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西の魔王はオ○マちゃん?

 この奇抜なピンク・ファッションの筋肉男が西の魔王?


 驚愕の事実にラルクは言葉を失った。


 対するピンク男は胸毛をチラチラ見せながら、しきりに身体をくねらせる。

 そしてギルバートへ熱い視線を送る。


「フ○ック! てめえ! 何の用だ!?」


 ファンクに怒鳴られてピンク男が、ぷりっとケツを突き出して上目遣≪うわめづか≫い。

「ま・ち・ぶ・せ」


「ファッキン・待ち伏せ……なんじゃそりゃぁああ!」


 ラルクが顔を強張らせて尋ねる。

「ファンク、こいつ、本当に西の魔王なのか?」


「ファ○ク! そうだ。採用した時は、こんなんじゃ、なかったんだがな。ネコ被≪かぶ≫ってやがったんだ」


 それを聞いてトカゲの弟が疑問を持ったらしい。

「兄≪あん≫ちゃん! あいつ、ネコなのか? 耳も髭≪ひげ≫も無いよ?」


 トカゲ兄は得意気に解説する。

「バカだな。お前は。本物のネコじゃない。俺達みたいに被≪かぶ≫り物を着てたってことだ」


 兄はペンギン、弟はヒヨコの被り物は、泥だらけで酸っぱい匂いを発している。

「そうか! 兄ちゃん、分かったよ! ネコは人気があるんだね?」

「そうだ! ネコは人気者だから採用されやすいんだ」


「くそう! オイラもネコの被り物が欲しいよ! ヒヨコはもうたくさんだ!」

「分かった。探そう。どこかで売ってるはずだ。2人でネコを被ろう!」


「オイラ、黒ネコがいい! 黒はカッコいいから」

「そしたら俺は三毛猫≪みけねこ≫だな」


「ミケネコ!? ミケってメスなのか?」

「違う! 三つの毛と書いて三毛猫。毛が三本しかないんだ」


 バカ兄弟のやりとりには付き合いきれない。

 ラルクが気を取り直して問う。

「西の魔王が俺達を待ち伏せだと? カロンの指示か?」


 ピンクの魔王は両手の人差し指をラルクに向けて「イエース!」と、おどける。

「真魔王様の計画を邪魔するのは、アンタ達でしょ? 北の魔王から聞いたわよん」


「フ○ック……あのドングリ野郎、さっそく裏切りやがったな」

「俺達の動きは筒抜けだったわけか……」


「さっきのカミナリ雲は、アタシのま・ほ・う! アンタ達を降ろすためのフェイクよ」


「ファ○ク! まんまと騙されちまったな」


「簡単に引っ掛かるなんて、どんだけぇ! お・ば・か・さん」


 チキがドン引きしながら言い返す。

「失礼ですわね! どのみち休憩するつもりでしたことよ!」


 ピンクの魔王がドヤ顔で答える。

「あらあ? いいのかしらぁ? ここはアタシのテリトリーなのよ?」


 ピンク魔王は顔の横で『パンパン』と手を打ってから『ドン』と、足踏みした。

「裂けてっ!」


 その一言で、大地が『ゴゴッ!』と、揺すられた。

 そして、だだっ広くて何もないと思われた丘に幾つもの地割れが出現した。


 小さな地割れは大木を中心にガラスのヒビのように枝分かれして広がっていく。


「な、なんだ!?」と、踏ん張るラルクにチキとネムが抱き着く。


「ファ○ク!?」

 ファンクは宙に浮いているので揺れは何ともない。


 山賊親分の巨体にはトカゲ兄弟に紛れてギルバートがしがみついている。

 ピピカは襟≪えり≫を親分に掴まれて宙ぶらりん。


 地響きは直ぐに収まった。

 しかし、地割れからワラワラと何かが這い出してきた。


 それを見てチキが悲鳴をあげる。

「きゃっ! アンデッドですわ!」


 凄い数のアンデッドだ。

 見た目は腐った死体。それも人間だけではない。

 半人半獣の死体が多く混じっている。


 ギルバートがガタガタ震える。

「ま、ま、まずいですよ! 強そうなのが沢山! しかも囲まれちゃいました!」


 この大木を中心に、四方八方に広がった地割れからは何十体ものアンデッドが出現している。


 ラルクが舌打ちする。

「チッ! やるしかねえだろ」


 すかさずピンク魔王がギルバートを指名する。

「ハンサムちゃんは、アタシとやるのよ!」


