ギルドカフェ
第24章
「カビにお茶を提供させるのですか?」
「ああ、あのままではさすがに駄目だろうから、人型の魔物に変える。それなりのレベルまで上げる予定だが、何か希望はあるか?」
「う~~~、胸をつけて下さい。カビの容姿は関係ない。顔はカビのままで大丈夫、ただ、胸の大きいカビの2足歩行が絶対にイイです。それに可愛い制服も着用させて、カウンターに並べましょう。そうすれば、ガッポ、ガッポ儲かります」
魔王とマリヒューイは、軽蔑しても、正論だと胸を張って力説するウインターノを止める事が出来なかった。
ウインターノは、そのまま紙に制服のアイデアをかき始め、二人に披露した。
「どうして、胸と制服が必要なんだ?」
「あなたの国は、欲求不満の集団です。女性は逃げ遅れた老人ばかり、だから、みんなギラギラしていて気持ち悪いです。その為にも、カビの魔物たちに頑張ってもらいましょう。絶対に、大人気です」
「ああ、そうだな……。それは、わからなかった。そうか……気づかなかった」
「マリヒューイさんの方は、種まきOKです。また、収穫時に人手が必要な場合は、ギルトに依頼して下さい」
「所で、お茶の葉はあるの?」
「ええ、今のところ大丈夫です。私の秘密の農場でも栽培しています。お茶は、ほったらかしでも、何とか育っています。もう少し育ったら、ギルドで人を募集するつもりです」
「それなら、安心です。王都のカフェが大人気になったらお茶はどうするのかと思いました」
「でも、どうしてカフェを?」
「……」
「それが……、兄が、ガラス業者に頼んでいた瓶が、王宮に大量に届いて、アシガー皇子が、困惑しているの、邪魔だって……。ポーションの方の開発も、まだまだで、そんなに大量にあってもね……。だから、きっと、王都でもウインターノさんが出店するようなカフェをすれば、大量のコップたちも役に立つと言う事でしょう」
「じゃあ、今、思いついたの?」
「多分……」
「簡単な事だ。あのギルドのカフェを王都の王宮の側で開店すればいい。それだけだ。利益は、アシガー皇子が、管理するだろうし、カビたちに仕込めば、人件費もタダだ」
「お茶の葉は、足りなくなれば、マリヒューイにも頼む事になる。砂糖はどうだ?」
「てんさい?てんさいはたくさんあります。びっくりする程で来たの、機械生産にしたから、だから、てんさいの心配はありません」
「では、これで帰るか?マリヒューイいいな?」
「はい、ウインターノさん、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
ウインターノは、そのまま、ベットにダイブして、靴も履いたまま眠りについた。
「こんなに疲れたのは、久しぶり……、マジで眠い……」
次の朝、ベアドックは、いつもより早くウインターノを起こし、ウインターノは、眠たい目を擦りながら、なぜ、こんなに早く起きる理由を探していた。
「お嬢様、今日、モーリモさん達に、早めに出勤するように言ってましたよ。朝食を召し上がってギルドに行きましょう」
「ええぇぇ、そうでした。おはようございます」
ウインターノとベアドックが、ギルドに到着すると、木の陰からモーリモさんとミリバードが出て来て、4人は合流したと言える。
「さぁ、入りましょう」
4人は、まだ、木の香りが残るギルドに入り、夜に見る内装と、昼間に見る内装で受ける感触が違うと、ウインターノは思ったが、おおむねいい感じで出来上がっている。
「こんな感じの店です」
「はい、素敵です。本当に、王都のお店と同じくらいのレベルです」とモーリモは遠慮なく言う。
「こっちのカウンターは、私とベアドックがいる所で、そっちのカウンターは、モーリモさんが担当してお茶を売る所です。奥は、ミリバードさんが、お茶を煮だします。お茶の入れ方は……・」
その時、カランと音がして、リップスが、やって来た。
「おはようございます」
「ああ、丁度、良かった。こちら、リップスさんです。そして、彼女がミリバードさん、美味しいお茶の入れ方をミリバードさんに教えてあげてくれる?」
「初めまして、リップスです」
「初めまして……、ミリバードです。どうぞよろしくお願いします」
「水は、水がめを作ったの。貯水してあるからこれを使って、氷は、この機械から取り出して、火は、起こせる?」
「はい、大丈夫です。起こせます」
「カフェの開店は、10時だから、今、沸かせば、少しは冷めるよね?」
「はい、この時間でしたら問題ないでしょう」
「1日分のお茶を沸かしたら、帰ってもいいよ。朝は、そんなに人がいないから……、大丈夫だよね?」
「いいえ、母を待ちます。母と一緒に戻ります」
「そう、それならそうしましょう。開店前は、必ず、清掃と点検を行って下さい。ギルドは日曜日はお休みにします。仕事がない土曜日も、なるべくならお休みにしようと考えてます。いいですか?」
「はい、」
「では、リップスさん、ご指導お願いします」
4人は、リップス指導のもと、丁寧にお茶をいれ、大きな陶器のポットに溜めて行く。ポットはモーリモが注げる重さまでの量を決め、時間を見計らって、足りない分をミリバードが追加する形に決まった。
「本当は、お茶を置いておく時間が短い方が美味しいのですが、それですと、氷が溶けるのが早くなってしまいます。しかし、朝、全部煮だすよりも、様子を見て入れる方が、断然、美味しいと思います」
「うん、では、お茶が出来上がって、てんさいを入れます」
てんさいをポットに、山盛り3さじ程入れ混ぜて、4人で試飲する。その後、氷を入れて試飲、また、乾燥オレンジとミントを添えて、試飲する。
「これが完成形になります。ミリバードは、てんさいを入れるまでが役割で、カウンターでは、モーリモさんが、氷と果物、ミントを添えます。出来そうですか?」
二人は声をそろえて『はい。』と、返事をした。
カウンターには、車輪を付けた動く椅子があり、この椅子に座っていれば、移動は簡単になる。
「ウインターノさん、この椅子……」
「うん、便利よ。私も家で使っているの、スーッと動いて、面倒な時は簡単に移動できるでしょ。だから、足が悪くても、この仕事ができるかなぁって、思いました」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
「すごく疲れた時、この椅子に乗って帰るといいわ。この椅子はモーリモさんにプレゼントします」
「ありがとうございます」
二人は嬉しそうに椅子を動かして、体が慣れるまで練習したいた。
「じゃあ、今日は、初日だから、11時頃開ける?」と相談していると、リップスが、
「ウインターノさん、実は……、娘が……、このお茶の美味しさを、町中の人に話していまして……、多分、既に、数名が並んでいるようです。だから……」
ウインターノは、リップスの申し訳なさそうな表情で、ウインターノの顔をみるので、予感が出来たが、一応、カーテンを開けると、既に、長い列が見えた。
「だから、今日、エザルールが、ついて来なかったのね?」
「はい、朝から、お友達と並ぶと申していまして……」
「これは、駄目だ、開店しましょう。今日は、ギルドの仕事は閉鎖だわ……」
「モーリモさん、ミリバードさん、リップスさん、ベアドック、準備が出来次第に、開店しましょう」
その後、結局、5人体制で、やっと、お店を回し、予定よりも長い時間、営業する事になり、何とか、人が途絶えたところで、思い切って閉店の看板を出し、初日が終わった。