交易会議③
第33章
イチゴの苗が届いてからは、ウインターノは、イチゴの成長に夢中だ。至る所にイチゴの苗を置いて、成長を楽しみにしていた。
自分の部屋は必然、その他ギルドのカウンター、屋敷の厨房や野菜専用の温室、ギルド前には、木製のプランターを置いて植えたりして、ただただイチゴが出来るのを楽しみにしていた。
エザルールが、王都の商品の点検に来たついでにウインターノに聞く、
「この葉っぱ、何が出来るの?」
「イチゴと言う果物ができるのよ。赤くて甘くて美味しいイチゴ」
「トマトみたいなの?」
「トマトに似ているけど、ケーキに使えるの、トマトはハンバーガーにあうように、イチゴはケーキに必要な物なのよ。早くできないかな~~~」
「そのイチゴって、すっごく美味しいの?」
「すっごく美味しいと思う。こんなに待ち遠しい食べ物って、なかったな~~」
「わかった。素敵な男の人からもらったからでしょ?町で噂になっているよ」
「え! 嘘、どうして、違うよ。本当に美味しいからだよ。初めて自分の手で育てたいって……、思ったのは、え~~~! 絶対にケーキに入れたいからだよね?エザルール?」
「わたし、ケーキって、食べた事がないからわからない……」
「――今度、ニワトリが卵を産んだら作ってあげる。ホットケーキだけど美味しいから……」
「本当?」
「本当よ、ベアドックに教えておくから、多分、大丈夫、上手にできる安心してね」
×××××
そして、今回の大事な会議でもデザートにイチゴケーキが採用された。
「本当に尽力しました」
午後からはマリヒューイが加わってからの会議では、ポーションについての説明がされた。
「現在、緊急に必要な薬草は、グリーンランドにお願いして優先的に育てて頂いています。さらに、スピードアップの為、その薬草の乾燥と言う手間を省いて、液状のまま保存する事を目指していて、こちらのようにガラスの入れ物で届けられます。」
「おおおおぉぉ~~」その場の大使たちは、そのポーションを見て物凄く驚いた様子だった。
「この形体で薬の持ち運びが可能になれば、現在、流行り病のクラスターを起こしている地域にいち早く薬を届ける事が出来ます。しかし、ガラスの原料はここにありますが、カオ国の固形燃料はここにはありません。調合できる薬師も存在していないので、薬草と鉱物を公国に輸入して、あちらで生産したいと考えています」
「必要な薬草は育ったの?」
「はい、長老たちからも合格を頂いております」
「そのポーションと言う薬が公国に広まれば、少し安心できる。本当に助かるよ」
「しかし、まだまだ研究が必要で、今回、帰りの船に鉱物などの資源を積んで帰港する事を、公王様より依頼を受けて参りました」
「しかし、実は、我が国では小麦が大幅に減少していて、今回、もしも、グリーンランド国との間で交渉させてもらえると助かるのですが……」
「小麦ですか……」
ウインターノは、魔王をちょっと呼び出して、相談する。
「実は、ご存じとは思うけど、自分の畑には小麦がいっぱいできているの、でも、収穫するのが面倒で、ほったらかしなんだけど……、知っていたよね? あの大使に話した?」
「あの時、ケーキを食べたい事で頭がいっぱいで、結構、小麦栽培しちゃったんだよね……」
「だから?」
「魔王が収穫して、あの国の人に売ってくれない?」
「まさか、小麦粉までしなくてはいけないの?」
「なるべくならそうした方が有難いだろうけど、あまり人間を、魔法で助けたくない。」
「じゃあ、どうする?」
「ウインターノ、君の畑はグリーンランドの三分の一の広さだとわかっているのか?」
「うん、わかってる。他の住人には見えないようにシールドで加工してあるの……」
魔王は少し軽蔑した顔でウインターノを見て、二人は対立し始める。
「自分だって、保険の島を持っているでしょ!」
「君だって、湖や牧草地帯を保有して、牛もすでに飼っているではないか!」
「ハイハイ、私たちはそういう人間です。でも、あの麦畑、結構、広がってしまっているから、ここで、人助けの為に売りたいと思って……」
「人助けとはいい言葉だ」
「……」
「収穫は、手伝う。収穫したものは、港のサイロに保管して、船に乗せられるだけ乗せてもらう方法にしよう。その後は馬や牛の餌にでもすればいいだろう」
「ありがとう。助かりました」
「しかし、一人では無理だからな!」
「当然、手伝います」
二人の密約が終わり、小麦は収穫できるが、小麦粉まで行う事は難しくその辺はどうするかは、アシガー皇子との話し合いで決めて下さい。
「金額の提示とかはよろしいのですか?」
「あぁ、そこは、ユーオーライ国のゼニスキー秘書にお任せします。現金でも為替でもどちらでもいいです」
魔王が、
「私たちは小麦の調達に行ってきますので、後の事はアシガー皇子と詰めて下さい」と言い退室した。
似たもの同士なのだろうか、二人は同時に「ふぅ~」と息を吐き笑い合った。
「ふふ、このままいくか?」
「お願いします」
その後、二人はウインターノの畑に降り立った。魔王にとってここのスケールは予想以上であった。
「意外だ。いい、意外にこんなにいい所なのか? この小麦が風に吹かれている状態のままがいいんじゃないか?」
「実は、私も小麦の上を歩いて自己満足に浸っていたりして、本当にここの土地は私の息抜きの場なの、湖も作ったけど、魚がいないのよ。どうしたら魚が湧いてくるのかな?」
「あんなにきれいな水なら、小舟を浮かべて、泳いだらいいのでは?」
「そうだね、魚はあきらめて泳ぐわ……、それ、名案です。フフフフ……」
それから、二人は、本当のウインターノのグリーンランドを空から見たり、のんびり歩いたり、草原で寝転んだりして、デートしているように楽しんだ。
「さぁ、始めるか、両手を出して」
ウインターノは、いつも手を握る魔王が不思議になって聞いてみる。
「どうしていつも手を握るの?私に魔力を送っているの?」
「君の手が好きだから」
「そんな理由?」
「小さくて冷たくて柔らかい、ウインターノの手が大好きだ」
「……」
「ありがとう。でも、私、思うのだけど、この体、ウインターノさんのなのかな? それともわたしの?」
「どういう事?」
「この国に転生される時に聞かれたの、宝石はいるか? お金は必要か? 美貌は?って、でも、私は、わたしで、容姿も年もあの時のままで良いって告げた。だから当然、体も昔のままだとおもっていたけど、この手は私の手なの?見て、腕に薄く線が入っているでしょ?」
ウインターノは、少しだけ色の違う腕を魔王に見せた。
「バンド家の人たちは、この腕で私の事をウインターノだと確信して、仕えてくれるけど、たまに悪いな~~って、心から思うの、彼らのウインターノさんはもうすでに亡くなっているのに……」
「自分ではどう思っているのか? 昔のままではないのか?」
「その話を聞くまでは、自分の体だと思っていた。私はわたしだと……」
「それなら、腕の色が少し日焼けしただけだと思えばいい。その小さい白い手は、今のウインターノのものだ」
「そうなのかなぁ……」
二人は向かい合い両手を繋いだまま風に吹かれ、じっと考えていた。
「さぁ、始めるか結構な大仕事だ。小麦を刈り港まで移動させサイロに入れよう。その後は、人を雇い処理してもらえばいい。」
「はい、お願いします」
最近、魔王に魔法を教えてもらう時、自分の中の魔力が自然に波長を合わせる様になってきた。
「不思議、こんなにも風が気持ちいいなんて……」




