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教育とは

第34章

 ウインターノの小麦は、多くの雇用と大使たちとの信頼関係を生んだ。このユーオーライ国には新鮮シャキシャキ野菜は殆ど流通していないが、大使たちにはウインターノの新鮮な野菜をふんだんに使用した料理も毎日のようにご馳走した。


 リカ国のマリヒューイ国王が、提案した交易は、ただそれだけでも、大きな成果があった事だろう。


 大使たちの長い滞在期間が無事終わった後、ふたつの国は大きく変わった。


 バンダ家の厨房は、人気の料理教室へ変化した。最初は、王宮からの料理指導の為の教室だったが、大使たちが持ち込んだ調味料の指導を仰ぎに来る料理人が大勢詰めかけた。


 「ジョジョは年齢的に大変で、王宮の料理人に指導する為に雇い入れた数名のコックを、そのままジョジョの弟子に迎え入れ、外からの料理人達との仲介役にはリップスが就いた。この事は、ウインターノがリップスに頼んだ訳でもなく、リップスの希望を聞き入れた形になった」


 ミリバードは、アシガー皇子から返却された財産を惜しみなく使い、少し遠くの地で都市の建設を始めたと言ってもいい。その場所は、ウインターノの家からは距離があり、多くの住人たちは、近くへ引っ越して行った。


 ある日、のんびりギルトでのんびり欠伸をしていると、カウンター商品調査隊のエザルールが、やって来て、ウインターノに聞く

 「ウインターノさんは、引っ越ししないの? みんな、建築や洋裁の等の仕事に就く為に、移住しちゃったよ……商売を始める人も増えたって」


 「私は、ここが一番いいの、忙しいのは向かないし、たまにカフェにお客さんが来て、色々、教えてくれるから、別に引っ越す必要もないのよ」


 「……、お母さんも引っ越さないって、お茶畑からは離れるのがイヤだって言うの……」

 「リップスさんって、本当にお茶の木を大切にしているね?」


 「友達もみんないなくなって、わたし、毎日、ギルドにきていい?」

 「前から、毎日きているでしょ?」


 「……」


 「ウインターノさん、最近、ギルドのカウンターの商品、売れなくなったよね?昨日も同じ商品だった」


 「私が、売りに行こうか?」

 「どうして?」


 「ギルドに仕事を頼む人が少なくなって、薬草の仕事もなくなって、お茶は、毎日、世話しなくても大丈夫でしょ、お母さん……、多分、仕事を探しているの……」


 「だから、エザルールが、カウンターの商品を売りに行きたいの?」

 「うん」


 「お金が必要なの?」

 「ミリバードさんの都市に、学校ができるでしょ、だから、私にもしも魔力があったら、アカデミーに通いなさいって、その為には、きっと、お金が必要になるからって……」


 「そうだね。きっと、学費はかかるよね」

 「いくら?」

 「知らないわ!」

 「ウインターノさんが一番偉い先生って、みんなが言っていたけど?」

 「エザルール、私が、一番偉い先生なら、こんな所にいる訳ないでしょう」

 「――」


 友達もいなくなって、暇を持て余している可愛いエザルールの事が少し可哀そうになり、迎えに来たリップスに話をする。前回、気まずくなってからゆっくり話すのは久しぶりだ。


 ×××××


 ギルド内のソファに座り、お茶を飲んで話をする。

 「ギルドはすっかり落ち着いて来たでしょ? それでもこの辺りに残っている人達は、たまにここに来てお茶を飲んだり、軽食を食べたりして、今では飲食店みたいだけど、それでもどうにかなっているのよ」


 「エザルールから聞いたのだけど、都市にアカデミー出来たらエザルールを通わせたいの?」


 リップスは少し戸惑って、「はい」と答える。


 「アカデミーは、多分、魔力のない子供の入学も許すでしょう。ただ、やはり、学費は必要になると思って下さい。今のこの国は、貧乏な国で、多分、助成はそんなにできないでしょう。例え、ミリバードさんがウイル家の全財産を使っても建設、整備、雇用で使い切ると思われます」


