拾い食いは危険です
氷の骸骨兵は、氷の鎧にサーベルと盾を装備している。
先頭の骸骨兵がサーベルを振り上げて襲い掛かってくるのをテイムで止める。
「させるか!」
ラルクはテイムで骸骨兵にお辞儀させると、目一杯の力で木槌を振り下ろした。
『ガッシャン!』
高い音を発して、凍った頭骨が豪快に割れる。
骨片と氷が派手に飛び散る。
頭を殴られた骸骨兵は動きを止めて、膝から崩れ落ちる。
そして完全停止。
テイム&木槌で1体ずつ骸骨兵を排除していくラルク。
一方、ギルバートは『ギルバート・シフト』で骸骨兵の軍団に対抗する。
ピンクの屁で何体かの敵を鹵獲、自らの回りに配して、赤の屁でバーサーカー化して戦わせる戦法だ。
ラルクに守られていたネムが「私も戦う」と、骸骨兵に立ち向かう。
「おい! 危ないからネムネムは下がってろ!」
骸骨兵の頭をブン殴りながらラルクが怒鳴る。
だが、ネムはキリっと表情を引き締めて、骸骨兵の前に出る。
そして毛皮のコートの前を開ける。
「ほーれ! 見てごらん!」
裸体同然のコートの中身が晒され、骸骨兵3体の動きが止まる。
その隙にネムがビンタをかます。
が、一発目でネムの手が止まる。
「つ、冷たぁい!」
得意の百裂ビンタを狙ったのだが、冷気を纏う骸骨兵は思いのほか冷たかったようだ。
動きが止まったのは一瞬だけで、骸骨兵はネムに襲い掛かる。
「いやーん! ちょっと待ってよ」
『ガッ、ガッ、ガッシャーン!』
危ういところでラルクが骸骨兵の後頭部を連荘で殴り倒す。
「下がってろって言っただろ!」
「ごめーん、お兄ちゃん。助かったよ」
「それはいいけど、お前、まだハレンチなことやってんのか?」
「テイムをするときのクセになっちゃってるんだよね。完全に染み込んでるっていうか」
「誰だよ。そんなこと教えたのは……」
「おじさんだよ? 保護してくれてたおじさん」
「前に聞いたよ。路頭に迷ってた時に知り合ったんだろ」
「そうそう。そのおじさん」
ネムはラルクに連れ出されて家出した時に、保護されていた修道院から抜け出した。
その後、出稼ぎに行っていたラルクとはぐれて、知らないおじさんに保護されていた時期があるのだ。
骸骨兵は次から次へと無限に湧いてくる。
「くそ! 面倒くさいな! 一体ずつしかテイムできないのは」
ギルバートが緑のガスで周りの骸骨兵をケアしながら叫ぶ。
「きりがありませんよ! このままじゃラチがあきません!」
そこで、胡坐をかいて鼻くそをほじっていたファンクが腰を上げる。
「ファッキン・邪魔だ!」
ファンクは口をカパっと開けると『シュゴゥッ!』と、火を吐いた。
大魔王の口から放たれた炎は巨大な火柱となって、まるで煙突の中を爆炎が駆け抜けるように廊下の先の方までを蹂躙した。
「あ、熱っ!」と、ギルバートが腰を抜かす。
物凄い豪火だ。
骸骨兵は、一瞬で氷を奪われ、ただの骸骨に成り果てた。
ラルクが苦笑いを浮かべる。
「とんでもない火力だな。おかげで暖かくなったけど」
ネムも目を丸くする。
「エグいなぁ……」
そこで『ポフン』と、ファンクが元の姿に戻る。
「フ〇ック! 時間切れだ」
大魔王に変身していられる時間が終わったらしい。
「それじゃ先に進もう」
長い廊下をしばらく進むと、今度は大広間のような場所に出た。
天井が高く、舞踏会ができそうな広さの部屋だ。
「わあ、広いね♪ すんごいパーティができるよ」
「ファ〇ク! 北の魔王はパリピ(パーティ・ピープル)じゃねえんだけどな」
