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バンダ家、ウイル家

第27章

 すでに、ウインターノたちが訪れる事は、予想していたのだろう。すぐに席が用意され、話が始まった。その話は、アシガー皇子が、この世界に落ちた時から始まった。


 「他国から偶然、この国に落とされた人間がこの国の皇子になって、ウインターノさんの婚約者になれたのは、この国には魔法が存在していて、そのともしびが消えかかっていたからです」


 「当時、私はこの国に転生したと言う事実を受け入れられずに、あちらこちらで魔法を使い盗みをして暮していた頃に、ミリバードの父上に出会いました。ミリバードの父は、この国の大臣役を承り、国王陛下の次に力がある人だったのです」


 「それって、捕まったってこと?」

 「そうです。でも、捕まっても、牢屋に入れられても、脱獄は簡単で、何度か繰り返している内に、上級貴族の間でも噂になっていたらしく、ある時、いつもの牢屋ではなく、王宮の地下にある魔法がかかった牢屋に入れられました」


 「しかし、そこも簡単に脱獄する事が出来た時に、ウイル大臣の前に連れて行かれました」


 ウインターノは聞く

 「私も昨夜わかったのですが、ある程度の貴族たちは、本当は、魔法が使えたの?」


 「そうです。それが貴族の身分である絶対の条件です。この国では、例え、男子の嫡男が生まれても魔法が使えなければ、その家は爵位返上を言い渡されます」


 「ウイル家もそうです。だからウイル家のミリバードも、微かに魔法が使えました」

 「うっそ! ミリバードさん、魔法が使えるの?」


 「ああ、使えると言っても、その時は、本を移動させたりするくらいの、簡単な魔法だけだ」

 「それでも、やはり、貴族のお嬢さん、大臣の娘……」


 「当時、その牢屋から出してくれたのは、そのウイル大臣だった。それには条件があって、嫡男に魔法を教える事だった」


 「ミリバードさんではなくて、お兄さんの家庭教師?ミリバードさんは一人娘なのに?」


 「当時の国王陛下に、なかなか後継者が産まれない為に、少しでも血縁関係のある貴族の中から、次の皇太子を決める法律もすでに出来上がっていて、ウイル家の婚外子もその一人だった」


 「隠れた嫡男?」


 「そうだ、その時は、ウイル大臣夫人もミリバードも知らない、秘密の嫡男だった」

 「その人は、魔法が使えたの?」

 「ああ、ミリバードと同じくらいは使えた」


 「ウイル大臣に捕まってからは、普通の生活が送れた。祖国でもどん底の生活、この国に来てもどん底だ。ウイル大臣の保護で、わずかな魔法で、人間らしい生活が送れたんだ。その頃は、人生の中で一番幸せだったかも知れない」


 「でも、そのお兄さん、ミリバードさんよりも年上って事は、結婚前に誕生していたの?」

 「ああ、母親はメイドで、二人は愛し合っていた」


 「……」


 「勿論、ミリバードさんと一緒には暮らしていなかったのよね?」

 「当然だ。二人はひっそりと暮らしていた。僕が加わって3人家族になってもだ。レブロンは、年も近くて、本当の兄弟のように暮らし、魔法を少しずつ教えた」


 「レブロンは、特に攻撃魔法が得意で、ウイル大臣は、レブロンが12歳になった頃には、彼を自分の近くに置き、政治やその他の事も教える様になった」


 「そうなると、どんなに隠してもレブロンの存在は、貴族の間では有名になり、それと同時に、レブロンの母親も亡くなってしまい、レブロンは、正式にウイル家の後継者としてウイル家に入った」


 「その頃、ミリバードは、まだ、幼く小さい女の子で、レブロンが大臣と一緒に王宮に出向く事が多くなり、私は、今度はミリバードに魔法を教える事になるのだが……数か月後に……」


