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旅の始まり

第36章

 マリヒューイは、魔王とウインターノとのデコボコな会話は、全然気にしていないようで、マイペースで、リカの国を回る計画を説明する。

 

 「まずは、ウインターノさんのお住まいですが、あちらの建物でよろしいでしょうか?」


 マリヒューイは、屋敷の敷地内に立派に建てられた屋敷をさして、ウインターノの顔を見る。

 

 「えっと、その、あんなに立派でなくてもいいですよ。一部屋お借り出来れば十分ですが……」


 「しかし、あの別館とウインターノの部屋を繋いで頂けると、わたくしもとても助かるのですが……」


 「え?」


 「え?兄から聞いていませんか?ウインターノさんのお部屋は、ユーオーライ国のお屋敷のお部屋と繋がっている様で、今回、わたくしの国の別館ともつなげていただければ、わたくしも気軽にお邪魔出来ると思いまして、でも、訪問する前に、絶対に、メールしますけど……お願いします」


 「本当は、兄との部屋も繋がれば便利ですが、そこは我慢します。」


 「そ、そうか、大丈夫です。そっか、そうすれば、意外に便利かもね……」


 あんなにリップス親子と今生の別れのようにしてきたが、もしもの時は、自分の布団で眠れるので、安心だ。しかし、あの二人には会わないように気をつけないと、でも、ベアドックには気軽に会える。それは嬉しい。


 さっそく案内してもらいその別館を確認する。公邸の客室別館だけあって、その豪華さは見たここもないほどに光輝いていて、床はツルツルで、窓も多く、天井も高い、そして所々に木を使っているので、あたたかい雰囲気をかもし出している。


 「温室のように光が舞い落ちてステキですね?」


 「ええ、私も初めて入って驚きました」


 「??」


 「兄が昨晩遅くにやって来て、建てていました」


 「え~~~、すごい、こんな事もできるなんて、魔王、優秀で凄すぎる!」


 「兄は、予知能力はありませんが、良い物を見分ける力があります。きっと、どこかで見た美しい物を集めて建てたのでしょう。本当に明るくて素敵な別館になっています」


 「だから、今日、メイドさん達、全然、驚かないで、私の分の朝食も出してくれたのですか?」


 「きっとそうでしょう。兄が来る時はいつも驚きがあり過ぎで、感覚が狂って来ているのかも知れません。あちらに見える大きな屋敷は、前世の両親が滞在するときに使っています。だから、安心して下さい。魔法によって、リカの国で差別にあう事はありません。ウインターノさんが、リカの国にとって大切なお客様だと国民全員がわかっています」


 「それに、島を作った時は、まわりから色々言われましたが、島に比べれば別館なんて小さい物です」


 「そ、そうでしょうね」


 「今日は、研究所の前に積まれた薬草の方が大きな話題で、皆さん、ウインターノさんに会いたいと願っています」


 「2兄、電気製品やお風呂トイレは、魔力で十分、使えるのよね?」


 「ああ、一応、全部、使えるパソコンと携帯は持って来たか?」


 「はい、持参しました」


 「それも使える様になっている」


 ウインターノは、後ろにいた魔王にキチンとお礼を言う。

 「ありがとうございます。本当にステキてびっくりしています。ドキドキの旅がなんだか落ち着いて来た。ありがとう」


 ウインターノが、頭を下げて魔王に初めて丁寧にお礼を述べた。


 魔王は、不愛想に何も言わず、頷いた。


 今日はこれから長老たちとの面談があって、薬草の出来を褒めてもらい色々な人達と話をする。普段、3人のご老人たちと話しているからか、リカの国の長老の方々と話をしても自然に馴染む事ができる。


 「これは、今、一番、楽しみにしているクリームなのよ」


 「この世界には化粧品もあるの?」

 「当然です。わたくしは子供の頃から使っていました。しかし、化粧品の生産は各国どこでもしていて、種類は多く、競争率は高いです」


 「そうなんだ。でも、あえて挑むの?」

 「そうです。どの国も顔やボディに熱心だけど、まだ、ハンドクリームはないの」


 「リカの国は、今は流行り病の薬の生産でどの国からも必要とされ、経済も安定している。それは、薬草不足をウインターノさんが補ってくれたから出来ているのだけど、その後もずっと需要があるとは思えない」


 「それに最悪の状態になった場合、私たちはきっと霧を出す。そうでしょ?」


 「7カ国で一番力を持っている国は、従兄弟の治める国です。血縁関係があり、とても大切な友好国です。私と兄、王妃、もしかしたらウインターノさんもその国の為に転生されたのではないかと思っています。この世界、そして、その国を滅ぼさない為に私たちは存在していると錯覚しそうになる事もあります」


 「??」


 「だから、私たちは、大きな戦争を未然に防ぎ、疫病も抑え込みます。それが私たちの使命です」


 「――いつか、きっと、ウインターノも理解できる日が来ると思います」


 「??」


 マリヒューイは、理解できなくて当然だと言うようにウインターノを見て、話を続ける。


 「幸い、リカの国には綿花が盛んで布の他に油もとれます。もしも薬が駄目になっても主となる物はあるのですが、私は、薬用のハンドクリームが欲しいと思っています」


 「ポーションが上手く出来て、世の中にまわり始めたらその後は、薬用のハンドクリームに力をいれる予定です」


 「私は、転生されてから一度も化粧品を使った事がなくて……、そうだよね。普通の女の子は、美容に興味を持つに決まっている」


 「実は、お風呂もあまり入ってないの……」


 「でも、魔法でキレイになさっているのでしょ?」


 「まぁ、ベットに流れ込む数秒前にササっと魔法をかけて気持ち良く寝ているの。でも、ベアドックが来てからは、お風呂は必須で、部屋の掃除もしてもらっているけど……」


 「今回の旅行は、兄が誘ったのですよね?」


 「ええ、大使たちが来てもまったく会話にならなくて、元々、頭が悪いのに国の生産量とかちんぷんかんぷんで、イメージできなかったから、そんなに食べ物が不足しているとは思えないし……」


 「立派な国王がいて、側近たちも優秀で各々の国が協力し合っているのに、どうしてって?」


 「カオ国の事はお聞きになりましたか?」


 「はい」


 「カオ国を図に表すとこのような形をしています。そして、お二人の国の元の形はこのようです」


 マリヒューイは、自分の書斎の大きな机に古い世界地図のような物を広げ、ウインターノにカオ国の形をなぞって見せる。それは、不出来なクッキーを二つに割ったように見えた。


 「二つの国は元は……」


 「きっと、一つだったのでしょう」


 「何千年か前までは一つの国で、なぜか二つに割れ、そしてもう一度、2兄によって割られたのです。この謎は、今の段階ではまったくわかっていませんが、その謎を解く事が2兄の楽しみになっています」


 「いつ行っても書籍を読み漁っているのは、その謎の為だったの?」


 「ええ、そうです。基本、私たちの家系は政には無関心で、その代わりを務める人間が必ずいます。ユーオーライ国のアシガー皇子がその役を担っています」


 「カオ国は、ご存じの通りに爆発を起こし、復興にはまだまだ長い道のりです。爆発の前はどの国も自国に被害が起こるのを防ぐために協力しましたが、その後の復興までは、それぞれの国にも事情があり、上手くは行きません」


 「だから?」

 「あるじは、あなたをカオ国の片割れの国に転生させたと、私たちは思っています」


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