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-5-騒がしい校舎前

初めて見てくださった方は初めまして。

いつも見てくださっている方はお久しぶりです。


今回も2週間ペースをちゃんと守れています!

すごい!


今回は残業ラッシュでキツかったですがなんとか書き終えました……

*現れたアイツといつもの光景





 春の学校で、桜の花びらが風に吹かれ舞っているように。

 そいつは当然と言わんばかりに真っ直ぐに向かってきた。


「おう、柚斗! 俺と戦え!!」


 と言いながら迫ってくる男。制服のブレザーは前を開け、2mはあるんじゃないかという体に筋肉の装甲(ボディアーマー)を着込んだようなマッチョ。俺と同じ魔法科の生徒で同級生だが、体のサイズはとても同い年には見えないほどの差がある。

 少し細身な俺に対して、2m越えのアイツは腕の太さ1つ取っても大根みたいな腕をしている。


「バクオか……お前もしつこいぞ」


 『バクオ』というのはこの筋肉達磨に誰かが付けたあだ名だ。

 理由はとても単純で、こいつが魔法で暴れて爆発音のうるさい男だからいつの間に付いていた。

 しかし当の本人は気にしている様子もなく、むしろそのなんとも雑なあだ名が聞こえる度にニヤリとキメ顔になるほどだ。もちろん今も俺に呼ばれたことによってバッチリ口角が上がっている。


 レンガで出来た硬い地面を思いきり踏みしめ、バクオは勢いよく俺を指差す。


 「お前をぶっ倒すのは、この俺だぁあああ!!」


「は!? 俺は勝負受けるなんて一言も言ってないんだけど!」


 こっちの都合などお構いなしに突っ込んでくるバクオを対処するしかなくなった俺は、後ろに下がり、近くにいる冷たい視線を送っていた結那に持っているカバンを渡す。


「悪い、ちょっと持っててくれ」


 結那は「早くしてね」と短く釘を刺して睨んでくる。

 俺のせいじゃない、そう言いたい気持ちを必死に抑えて目の前に迫る巨体に集中する。


 拳を握り大きく振りかぶったバクオは、右腕を真っ直ぐ突き出す。


 純粋な右ストレート。圧倒的な体格差を前に、俺の体は吹き飛ばされる……ことはなく、両腕で防御して正面で受けきる。流石に巨体から放たれた衝撃を殺しきれず、よろけそうになるのをバックステップで打ち消す。

 防御を解いてバクオを見る。

 拳を引き、俺を見て不敵に笑みを浮かべる。これはバクオが相手を認めた時に見せる喜びの表情だ。

 そのままバクオは戦闘態勢で突っ込んでくる。

 巨体から放たれているとは思えない連続パンチ。

 素の身体能力では徐々に間に合わなくなり、たまらず魔力を生成し始める。

 魔法を行使する場合、体内の生命力(エネルギー)を魔力に変換するのだが、その時に副作用として魔法使用者は身体能力が強化される。つまりその副作用を利用すれば魔法を発動しなくても……


 バクオは連撃のトドメに大きく振りかぶり、渾身の拳を繰り出す。

 が、それを正面から微動だにせず受け止める。

 俺の変化に気づき眉をピクリと動かすバクオ。


「柚斗てめぇ……魔力を使ったな!?」


「ったり前だ。体格差考えろ、わざわざ不利な肉弾戦(ステゴロ)に付き合ってるんだからハンデくらい付けてくれ」


 そう言いながら笑みをバクオに返してやると、バクオも再び、しかも今度は豪快に声を出して笑い構え直す。


「いいぜ、確かに体格だけで勝敗が見えるのはつまらねぇ。好きなだけ強化しやがれ!」


 勢いよくレンガの地面を蹴る。真っ直ぐバカ正直と言わざるを得ないほどの突撃に、俺ももう一度構え直しバクオを迎撃する体勢を整える。


 ちなみにこのやり取りはもう数え切れないほど回数を重ねていて、俺としてはまたいつもの絡みか、という感じなのだが、バクオ(こいつ)は何度も同じ事をして毎回最後には……


「まったく、バクオくんはいつも学ばないですね」


 空から声が聞こえた。俺もバクオも上を向こうとした次の瞬間、バクオの頭上には1人の女性が降ってきた。もちろん反応出来る訳もなく、バクオに直撃すると同時に勢いよく地面に叩きつけられる。