ギルバートが部屋の真ん中に立って周囲を見回す。
「へえ、なかなかのものですね。我がヒョターン・ツギィ家の迎賓館を思い出しますよ!」
元貴族のギルバートは得意げに室内装飾を値踏みする。
「ほうほう。シャンデリアは『バカナ』ですね。あの大きさだと結構な値段ですね。まあ、ウチにあった物よりは二回り小さいですけど」
その時、ネムが何かに気付いた。
「あ! 奥に何かいるよ? あれは……蛇!?」
ネムが指さす方向には真っ白な物体が動いている。
よく見るとそれは、20メートルはあろうかという氷の大蛇だった。
大蛇の出現にギルバートは気付かない。
「でも、絵画が駄目ですねえ。『ダガ』は格が落ちるんですよ。せめて『マネー』か『ルノオマール』ぐらいは飾らないと、上流階級としてのたしなみが……」
『パク』
大蛇がギルバートを飲み込んだ。
「え? えええ!?」と、下半身を飲み込まれたギルバートが驚く。
「あ、食われた」と、ラルクが他人事のように呟く。
「ファッ〇! なんで下半身だけ口の中に入ってんだ? 器用だな」
大蛇はギルバートの下半身を口に入れて、残る上半身を飲み込もうと鎌首を持ち上げた。
「ひゃあああ! たーすーけーてぇ!」
大蛇の口から上半身だけ出してギルバートがジタバタする。
ラルクがテイムで救出しようとするが、うまくいかない。
「蛇って身体の作りが特殊だから難しいんだよな」
ラルクのテイムは自分自身の動きをトレースさせるものなので、ラルク自身が先に動作を行わなければならない。
なので、蛇のような生き物をテイムするには、どんな動きをすれば良いのかイメージし辛い。
「は、はやくー! 飲まれるぅ!」
モトモタしているうちにギルバートは胸の辺りまで口の中に収まってしまう。
「お兄ちゃん! 間に合わないよ!」
「分かってるって! けど、不便だな、こういう時は」
ラルクはクネクネと色んなポーズを試してみるが、どうもしっくりこないらしい。
「あああ! もうだめだぁ!」
そんな悲鳴を残してギルバートは氷の大蛇に、すっぽり頭まで飲み込まれてしまった。
「フ〇ック!? 間に合わなかったぞ?」
「うーん。弱ったな」と、ラルクは頭を掻く。
さほど深刻ではないが、シーンとした空気。
「さて、どうしたものか」と、ラルクが呑気に言う。
と、その時、『べしゃ!』と、大蛇がギルバートを吐き出した。
氷まみれのギルバートは床に放り出されてジタバタする。
「冷たい! ネバネバする! 気持ち悪いいい!」
「あれ? 吐き出された?」
不思議に思って大蛇の様子を伺う。
『キシャアアア!』と、大蛇は、頭を振り回し、狂った鞭のように激しく身をくねらせている。
そして急に頭を壁に何度もぶつけたかと思うと、口から大量の体液を吐いて動かなくなった。
何が起こったか理解できず、ラルクが困惑する。
「フ〇ック!? 何か知らんが死んだ?」
「みたいね……変なもの食べた?」
「変なもの……原因はギルバートしか考えられないけどな」
「ファ〇ク! ひょっとして、あいつ、口の中で、ちびったんじゃねえか?」
「なるほど。それならあの反応も理解できる」
大蛇が突然、苦しみだしたのは、その可能性が高い。
食われかけたギルバートは粘液を振りほどこうと絨毯の上を転がりまわる。
と、その時、背後に人の気配を感じた。
「誰だ!?」と、ラルクが振り返ると、一人のオッサンと目が合った。
いつの間にかラルクの背後に忍び寄っていたオッサンは、ニヤリと笑うと、突然、上着の前を開けた!
「ほーれ! 見てごらん!」




