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身分証明書を作る

第12章

 「薬草の仕事は、今日から始めるから、とりあえず、家の前でその登録を行いますが、よくよくは、どこかに建物を建てて、そちらに移動したいとおもっているの……」


 「今日から登録を始めるので、ケンティは、作業員の誘導を頼む」

 「はい、わかりました」


 リップス親子が来て、

 「賃金は、どの位貰えるのでしょうか?」と聞いたので、

 「お釣りの無いくらい?どの位がいい?」


 「では、こちらのコイン1枚で、よろしいのではないでしょうか?」

 「そう?このコインで、文句も出なくて、払い過ぎでもない?」

 「大丈夫だと思われます。それに、初めて、お給金をもらう人も大勢いるでしょうし……」

 「そう、助かる、お釣りがないから……」


 「小銭は、多くの人々は、今でも、肌に離さず身につけています。一般の庶民は、銀貨や金貨となると、見た事もありません」

 「そう?そうなのか、でも、やっぱり、お金が流通し始めると本当にこの国が、息し始める。そんな感じかなぁ?」


 「はい、そうですね」


 リップスとウインターノは、笑顔で見つめ合い、遠い未来に思いをはせていた。



 初日は、登録とギルドの場所を決める議論がなされ、魔王の提案で、登録者には賃金を受け取る為の身分証明書の発行も同時になされた。


 「あなた、頭がいいわね。そうよ、写真付きの身分証明書があれば、間違いは起きないよね」


 「後ろに、今回の仕事の印を記入してある。薬草栽培なら、緑の◎、ギルト建設は、茶色の△だ」


 「そっか、増々、頭がいい、全然思いつかなかった。さすがです。魔王!」


 「そんな事よりも、身分証明書の作り方を伝授しよう」


 ウインターノは、机の下で、魔王が行う魔法をじっくり見ていたので、感覚ではわかっていたが、魔王が仕掛ける罠には、全然、気づいていなかった」


 魔法を使い、そのカードを複製してみる。

 「こんな感じ?」


 魔王はそのカードを手に取り、

 「パっと見は、良く出来ているが、私が作った物には、色々な細工がしてある。どのような細工がしてあるか、明日まで考えて置くように、それから、君が、完璧な身分証明書が作れるまでは、私が発行するので、それまで、君の発行を禁止する」


 そう言い捨てて、ドロンと魔王は、消えていなくなった。


 「え~~~! 見た目はそっくりなのに、どこが違うの? なんでそんな面倒な仕掛け……、大体、誰が仕掛けをしていいと許可しました!!」


 「あっ、眼鏡、眼鏡で見れば一目瞭然だ。おバカさんだな、昨日、透視したばっかりなのに……。ふふふ……」


 ウインターノが開発した鑑定眼鏡は、役立ったのは、昨日だけで、魔王に手を握ってもらわないと、全然ダメな粗悪品だった。


 「あ……、ヤッパリ、駄目が、鑑定できない。確か、魔力は同等だと言ってたのに、この鑑定眼鏡は、2倍の魔力が必要な程、そんなに燃費がわるいの???」


 それから、裏返したり、水に浮かべたりして、何度も中身を覗こうとしてみたが、結局は、できなくて、ベットの上に放り投げた時に、マリヒューイが、登場した。


 「こんばんは、遅い時間にすいません」

 「どうしたの?こんなに遅く……?」


 「はい、昼間も何度もこちらに来ようと思ったのですが、私の力では、この国までの移動が出来ず、いつも、兄上に助けてもらっていました。でも、今日は、全然、その気配がなく、こんなに遅い時間になってしまいました」


