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再会 魔王の城にて

 知らないオッサンの突然の裸体。


 それを見せつけられてラルクは「え!?」と、固まった。

 ここが魔王の城であることを一瞬、忘れてしまう。


 露出狂のオッサンは、ラルクが怯んだところに『キエエエ!』と、奇声を発して蹴りを入れてきた。


 しかし、デカい掛声かけごえの割に動きが愚鈍ぐどんで、難なくテイムで対処できた。


 ラルクがオッサンの軸足を曲げる動きをトレースさせたせいで、蹴りをキャンセルさせられたオッサンは大きくバランスを崩す。


 そして尻から床に落下して「ひゃっ!」と、悲鳴を上げた。


 むき出しの下半身をラルク達に晒しながらオッサンが呻く。

「痛いぃいい! ううっ! 冷たいぃいい!」


 ファンクが呆れる。

「フ〇ック……汚ぇモン見せんなよ……」


 オッサンは下半身をこちらに向けて床の上を転がっている。

 そして上半身をゆっくり起こす。


「やれやれ。酷い目にあった」


 ネムがオッサンの顔を見て驚く。

「あ! オジサン!?」


 尻をさすりながらオッサンがネムの顔をしげしげと見る。

「お? え? ひょっとして……ネムちゃん!?」


「そうだよ♪ てか、久しぶりだね!」


「おお、おお! ネムちゃん、大きくなったなぁ! 特にお胸が」


「もう! オジサンが逮捕されちゃってから大変だったんだよ?」


「ああ、そうだった、そうだった! あの時は、すまなかった。まさかアレで拘束されてしまうとは思わなかった。ハミマではアレが犯罪になってしまうなんて知らなかったよ」


 悪びれるふうでもないオッサンの口調にラルクとファンクが口をあんぐりさせる。


「ねぇねぇ。オジサン、今、なにやってるの? てか、どうしてこんな所に?」


「あ、ああ、それはね……」と、オッサンは立ち上がる。

 もちろん、前ははだけたままだ。


「ファ〇ク……いつまで露出してやがるんだ……」


 その時、ギルバートが素っ頓狂な声を上げた。

「ああああああ!」


 何だろうと振り返ると、大蛇の唾液まみれのギルバートがラルク達を指さしている。

 