 「ウイル大臣とレブロンが暗殺された」


 「え?」


 「国内の誰なのか?それとも他国の誰か?あるいは――身内か?」


 「まさか……、身内の方?」

 「それは、はっきりと解明されない内に、今度は、マンゴー国から攻められた。私は直ぐに身を隠し、自分で捜査をした」


 「まさか? ミリバードさん?」

 「彼女は、まだ4、5歳くらいで、父親の不貞など理解できる年齢でもないし、そんな能力も持ち合わせていない」


 「犯人は、王室と貴族たちだ。彼らはレブロンが次の国王に就く事を嫌がったのだ」


 「どうして?」

 「レブロンがあまりにも上手く魔法が使えたからだ」

 「……」


 「ウインターノ、人とはそういうものだ。それは、こちらの国王陛下もきっと理解できている」


 「人間とは、便利な時は魔法を愛し、怖くなるとなくしたくなる。それが人間だ。必要以上に彼らに加担していると、いつか大臣とレブロンのようになる」


 「うん、わかってる。それは、私も感じている。それで、ウインターノさんのお父様も魔法が使えたのね?」


 「ああ、ウイル大臣、レブロンの次は、バンダ公爵が魔力を持っていた」


 「その時の国王陛下は?」

 「すでに、長く患っていて、殆んどの魔力を無くしていた」


 「だから、あなたが皇子になったの?」


 「そうだ、その頃はすでに成長して、バンダ公爵よりも魔力があった。そして、国王陛下より任命も頂いた」


 「どうやって?」


 「魔力の弱っている国王の結界など簡単に入り込める。ベットに横たわっている国王陛下に、祖国の話をした。その頃には、この国は、絶対に私たちの祖国の誰かが住めるようにしたと推測した。そして、直々に同意を得た。だから、この国は、本当は、レン国王陛下が治める国だ」


 「ウインターノさんは、知っているか? この国には、学校がないが、親から神話として、多くの話が語り継げられている。その一説にあるのが、この国に、絶対に必要な人間は、魔力を持った人間だ。彼こそが、私たちの王であり、生命の源だとね」


 「逆の意味は、魔力がなくなると誰も生きてはいけない。死の国に変わる。ただ一人だけでも魔力を持った人間がこの国に存在していると、大地は楽園へ変わる」


 「だから、あの内戦の中、僕が皇子となり、ウインターノさんと婚約をした。それは国民の希望でもあり、貴族たちの希望でもあった。そして、パンダ公爵は、ウインターノさんを幽閉した」


 「僕の魔法が暴発してしまい。どうにもならなくなった時に、ウインターノさんだけでも生きていてくれたら、地下の水は汲めて、いつか枯れた台地が、復活できると信じた。」


 「僕の魔力では雨を降らせることは出来ない。しかし、人間にとって水は無くてはならない物で、例え、多少塩分が含まれていても、この国で暮らすには、あの装置が作動しなくなることを避けたかった」


 「じゃあ、ウインターノさんも魔法が使えたの?」

 「そうです。わずかな魔力でしたが、バンダ公爵は、根気よくお教えしていました。」


 「内戦が激化し始め、私達は二人で話し合い、その他の貴族を騙す為にバンダ公爵は汚名を被り、ウインターノさんをどうにか守る為に小さな家に送った。しかし、僕たちの考えは失敗した。あの巨大な嵐によって、パンダ公爵もウインターノさんもなくなってしまった。」


 「……」


 「私が聞きたいのは、もう一つあって、ミリバードさんとウインターノさんは知り合いだった?」


 「どうだろう……、ウイル家は、大臣とレブロンが亡くなってからも、ミリバードの魔力に頼って貴族の地位を保っていたが、結局は貴族たちから嫌われる事になり、疎外されていたのではないだろうか」


 「あなたは助けなかったの?」


 「それどころではなかった。自分が恩を感じていたのは、ウイル大臣で、その家族までは面倒を見る余裕がなかった。当時、マンゴー国はすでにこの国で略奪や人さらいを始めていたから……」




 

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