 「薬草畑は、いつ収穫できるかわからないし、町の人たちも減って裁縫の仕事の依頼が少なくなったでしょ?」


 「――お茶が出来上がるまでは時間がかかるし、もしも、仕事をしたいのなら紹介できるけど……」


 リップスは立ち上がり頭を下げる。

 「お、お願いします。今までは、本当に夢も希望もない生活でした。でも、今は、あの子に人並みの教育をさせてあげたい、そう思っています。なんでもします。お願いします」


 「リップスさん、エザルールは、明るくていい子で、色々な事を考えていると思います。あなたの事、私の事、そして、この国の事、だから、私もリップスさんを信じてこの仕事をお願いするのです。覚悟は、いいですか?」


 「はい、肝に銘じて、取り組みます」


 「うん、給金は、従来通りにベアドックから受け取って下さい。あなたが働きに出るとエザルールが、一人で留守番になってしまうので、エザルールには、このカウンターの仕事を任せようと思います。勿論、多少の給金は払います。すでに身分証の登録は必要ないし大丈夫でしょう」


 「……、遠くに働きに行くのですか?」

 「そうね、でも、朝、早くからギルドが閉まるまでの間の仕事になります」


 「その間、エザルールが、ギルドのカウンターで小物を売って、暇な時間は、ベル親子から勉強を教わります」


 「??」


 「王都の屋敷には、たくさんの本が残っていたの、私が小さい時に使った本もあって、それを二人に貸し出して、ヒュウマルと一緒に勉強して留守番して欲しいと思って、いきなりアカデミーに入学しても、授業について行けなければ、それは、それで、地獄よ」


 教育熱心な親に変身したリップスは、今度は、床に頭をつけ、ウインターノに願った。


 「お願いします。本当に一生懸命に働きます。エザルールの為にがんばります!」


 ×××××


 そして、翌日、リップスは、王都のバンダ家に続くウインターノの家に出勤して行った。


 「エザルールは、大丈夫?」

 「ええ、張り切って、私より早く家を出ました。勉強もする様に言ったのですが、少し心配です」


 「大丈夫よ。私にはリオールに料理を習って、ヒュウマルに字を習うって言っていました。その間に、カウンターで小物も売るらしい、字や計算はケンティからも少し教わっているから、多分、大丈夫よ」


 リップスは、その日、初めて王都のバンダ家に出勤した。見る物すべてがグリーンランドの生活とは違って見えた。初めは、大勢の男性たちの視線になれる事が大変だったが、今では上手にかわしている。


 ジョジョたちが助けてくれることも有難かった。


 「お嬢様、大使たちからコショウ等の色々な調味料が手に入りました。それを使って料理指導を行ってもよろしいでしょうか?」


 「あっ、良いわよ。唐辛子や山椒も頂いて、裏の温室に植えてあるでしょ?それらも使ってどんどん美味しい食事を広めて下さい」


 「リップスさんは、チーズは知っているから、チーズも出来たら教えてあげて……」


 「私が、リップスさんや王宮料理人に教えて、リップスさんは、外の料理人達に教えればいいのですね?」


 「そうよ。そうしないとジョジョが死んでしまいます」


 「お嬢様、私たちはお嬢様をお嫁に出すまでは死にません」


 「ええ、長生きして欲しいからリップスさんを雇いました」


 リップスは、バンダ家の厨房に積まれた珍しい食材を見て、ウインターノがどうしてあの小さい家で暮らしているのかがわからなかった。それほどバンダ家は素晴らしく王都の国は発展していた。


 「ウインターノさん、驚きました。こっちの国は、今まで見た事もないように発展しています。この凄さは、バンダ家だけでしょうか?」


 「そうね。今は王宮とバンダ家だけが大きく変化していると言っていいでしょう。でも、王都は、物凄いスピードで開発が進むと思う、だから、本当にエザルールを思うなら、本気でお金を稼いで、アカデミーに通わせた方がいいと感じました」


 「だって、ミリバードさんのつくるアカデミーは、最終的には両国の憧れのアカデミーになる予定、だから、ここで、リップスさんも少し頑張ってみればいい……」


 リップスは、高揚して「ありがとうございます」と、また、頭を下げた。

 

 (エザルール、これは勉強しなかった私からのプレゼントです。なんだか、ごめんね)



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