-1-春を迎える
初めましての方は初めまして。
とってもお久しぶりな方はお久しぶりです。
長らーく旧テンセカの投稿をお休み(真顔)していたのですが、
再度シナリオ構成から見直して書き直し始めた『テンコクノセカイ』という形で再開することにいたしました!!
大筋のストーリーは元の構想と変わっていませんが、以前よりも文章力がアップ?したのでこれからも勉強しながら書き進めていきたいと考えています!
そのうち挿絵とかつけたいですね。まだ技術面厳しいのと時間がありませんが!
-1-春を迎える
*プロローグ
『魔法』
それは今から40年ほど前に存在が認められた。画期的な技術、そして資源でもある。
主に体内の生命エネルギーを魔力へ変換したり、大気中に漂う魔力を用いて行使する新しい法則。
別に40年前、突然価値ある資源が降って湧いた訳ではなく、今までも世界に認知されていなかっただけで、存在し続けているものでもあった。
『魔法認知』という歴史が動いた日から40年後の現在。魔法を学ぶ学園へ通う1人の少年は、『魔法認知』が起きた時代について復習をしている最中だったのだ。
「あぁ〜、わっかんね!」
少年もとい神祠柚斗は、お店から小さな買い物袋を引っさげて出てくると、そのまま目の前にある桜に囲まれた道を歩く。
お店を出る前から開いていた暗記ノートをバタバタと振り、春の陽気を感じさせる快晴の空を見上げた俺は、今勉強していた。40年前の歴史にボヤいてみせる。
「『魔法認知』の原因である、本来交わることのない世界が繋がれてしまう不可侵領域接続現象『纏刻』ねぇ……」
「本当に、どうしてそんなこと起きたんだろうな」
俺の中には少し、複雑な感情が混ざりあっていた。
暗記ノートで復習するのをやめ、俺は自分の住む寮へ歩いて帰る。途中、前に誰か立ちはだかるのがわかった。そこにはよく見知ったやつが立っていた。
「柚斗! あんたが買い物行くといつも帰ってくるの遅いから見に来てみれば……」
そう言いながら俺に疑いの目を向けてくる長い黒髪を揺らす少女は、今日が春休みの最終日だというのに制服を身にまとっていた。
「今日は普通に勉強してたんだって! てか、結那はなんで制服来てるんだ?」
結那は哀れむ目を俺に向けてくる。諦めた、と言った表情だろうか。
「あのねぇ柚斗、朝言ったでしょ。私は今日入学式の準備に行ってきたの」
結那に言われて俺は朝の出来事を思い返してみる。
確か朝起きたら部屋に結那が居て、なんか言ってた気がするけど適当に反応して二度寝したはず。まさかあの時学校に行くとか言っていたんだろうか。そういえばその時すでに制服だったような……。
「うーん、そんな感じだったような気もする?」
俺のとても曖昧な言葉に溜め息をする結那。
「もう、柚斗いい加減そのダラダラした生活を直した方が良いと思うよ。明日から高校生だよ?」
「はい、すんません……」
俺と結那の間に日が差し込む。今は昼過ぎ。今までは周りにあった木々が影を作っていたが、頭上に来た太陽は春の陽気な日差しを俺たちへ降り注ぐ。
「……眩しいな」
「うん」
しばらくの静寂が訪れる。草木が春風に揺れる音が心地よい。
無言だった俺たちは、結那が「やる事あるから先に帰るね」と言ってそのまま解散する流れになった。
俺と結那は小さい頃に知り合って以来、様々な経験を共有した仲でいわゆる幼馴染。高校生になるっていうのは中々に感慨深いものがある……と思う。なんて事を考えてしみじみとしながらも、とりあえず暗記ノートは買い物袋にしまって、俺もさっさと帰ることにした。
それにしても日が出ているっていうのに少し寒い。
「まるで雪でも降りそうな冷たい空気だな」
俺は歩いていて、一つ違和感に気づく。
(歩くにつれて段々と寒くなっている? いや、というよりこれは……)
冷気が流れてくる方へ足を進める。そして柚斗の予想はおおよそ当たっていた。
そこには神社あった。
道外れの森にたたずむ鳥居は、どこか秘境を思わせる風貌で、謎の冷気と相まって柚斗の好奇心が刺激されるには十分過ぎる雰囲気を漂わせていた。
溢れんばかりの好奇心に身を任せ一歩、神社へ踏み入れてみる。
一瞬、ピリっとした刺激を感じたような気がした。それは異常な冷気によるものなのか気のせいなのか、俺には判断する知識も経験も持ち合わせていない。
