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魔物②

第11章

 「私以外の誰かが住み着いている。――ところで、この国に来て、どの位の時間が経ったか知っているか?」


 「1年以上かしら?季節を感じないから、気にもしていないけど……それくらいかしら?」


 「1年半だ。あの嵐から1年半が過ぎる。そして、なぜか?今になって、王宮に人が戻り始めた」


 「あ、あなた! 隠れなくていいの?」


 「彼らには見えないし、気にする事はない。しかし、この国の鉱物を輸出する事になると、少し面倒な事になるとは、思っている」


 「――ポーションのカラス容器?」

 「ああ、君のアイデアは物凄くいいアイデアで、マリヒューイの国が属している7ケ国は、今、薬が本当に足りない状況で、だから、乾燥や調合に費やす時間がない」


 「でも、随分たってから彼等が戻る事を、不思議だとは思わないの?」


 「……意外に勘はいいほうだナ」


 「調べてみると、この国がおかしくなってたは、十数年前からで、国民が、己の欲望を満たす為に戦い始め、内戦が多く勃発している。しかし、その様な中で、唯一、正常だったのは君の父上だけだ」


 「父上って、言っても私……」

 「その点は、僕もマリヒューイも理解しているが、前のウインターノさんの記憶は残っているのか?」


 「いいえ、まったくありません」

 (……)


 魔王は、難しい顔をして考えてからウインターノに話をする。


 「僕の魔力と君の魔力はほぼ同等で、僕の魔力をコピーして君に与えたと考えられる。しかし、作物を育てるスピードは、断然、君の方が勝っている」


 「そして、君の育てた作物は、人々を正常な状況に戻す事が出来るのではないかと、思われる」


 「ずっと、君のその鞄が謎だった。僕になく、君にある物は、そのハンバーガーの鞄だけだ」

 

 「魔法は、僕が、これから君とマリヒューイに教える事ができる。そうすれば、色々な魔法が使える様にはなり、魔物も扱えるようになるだろう。しかし……、その鞄……」


 「――コピーすればいいのでは?リップス親子の家は、昔のウインターノの家をコピーして復元できたの。あの時、どうやって復元で来たかは、あまり覚えていないのだけど、できたのよ」


 「コピーすれば、あなたもマリヒューイさんもいつでも食べられるでしょ?」


 「??」


 それからウインターノは、2つのハンバーガーの鞄を出し、魔王を驚かせた。


 「やはり、君の力は、恐ろしいくらい未知数で、自分もやっと、父上の気持ちが理解できた」


 「……」


 それから、何冊かの古い魔法の教科書をウインターノに渡し、実際に魔法をかける時の自分の中の体感なども教えた。


 「1週間もすればカピ程度の魔物は作れるようになるだろう。しかし、カピの力は弱く、戦闘なのには向かないが、どのように使う予定だ?」


 「情報員として使う予定です。国は広くて、私の力では全部を監視する事が出来ません。それに、後どの位、人が住んでいるかもわからないので、役所の仕事が出来ません」


 「それなら、ギルドを作った方がいいのでは?」

 「職業斡旋所?」

 「そうだ。自分の身分、家族までも証明しないと、薬草栽培の仕事がもらえないようにする」


 「要は、斡旋して、賃金を渡し、身元をパソコンに入力する。そして、斡旋するときに写真も撮る」


 「いいかも……、ダブついている現金も国に流通できるかも……。それなら、明日から始めようかしら?」


 「現金は、携帯用のポケットにしまっておいた方がいいだろう」


 「そうですね、下さい」


 「それは、あの部屋と同じように作るんだ。部屋が出来てポケットが出来ないはずがない」

 「でも……、小さいのは難しい……」


 「??」


 「もしかして、切羽詰まらないと、魔法が使えないのか?」


 「そんなことないけど、強く望むという行為は、確かにあるかも……」



 二人の間に、沈黙が流れ、

 「しかし、――お腹が空いたね?」

 「では、初めてコピーされた鞄からハンバーガーを取り出してみるか?」


 二人は息を飲み、鞄の中からハンバーガーを取り出して、食べた見た。

 「うん、美味しい。おんなじハンバーガーだね」


 「――これは、これで、複雑だ……」


 二人が、ハンバーガーを食べ始めると、さっきの白いメイドの魔物がお茶を運んできてくれた。

 「ねぇ、こんなに上手にお茶を煎れられる魔物って、そんなにいないよ」


 「ケンティが、教えたみたいだ」


 「ケンティって、ある意味、すごいよね。なんでも受け入れられる。本当に、善人の鏡!」

 「……そうだな」


 「クマは、良いメイドになると思うぞ。ギルドをやるには、信じられる部下も必要になる」


 「クマを魔物に……。友達なのに……?」


 「では、カビを近くに置くのか?」


 「……それは無理」


 「クマを魔物に変えても、クマは、ずっと、クマで、君の側で暮らすだろう。クマ以上の騎士は現れない」


 「少し考えさせて、もっと、魔法を習って、安全を確かめてからにする」


 「とにかく今は、隣の部屋の様子を探りましょう。私、この国に来てから、鑑定メガネみたいな物を作ったのよ、コレ!」


 「使えたのか?」

 「使えなかったから、リップス親子を頼ったけど、今なら行けそうな気がする」


 ウインターノは、鑑定メガネを複製して、魔王に渡し、隣の部屋の透視を始めるが、やはり上手くいかずに、ウインターノが諦めかけたときに、魔王がウインターノの手を握った。


 一瞬、体全部がビックリしたが、魔王の手から魔力が伝わるのを感じると、壁一面に隣の部屋の様子が現れ、自分物の情報が映し出された。


 「彼……、人間では?もしかして魔物?でも、どうみても人間で、注釈によると、この国の皇子となっている」


 「この国の皇子って、前のウインターノと婚約していたと、リップスさんが言っていたけど……?」


 「皇子が、魔物だと気がついて、その為に、幽閉されたの?それとも、あの皇子によって……彼女は、罠にハマって幽閉されたか?」


 「彼の魔力は、我々にとっては、大したことはないが、ウインターノは、はやり、近づかない方がいいな! 明日からは、私がそっちの国に出向いて、本格的に魔法をおしえよう」


 「でも、わたし、どうして、ウインターノが幽閉されて、亡くなったのか知りたい」


 「それは、きっと、その内、きっと、明らかになる、大丈夫だ」



 次の日から、魔王は、ウインターノの家にやって来て、ケンティに、ギルドの説明を始める。


 「それって、役所みたいな所ですか?」


 「そうかなぁ? そんな感じかな?ギルドに登録しないと、薬草の仕事など、こちらが頼む仕事ができない。でも、この仕事ができなくても、他に仕事をして欲しい人がいたら、別の仕事でもいいの。わかる?」


 「仕事をして、お金を得るには、誰もが登録をしてから仕事をする。そして、ギルドは賃金を払う役目をする」


 「ええ、わかります。僕の国にもその様な仕組みがあります」


 「だから、まずは、何人必要になるか、賃金はどのくらいかを記入してもらいます」


 「僕たち以外も仕事の依頼はあるの?」


 「私が、ギルド建設の仕事を、依頼します」


 「これからですね……」

 「はい、すべてはこれから……」




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