ギルドの準備
第23章
「お嬢さんがいらしたのですか?」
「ええ、きっと、お風呂に入って、綺麗な服を着れば相当な美人です。それに若い!」
「それなのにどうして、体が不自由なお母さんを働きに出しているのでしょうか?」
「美人だからではない?」
「……」
「モーリモさん、すごく娘さんを大切にしている様子でした。なんだか羨ましいとさえ思えた」
ベアドックが、
「私も、お嬢様を大切に思っていますよ」
二人は、お互いの顔を見て笑い合った。その後、ウインターノは、一気に内装を初めて、木造でそれなりにイイ感じなカフェに出来上がった。
「いい雰囲気ですね。優しい感じがします」
「そうでしょ?椅子はそんなに置かないで、立ち飲みで、背の高い丸テーブルにして、どうしても椅子に座りたい人達は、壁側のソファで休んでもらう」
「コッブは、返却してもらって、終了後に洗って帰って貰えばいいよね?」
「そうですね。コップは、いっぱいあります」
その後、奥の調理場でお茶を沸かし、カウンターでは、コッブに冷やしたお茶をと氷、乾燥果物を入れて出来上がり。
「どう?こんな感じなの?」
「ギルドの受付では、小さな仕事の依頼を受け付けて、掲示板に張り出したり、引き続き身分証明書も発行しながらの営業だから、そんなに大勢の人達に来れれても困るね?」
「だから、モーリモさんにお願いしたのですか?」
「そうよ、細々と営業するつもり……」
「そのように上手く行くとはおもえませんが……」
「そう?後、カウンターの中がこんなに広いのは、動く椅子を置くからです」
「うん、カウンターの高さに合わせて車輪のついた椅子を置きます」
「モーリモさんの為ですか?」
「そうよ、後ろの小さな扉から、煮だしたお茶をミリバードさんが補充してくれればいいよ?」
「それでは、二人分の賃金が必要になります」
「まあまあ、いいじゃない、お金が回れば経済は動くって、高校の先生が言っていたわよ」
「ええ、お嬢様の資産は、わたくしがしっかり押さえてあります。二人を雇うくらいは、どうってことありません」
「そうだよね?それより、なんだか色がないよね?植物でも植える?それにカーテンもいるかな?」
「ええ、しかし、本当に必要な物は、掲示板でしょう。広い掲示板が必要になります」
「そうだね。誰かが、畑の手伝い募集中とか掲示して、それを紹介するのがギルドの仕事だ」
「では、特大サイズにしましょう! 」
その日、夜遅くまで、ウインターノとベアドックが準備していると、魔王とマリヒューイが、現れた。
「お久しぶりです。ウインターノさんが、ギルドでお茶を売ると聞いてやってきました」
「丁度、良かった、内装が終わったところなの。今、お茶を入れます」
ウインターノは、明日出すお茶を再現してマリヒューイの意見を待った。
「どう?こんな感じで明日から始めようと思っているのだけど?」
「ええ、お茶は美味しいですが……、この花は?なんだか……臭いますね?」
「ミント等に交換するのはどうでしょうか?」
「やっぱり?その辺に咲いていた花だから……、ちょっと、おしゃれ風にしてみたくて、挿したのだけど、不評か~~、そうだよね。でも、ミントって、どこかにある?」
「ありますよ。ウインターノさんの家の周りにたくさん生えてました」
「そう?じゃあ、ベアドック、ちょっと探して来て……」
ベアドックは、
「しかし……、もうすぐ、犬に戻ります」と言って、クマに戻ってその場で眠ってしまった。
ウインターノとマリヒューイは、可愛い姿に戻ったクマをみて笑い、
「ミントは、明日の朝にしましょう。甘さも丁度良くて、暑い日には物凄く美味しいです。氷が入っている飲み物が、この世界で飲めるなんて……」
「地下の水は、塩分があるので、氷を作るのに一苦労しました。この製氷機もなんとなく作ってみてので、コップ一つに氷は1つくらいしか用意できなかったの……。そこは残念よね……」
「兄は、多くの電化製品を使っていますけど、自分の魔力を、いつも注いでいる訳ではないようです」
「うっそー、私は、パソコンやスマホを使う時は、常に魔力を充填してつかっているのに、どうやって使っているのかしら?」
「魔石です。兄は、魔石を作って電気の代わりにしています」
(魔石…………。魔石って、魔物を殺すとゲットできるアレかしら……?あいつ……、やはり、カビを食べているの?)
「とにかく、家に戻りましょう。クマが可哀そうです」
ウインターノとマリヒューイが、戻ると魔王はすでにいつもの場所に座って、携帯ゲームで遊んでいた」
「お帰り」
「はい、ただ今……。どうして、ここへ?」
「マリヒューイが来たいと言ったから……」
「……、ところで、あなた、カビを食べて魔石を作っているの?」
魔王は、不機嫌に目を細め、
「魔石は、こうやって作っている」と言いながら、手のひらからポロポロと、輝く美しい魔石を放出し始めた。
「すごい、まるで宝石のようにキレイ……」
「この位なら、簡単に出来る。自分でも試してみろ」
二人は、自分の中の魔力を手の先に集中して、魔王が放出した魔石を脳内で再現する。
そうすると、意外に簡単に魔石がポロポロと出て来た。ウインターノは、魔王よりも一回り小さい魔石を出し、マリヒューイは、ウインターノの魔石よりも小さい魔石を2個程、出すことがでした。
「ああ、これは、本当に魔力の差がはっきりとわかりますね」
「でも、こんなにキレイで、宝石みたいだよね?」
「魔石は永遠ではない。魔力を放出すればなくなり、時間が経って消える。宝石にはならない」
「そうなんだ。こんなに綺麗なのにね? でも、これを使って製氷機は動かせる?」
ウインターノが、魔王に聞くと独特な形の製氷機を作って出してくれた。
「この小さな引き出しに魔石を入れておけば、お前がいなくても氷は作られる」
「地下の水でも大丈夫?」
「しょっぱい水でお茶を沸かすのか?」
「今出したお茶は、ちょっと、魔法で、真水にしたの……、やはり氷も真水がいいよね?」
マリヒューイが、ギルドの屋根に雨を降らせて、雨水を濾過した方が美味しいのでは?」と提案してくれたので、ウインターノもそのようにする事にして、クマを寝かせて、もう一度、ギルドに戻った。
魔王がギルドの屋根に雨どいを設置して、ウインターノが、雨を降らせ、たまった水は濾過器を通り、真水へと変わり、水道を設置して、製氷機も備え付け、ついでにミントの準備もした。
そして、また、お茶を入れて、二人にだした。今度は、ミント入り……。
「どうぞ……。こんな感じです。今は、お茶をやかんで入れてますが、明日は、リップスさんに、もっと美味しいお茶の入れ方を教わる予定です」
二人は、また、お茶を飲み、ウインターノの出したハンバーガーも食べて、その後、はなし始めた。
「ああ、まあまあだ。このようなお茶を出す店を、王都でも出して欲しい」
「え?」
「実は、私からもお願いがあります。ケンティがすでに土を健康にしましたので、再び、薬草をあの畑で育てて欲しいと思います。今回、種まきは、兄が、今日これからしてくれるので、ウインターノさんは、明日の朝、雨を降られて下さい」
二人は兄弟だけあって、目が、製氷機や水の貯水槽を見ながら話していて、決して断る事が出来ない状況だと言っている。
「畑は、大丈夫ですけど、王都では、店員が見つからないのでは?」
「カビにやらせる」
「え~~~~!!!」