出掛けた。リカの国は、乾燥している国に思えるが、たまに雨が降る。その為、大きな川は存在しないが綺麗な小川が流れていて、住民たちはキレイな小川を大切にしている。


 この村にやって来たのは、どんな意味があるのかわからないまま歩いていると、いつの間にか魔王と二人っきりになっていた。


 「マリヒューイ達は、今日、この村に用事がある。だから、少し魔法で移動しないか?」


 「ええ、いいですよ。何見ても新鮮で、驚きの連続ですから……」


 魔王はそう話すと、ウインターノと一緒に魔法で移動し、ウインターノは、犯人を追い詰めそうなその断崖に立った時には腰が抜けそうになった。


 風が強く、足元が震える。

 「危ないじゃないですか! こんな所! 何があるのですか?」


 「ここからは、島が見える。ホラ、あそこ、あそこが僕の島だ」


 「後数年、魔法を訓練すれば、自分で自由に移動できるようになる。あの国での生活が辛くなったら一緒にあの島で暮らせばいいし、その他の国でもいい。今回の旅行で、そのことを告げようと思っていた」


 「なんで?」


 「多分、これからずっと、一緒に生きて行く」


 「?」


 「魔法を使う人間は、基本、長生きするとこは知っているな? しかし、魔力の弱いマリヒューイは、特殊な生まれで、生まれて来た時は全く魔力を持っていなかった」


 「魔王の子供なのに?」


 「そうだ。母は転生した人間で、母親に似たと思われていたが、魔力がない為に、重い病気にかかり、だから、もう少しで命が消える寸前でこの国の王女として転生させた。悔しが、我々には、それしか道がなかった」


 「マリヒューイは、死んでいないの?」


 「そうだ! そして、ウインターノ、君も多分死んでいないと思っている」


 「私は、死んでいないのに転生した?」


 「どうしてだと思う?」


 ウインターノは、自分がこの世界に送られて時の事を考えていた。スマホでネット小説を読んでいただけで転生された?まさか……


 「リカの国に来てから考えていたのだけど、私の両親も、ある日、病気になってしばらくすると亡くなったの……、私が生まれる前には、お姉さんがいたみたいだけど、やはり亡くなっていて、両親は、姉の事はあまり話してくれなくて、彼らにとっては辛い事だから、でも、両親が次々に亡くなっていった後、自分もいつか同じ病気になって死ぬかも知れないと、心のどこかでは思っていた……」


 「でも、あの時、痛みとか全然なかったけど?」


 「多分、ウインターノは、死んでいない。そして、私と同じくらいは生きる。今はまだどの位の寿命があるとは言えないが、私と一緒にいてもいいし、離れて暮らしてもいい。そんな存在になりたい……」


 魔王の突然の告白にウインターノは戸惑いはなかった。不思議にただ、ただ、嬉しくて

 

 「はい、お願いします。私が死ぬまで一緒に生きていてください。そんな素敵な事……、嬉しくて涙が出てきます」


 魔王は顔をゆがめて、

 「――、怖いとか、気味が悪いとかないのか?」


 「どうして?こんな素晴らしい事ないでしょ?だって、人より長く生きられて、ずっと一人じゃないのよ。孤独と言う言葉が消えた世界に来たみたい。それに魔法も使えて、食べる物にも困らないでしょ?」


 「たくさんの人間関係は、時には疲れる。でも、この世界に転生してからは、ストレスみたいなものがあまり感じられないの…、だから、ずっと、天国で暮らしていると思っていた。それに、死んでいないなんて……不思議よね?」


 「これは、自分だけの考えだが、きっと、君は、あるじにとって大切な人だ。マリヒューイと同じように、死ぬ前に転生させて、魔力まで与えている。主に直接聞いたのではないが、そうだと思っている」


 「あの若い男のあるじが、私の事を大切にしているから、ずっと、一緒に生きて行きたいの?」


 「まさか、主の思惑通りに生きる事は、心の底から嫌だと思っているよ。でも、結局、君をほって置く事が出来ない、そして、いつも考えている。最初は、小さな親切心だった。でも、家族以外でこんなに気になる人間は初めてで、それなら、初めから一緒に生きて行く方がいいと思った」


 「ウインターノ、多分、君に恋をしたんだ」


 「恋をしたんだ!」と言う魔王の言葉が、意外過ぎて、髪の毛が風に吹かれる事をを気にするのも諦めて、魔王を見ている。


 「レン魔王、そんな事言われると、この旅の間に、私もあなたに恋をするかも知れない……」


 「それは、すごくイイ、ただ、本当に長い人生になる。だから、永遠でなくてもいい、同じ世界にただ居て欲しい」


 「そうね、そうしましょう。人より長い人生なら、一緒にいても離れて暮らしても、その時に考えればいいよね?でも、浮気は嫌だからね?」


 「そこは大丈夫だ。僕の後ろには、家族がいる。君や家族の信頼を失う勇気は、本当にない」


 「ふふ、ねぇ、手以外で、私のどこが好き?」


 「……」


 ×××××


 ウインターノは、魔王の突然の告白に驚き、死んでいないのなら、丁度、彼氏が欲しい年頃で、生まれて初めての彼氏が出来た事の喜びが大きくて、真綿に包まれているような幸福感があった。


 一緒に生きて行くのは、本当に良くて、彼氏になる事も良いけど、二人とも結婚して、一緒に暮らす事は全く考えていなかった。


 まだまだ、若い二人だから、長い人生、急いで決める事はないだろうし、今のままの関係が続けばいいと二人は思っている。


 「彼氏、彼女でいいでしょうか?」

 「よろしくお願いします」


 その後、二人は魔王の島に移動した。


 魔王は、基本、なんでもありの人間だと言う事がはっきりわかる島だった。この島は、国と呼んでもいいくらいの大きさで、思いっきり近代化したリゾート地だった。


 「あなた、砂浜まで作ったのですね?それも本格的なプライベートビーチ」


 「ああ、しかし、あまりにも夏が短くて、2、3週間しか使えない。その点は反省している」


 「この島、リカの国よりも北にあるのですか?なんだか本当に寒く感じる。グリーンランドになれたせいかしら?3月くらいの気候かしら?」


 「ここは、公国の最北端で、冬の方が長い。島の移動には君の力が必要だ」


 「……」


 「その事は長い人生の中で考えましょう。時間はたくさんあります」



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