 ラルクが「どうした?」と、首を傾げる。

 ギルバートの視線は裸のオッサンに注がれている。


「ま、まさか!? 父上!?」


 ギルバートの言葉にオッサンが反応する。

「え? ギ、ギルバートか?」


「信じられない! 父上が生きておられたなんて!」

「いや。死んだ覚えはないぞ? 世捨て人になったのは認めるが」


「父上! 父上、父上! なぜ、お逃げになったのですか! なぜ、僕達を見捨てたのですか!」


 このオッサンにまつわる情報量の多さにラルクとファンクは困惑した。

「フ〇ック……何なんだ? こいつ?」


「ギルバートの親父さん……ネムネムの恩人、いや、変なことを教えやがった張本人……」


「ファ〇ク! 突っ込みどころが多すぎる! そもそもなんで露出狂がこんな所に居るんだ?」


 ギルバートが強く首を振る。

「いやいや、父上がこんな所に居るはずがない! 信じませんよ!」


「ファッ〇……変態なことに疑問は持たないのかよ」


 オッサンは言い訳する。

「いや。悪かったとは思ってる。だが、色々あったんだよ」


 ギルバートはオッサンに詰め寄る。

「父上である証拠を見せてくださいよ! そうだ! お尻の穴を見せてください!」


 さすがの変態親父も戸惑う。

「え? し、尻の穴を?」


「そうです! 本物の父上なら、穴に傷が残っているはずです! カロン・アシュフォード公につけられた傷が!」


「あ、ああ。そうか。分かった。やむを得ない」

 そう言ってオッサンは、いそいそと四つん這いになって、尻を突き出した。


 すかさず、ギルバートがしゃがみ込んで、それを点検する。

 左右の親指で穴を押し広げるギルバート。


「あった! この傷はまさしく!」

 ギルバートは歓喜した。


 その異様な光景は見る者をゲンナリさせた。

「ファ〇ク……なんだ? この親子……」

「感動の再会とは程遠いな」と、ラルクも目を背ける。


「ああっ! 父上! 良かった! 生きておいでで!」

「すまんかったな。ギルバート。家族の皆は元気か?」


「それが……今は離散しております。お屋敷を始め、ヒョターン・ツギィ家の資産は何も残っていません」

「そうか……申し訳ないことをしたな……」


「フ〇ック! 反省するなら服を着ろ」


 このオッサンがギルバートの父親だったということはさて置き、なぜこんな所で変態行為をしているのかというのは、共通の疑問だった。


 そこで、ラルクが代表して尋ねる。

「アンタ、なんでこんなところで露出しているんだ? 寒いだろ?」


 ラルクのズレた質問にギルバートがズッコケる。

「い、いえ、問題はそこじゃなくて、ここに居る理由ですよ!」


 オッサンは上着の前ボタンを留めながら背筋を伸ばす。

「いや、ここのぬしに伝言があってな。たまたま訪問していたんだよ」


「フ〇ック! 主って北の魔王にか?」


「そうだ。カロン様の指示を守っているか確認しにチャリで来た!」


「え? 自転車で!?」と、ラルクが驚くが問題はそこではない。


「ファ〇ク!? カロンだと!? やっぱ北の魔王の奴、カロンの言いなりになってやがんのか!」


 ギルバートが怪訝そうに言う。

「カロン様? なぜ、父上がアシュフォード公の使いに?」


 無理もない。ギルバートの認識ではカロン・アシュフォードは憎き相手だ。


 ギルバートの父は、決闘でカロンに穴を傷つけられた結果、名誉を失い、失踪してしまった。

 そのせいで、ヒョターン・ツギィ家は没落してしまったと信じている。


「なぜですか父上……アシュフォード公は、我が家の『かたき』……」


「いや、それが色々、あってな。まあ、経済的な事情と言うか……何というか……」


 歯切れの悪いオッサンの回答にギルバートが苛立つ。

「なぜ、お戻りになられないのですか! 家を再興するのが先でしょう!」


「あ、あ、まあ、それは追々《おいおい》……あ! 急がなければ! チャリが雪で埋ってしまう!」


 妙な言い訳をして逃げようとするオッサンをラルクとファンクが引き留める。

「待て! 奴の狙いは何だ!?」

「ファ〇ク! カロンの野郎はどこに居る!?」


 するとオッサンは、また上着のボタンを外して前をはだける。

「ほうれ! 見てごらん!」


「フ〇ック! 同じ手に引っかかるかよ!」


 だが、オッサンの裸体から黄緑とオレンジの混じった空気が発生した。

 それを上着でバッサバッサとあおぐオッサン。


「ぐ!? これは!?」と、咄嗟とっさにラルクが鼻を押さえる。


「ファ〇ク!? なんだこれ? 視覚が……」


 ラルクが半笑いでファンクを指さす。

「あれ? ファンク、なんだその恰好? 女装か?」


 ネムがケタケタ笑いながらラルクの背中をバンバン叩く。

「お兄ちゃんこそ、変な顔! 何でお化けみたいなお化粧してるの?」


「ガハハハファック! お前等、頭が歪んでんぞ? 出来損ないの壺みたいだぜ!」


「アハハ、そういうファンクこそ! 変な髪型になってる! ハハハ!」


 ギルバートがその様子を見て焦る。

「ま、まさか……これは父上のガスの効果!?」


 ラルク達は、笑い上戸じょうごになってしまったようだ。

 しかも幻覚が見えているらしい。


「ぐ……この威力! さすがの僕でも……クク……クククク」

 状態異常のガスには耐性があるはずのギルバートとて、例外ではなかった。


 腐ってもオッサンはギルバートの父親。

 ギルバートと同じスキルを持っていてもおかしくない。


 結局、笑いと幻覚の状態異常が収まるまで、ラルク達は足止めされてしまった。

 

 もちろん、気付いた時にはオッサンに逃げられてしまった。


「フ〇ック……恐ろしいスキルだ。ギルバートの親父、やるな!」

「ああ。ギルバート以上に強力なガスを出せるのかもしれない」


「ショックです……父上がアシュフォード公の手下に成り下がっているなんて」

「オジサン、行っちゃった。話したい事、いっぱいあったのに」


「ファ〇ク! 厄介だな。あのスキルを持った親父がカロンの味方だとすると……」

「分かってる。だが、俺達は奴を絶対に倒す!」


 家族を捨てたこと。呪印でテイムのレベルアップを妨げたこと。

 そして、世界を混乱に陥れようとしていること。


 ラルクには、父であるカロン・アシュフォードに『ざまあ』する十分な動機がある。


「ファッ〇! 俺も奴には借りを返さねえとな! こんな姿にしやがって!」


「僕も父上をあんな変態にしたアシュフォード公を許せません!」


 それは元からじゃないか? という表情でラルクとファンクが呆れるが、ギルバートの怒りはカロンに向いている。


「ファ〇ク! オッサンには逃げられたが、北の魔王なら何か知ってるに違いねえ!」


 気を取り直してラルク一行は、魔王のもとに向かう。


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