神社から溢れる冷気は更に勢いを増す。
隠す気のないような異常な光景に、思わず足がすくむ。
俺は好奇心には勝てないという大義名分を恐怖心へ振りかざし、更に奥へと歩みを進めた。
*邂逅
昔、『纏刻』現象が起きる前には、『国』という概念があったらしい。その時代に語られていた神代の話、神話というのが神社の発端だとか。
結局、俺は何が言いたいのかというと、目の前にいるやつが何者なのかということだ。
俺の目からは、冷気が目の前にいるやつから発生しているように見える。
真っ白な着物を身にまとい、小さなこの神社の本殿の前でうずくまっている。着物から少し露出した肌も白く、昔の伝説にあった雪女っていうのもこんな感じなんだろうか、などとイメージを膨らませる。
おそらくその体躯からして女の子に見えるのだが、俺は声をかけるか迷う。
理由は簡単で、この冷気を発生させているのがこの女の子の場合、こんな神社の外まで冷気を出し続けられるのは、普通の人間じゃないからだ。それこそ昔の凄いとんでも生物とか、現代だととても高名な魔法使いくらいだろう。
「……て」
「え?」
女の子が何か呟く。俺は思わず聞き返してしまった。
すると、びくっと肩が跳ねる女の子。どうやら俺が居ることに気が付いていなかったようだ。しょうがないので事情を聞いてみることにしよう。
女の子に近づき、その場でしゃがみこむ。
「あの、どうかした……んですか?」
普通に話しかけようと思ったが、素性が分からないのもあり、とっさにたどたどしい敬語が出てしまった。
女の子は柚斗の声に反応するように少しだけ顔を上げる。
俺からはまだ、口元しか見えないが、やはり女の子なのは間違いなさそうだ。少なくとも華奢に見えて顔だけ男らしいゴツゴツした顔つき、ということは無さそうという意味だが……。
などとよく分からないところで安心していると女の子は柚斗へ小さな声で言葉を零す。
「助けて……ください」
今度は聞き取れた。が、助けてくれとはどういう事だ? と俺は首を傾げる。
「えっと、もしかして魔法が暴発しちゃったとかそういう感じなんすかね?」
たまにある話ではある。魔法の練習中に不慣れなことをしていると体調が悪くなったりすることもある。
女の子は俯いたままだ。
これは困った、そう思ってどうすればいいか考えようとした時、女の子は俺に向かって手を伸ばした。
瞬間、体が強ばるのを感じた。
俺がこの手を掴んだ瞬間、なにか大変な事が起きてしまうのではないか。何故かそう考えることを止められない。
しかし同時に、女の子が伸ばしてきた手がとても魅力的にも感じた。
どこからともなく突然湧きだした二つの感情は、拮抗し、そして己の思考から冷静さを奪っていく。
俺は小さい頃から、好奇心に弱い。
『好奇心は身を滅ぼす』
かつて国があった頃に生まれた言葉らしい。だが同時に、小さい頃ある人から聞いた言葉がある。
『好奇心は身を滅ぼすほどの価値がある』
怪しげな女の子から伸ばされた真っ白な手。
原因不明な体の強ばり。
俺はゆっくりと女の子の手を掴む。
「身を滅ぼすだけの価値はあるだろ、これ」
女の子に触れた瞬間、俺の視界は一切の乱れも許さない純白に染まる。
きっかけは、一人の少年が抱いた好奇心だった。
*何の変哲もない一日
目を開けると、俺の前から女の子はいなくなっていた。
指先は冷たい。
何かに触れていたのは気のせいではなさそうだ。だが、女の子がいた痕跡が一切ない。
さっきまで漂っていた強い冷気も嘘のように消えて地面に落ちた花びらも凍った様子はない。
「……」
どうやら好奇心は俺の身を滅ぼしはしなかったらしい。
「はぁ」
一度ため息をつき、神社を後にする。
明日は高校一年生初日だ。遅刻はしないように気を付けなければ。
まあ俺が気を付けなくても結那が勝手に起こしに来ると思うが……。
最後に振り返り、もう一度女の子が居た場所を見る。何も無いことを確認した俺は帰路へと着いた。
前書きでも言っていますが書き方がだいぶ変わりました。
なので色々と研究中です。しばらくは投稿後に修正が入るかもしれませんが、Twitterの方で大小関係なく修正した旨お知らせするのでご容赦ください……!
Twitter:@Kannagi1414