 辺りに響き渡るレンガの割れる音。

 綺麗に整えられたレンガ通りにクレーターを生み出す彼女は、金髪ロングの美人先生として学校内では名の知れた人だった。

 俺は毎度の事ながらこの凄まじい暴力的(ステゴロ)な仲裁の仕方に、苦笑いを浮かべながらその先生に話しかける。


「あの、このアホを止めてもらってありがとうございます。ルート先生」


 感謝の言葉に、ルート先生はロングドレスをひらひらさせながらくるりと振り向く。


「もう……危ないことはしないでくださいね〜」


 ……先生、危ないって、なんだっけ。

 こう考えるのもまた何度目か分からないほど繰り返していた。





*ルート先生の興味





 粉々になってへこんでいるレンガの地面。その上で倒れているバクオからは反応がない。

 しかし無慈悲なことに、気絶したバクオの上で華麗な振り向き(ターン)を決める先生が笑顔で立っていた。


「あの、先生……バクオくんが可哀想なのでそろそろ降りてあげてください」


 一部始終をすぐ横で見ていた結那が、ルート先生にバクオから降りるよう促すと、足元のバクオを観てからわざとっぽく「あら可哀想に!」と両手を自身の顔に当てて驚きを演技(アピール)する。

 結那の横にいた胡桃を見てみると、ルート先生を見る顔は、まるで悪魔を見ているように恐怖で染まっていた。


 ルート先生はバクオの上から退き、軽く土埃を払うと俺の方に向かってくる。


「神祠くんおはよう。暁さんもおはよう」


「えっと、おはようございます先生」


「おはようございます。今日も中々強引な止め方ですね」


 普通に挨拶を返した俺に対して、結那は少しトゲのある言い方。

 結那は少しこの先生に苦手意識を持っている。本人曰く性格が合わないだとか。


 しかし結那の返しを特に気にする様子もなく、ルート先生は結那の後ろに隠れる少女に目を向ける。


「あら? その子はどちらかの妹さんだったりするの?」


 さて、どう説明すればいいだろう。

 中等部の制服を着ているものの、オカ先生と同様に中等部から世話になっている先生だ。思いつきの嘘だとすぐバレるだろう。

 結那に視線を送る。

 結那は視線に気付いてから少し考える素振りを見せるが、すぐに頷いてGOサインを出す。


「えっとですね、ちょっと色々説明しなきゃいけないんで長くなるんですけど……」




 俺は今日起きた事を全て説明した。

 信頼のおける先生の1人であるルート先生ならきっとこの嘘みたいな話も真剣に聞いてくれると踏んでの判断だ。

 最後まで聞き終わると、軽く唸り考え込む。


「うーん、多分それはオカ先生案件かなぁ」


 特に否定もせず真面目に考えるルート先生に、結那が身を乗り出して疑問を問いかける。


「あの、私が言うのもなんですけど……柚斗の話を信じてくれるんですか?」


 ルート先生は優しく微笑み、今も結那の後ろに隠れている胡桃の頭をそっと撫でる。


「内容はともかくね、こんな怯えた子うさぎちゃんを放っておくのも可哀想でしょ? それに困った時は先生に相談だよ!」


 胡桃から徐々に恐怖の表情が消えていく。

 ルート先生は基本的に凄く優しい先生で、信頼をおいている生徒も、別に俺と結那だけではなく、関わりのある生徒の多くが彼女を頼れる大人として信頼していた。


 突然、ルート先生はハッとした顔になって、俺や結那をじっと見てくる。

 俺には表情の意図がわからず結那と胡桃の方を見ると、2人も同様に困惑しているようだった。


「先生どうかしました?」


 声をかけられたルート先生は、すぐにいつもの笑顔に戻り「ううん、ちょっと考え事をね……」とだけ言って話を続ける。


「オカ先生だけど職員室にはいるよ。うーん、でも入学式の準備で忙しいみたいだから私が話はしておくね」


「この子……胡桃も一緒に入学式へ連れて行っても良いですか?」


 ルート先生は結那の問いに頷くが、人差し指を立てた右手を結那の顔の前で左右に揺らして、一言付け足す。


「これはお願いなんだけど、私が良いよって言うまでは職員室は入らないでね」


 結那は首を傾げるも、ルート先生は「絶対だからね!」と言いながらどこかに立ち去ってしまう。


「……どういうことだ?」


「さあ? 私にもさっぱりだけど、とりあえず教室に行きましょ」


 ルート先生の言葉の真意は分からないが、信頼出来る先生には話が出来たので、高等部の校舎に向かう。


 バクオの横を通り過ぎる時に、地面で倒れたままの奴を見て胡桃が心配そうな顔をしていたが、「いつものことだから」と言って結那は胡桃手を引っ張っていくのだった。

調べるのが面倒くさくてよく知らないんですが、なんかオススメの小説投稿サイトありませんかね?


さて、近況としては前書きで述べた残業ラッシュが印象的です。

残業帰りに人身事故が発生して乗り換え先の終電はとうの昔……なんてことは経験したくないですね。

……したくなかったですね!

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