 ウインターノは、マリヒューイを見て、カードを見て、また、ウインターノを見て思いつく。

 「……多分、二人でこのカードの中身を当てる宿題をさせる気だ!」


 「??」


 「マリヒューイ、この眼鏡をかけて、私の手を握ってみて!」


 マリヒューイは、ウインターノに言われるままにやってみるが、眼鏡に反応は起きない。


 ウインターノは、床にお尻をついて、倒れ込む。

 「どういう事、二人でもダメじゃん!!」


 「兄は、このカードの中身を調べる課題を出したのですか?」


 「そう、薬草な栽培の事業を開始するにあたり、身分証明書を発行して、この国の人口などを正確に知る事に役立てる予定なの。だから、マリヒューイの顔をカードに転写して、名前や生年月日、家族構成や今いる場所なども記入してもらうの。こんな感じ……」


 ウインターノは、マリヒューイの為に作ったカードを渡した。


 「裏は、今している仕事の内容で、賃金をうけとると、その印が消えるしくみなの……」


 「ウインターノさんのカードは、兄上が作った完璧なカードで、私のカードは、ウインターノさんが作った、模倣品ってことでいいですか?」


 「……まぁ、模倣品と言えば模倣品だけどね……」


 「兄が他人に魔法を教えるなんて、本当に珍しい事で、この身分証明書の中身がわからないと、きっと、その次には進めないと言う事です」


 「マリヒューイさんは、わかる?」


 マリヒューイは首を振ってわからないと示す。

 「兄が、この世界に残ったのは、わたくしでは、きっとこの世界を守れないと悟ったからでしょう。未熟な妹に、まだ、まだ、安心できないのかも知れません」


 ウインターノは、自分より落ち込んでいるマリヒューイに掛ける言葉が見つからない。


 「……でも、考えようによっては、私たちにできない事は、彼に補ってもらえばいいのでは?」


 「ウインターノさん……。ポジティブ……」


 「今日は、このまま泊まって行くのはどう?一晩中、このカードの正体を暴いてやりましょう! 」


 「はい、泊まらせていただきます」


 「部屋は、どんな部屋がいい?」


 「ウインターノさんは、部屋を増やす魔法が使えるのですか?」


 「うん、そうね、そういえば使える、でも、携帯できるポケットのような物は、難しいのよ。これがまた不思議でしょう?魔王は、支払いの為に、現金を閉まって置ける金庫のような物を携帯して置くように言うのだけどね……。これがなかなか上手く行かなくて……」


 「空間の把握って、すごく難しくて、私も良く出来ません。兄は、初級魔法だといいますけど」


 「そうなの?何が初級で、何が上級なのかがわからないからね……。そうそう、魔法の教科書をもらったの、マリヒューイさんも一緒に見ましょう」


 二人は、ウインターノが簡単に出した部屋を整えて、一緒に魔法の勉強を始めて、二人とも改めで一からの初級入門に疲れて、そのままぐっすり眠り、朝を迎える事になった。


 ケンティとリップス親子が、早朝に訪ねて来て、大急ぎで、庭先にテーブルや椅子等を出し、ギルドの受付を開始した。すでに、席について冷たい視線を送っている魔王の隣に座る事は、本当に、苦痛だったが、寝坊した私たちに非があり、そこは、丁寧にお詫びをした。


 「すいません。昨日、二人で、色々試したのですが、結局、わかりませんでした」


 二人が簡単にカードのカラクリを見破らなかった事が良かったのか、魔王は笑顔で、

 「そうか……、それなら仕方ない、今日も、私がカードの発行をしよう」と言った。


 二人は、何が正解で、何が不正解なのかがわからず、それでも、朝早くから行列をなしている人々を見ると、急いで、仕事に取り掛かる事にした。


 仕事は、マリヒューイが、記入を手伝い、ウインターノがパソコンに入力して、魔王が、身分証明書を発行する分担形式で、すべてが終わると、ケンティが、薬草場とギルト建設現場に案内する。


 ケンティの仕事は忙しくて、結局、リップス親子が、ケンティの助手のような仕事をしていた。


 「リップスさん達にも、身分証明書を渡して、賃金を支払いましょうね」

 「そうだな、私にも支払ってくれ……」


 マリヒューイとウインターノは、一瞬、固まったが、

 「勿論、お支払いします」と二人は同時に頷いた。




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