「や、やりませんよ!」と、ギルバートはそれを全力で拒否する。


 アンデッド軍団は、動きは鈍いが、徐々に包囲網を狭めてくる。


 ラルクがギルバートに指示を出す。

「ギルバート! 何か出せ!」


 屁を出せといわれてギルバートが困った顔をする。

「な、なんか出せってアバウトな……でしたら、試しにこれを……」


 ギルバートはお尻をアンデッドの群れに向けると「はいっ!」と、屁をこいた。


『ぷ、プヒュウウウ』


 それは見たことの無い紫色のガスだった。

 ガスは風に乗って丘を下り、アンデッドを包み込んだ。


 ラルクが訝≪いぶか≫る。

「なんだそれ? 何の効果があるんだ?」


 するとギルバートが、したり顔で答える。

「恐怖を植え付けるガスです。そして防御力をガタ落ちさせます」


「フ○ック!? そりゃ初めて見るな! お前、いつの間にそんな屁を?」


「マスターしたんですよ。密かに練習してたんです」


 ギリバートの説明通り、紫のガスに触れたアンデッドの動きが止まる。

 そして後ずさりするような素振りを見せた。


 チキが不思議がる。

「どうして効くんですの? アンデッドは息をしないのでは?」


「ファ○ク! 細けえことはいいんだよ! 今のうちにやっちまえ!」


「よし! みんな、俺に続け!」

 ラルクが先陣を切って、丘を駆け下りながら木槌≪きづち≫を振り回す。


『べちょ』『ぬちゃ』と、気味の悪い音と手応えしかないが、防御力を大きく下げられたアンデッドは、いとも簡単に崩壊した。


 それを見て他のメンバーも突進する。


 山賊親分は「おらおらおら!」と、両腕を振り回してアンデッドを、ぶっ飛ばす。

 トカゲの兄弟は体当たり攻撃。


 ネムとチキも顔を顰≪しか≫めながらキックでそれらに続く。


 最後尾のギルバートは、屁を小出しにしながら走る。


 四方を囲まれていたが、一方向に的を絞ってアンデッドの群れを突破していく。


 大木の下でピンク魔王が叫ぶ。

「逃がさないわよ! はいっ!」


 その掛け声で、モコモコと地割れからアンデッドの『おかわり』が出現した。

 今度はドラゴン、ギガンテス、ガーゴイルと多彩なアンデッドだ。


 チキがそれを見てゲンナリする。

「どうして腐ったモンスターばかりですの!」


「ファ○ク! あいつ、死んだモンスターを集めるのが趣味なんだ」

「趣味が悪いですわね! それをアンデッドにして召喚するなんて!」


 目の前のアンデッドを蹴り飛ばしながらネムが愚痴≪ぐち≫る。

「いやーん! 服が汚れちゃうよぅ! みんなドロドロなんだもん」


 ネムは足を止めて怒った顔をする。

「もう! あったまにきた! みんな~!」


 ピンク魔王のアンデッド召喚に対抗するために、ネムがドラゴン達を呼んだ。


 ここはハミマ共和国。ネムのホーム・グランドだ。

 あっという間に上空がドラゴンの群れで覆い尽くされた。


「みんな~ ただいま♪ あいつ等をやっつけちゃって!」

 ネムの号令で、ドラゴンのオスたちが一斉に大木に向かっていく。


 その戦力は圧倒的だった。


 ピンク魔王が追加で召喚したアンデッドは、殺到したドラゴンの総攻撃に成す術が無かった。


 炎を吐くドラゴン、電撃を放つドラゴン、それに水、風、氷とあらゆる属性のブレスが飛び交い、乱舞する。

 それはまさにカオスだった。


 ピンク魔王はその中で「いや~ん!」と、身悶える。


 ラルク一行は丘を駆け下りながら、安全圏へと抜け出すことに成功した。


 その時、先頭のラルクの目の前に、まばゆい光が生じた。


 丘を下ってきた勢いで止まることができず、ラルクは誰かの身体に『ドン』とぶつかった。


 その勢いで尻もちを着く。

「痛てぇ……また何か召喚しやがったのか?」


 顔を上げて、ぶつかった相手を確認する。

 逆光で見えにくかったせいか気付くのに時間を要した。


「な、な、な……親父!?」


 まさか、真魔王のカロンがこんなところで出て来るとは誰も予想していなかった……。


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