北の国でやり残したこと
ラルクのご指名を受けてトカゲの兄弟が戸惑う。
呪印を消すには、半人半獣が呪印をペロペロペロペロ舐め続けなければならない。
ラルクが、そそくさとズボンを脱ぎながら言う。
「俺のももを舐めろ!」
下半身を丸出しにしたラルクに迫られてトカゲの兄弟は慌てる。
「あ、兄ちゃん! 尻を舐めろって!」
「あ、いいや、ええっ!? 尻を?」
「兄ちゃん! きっと、しょっぱいよ!」
「男の尻だからな! 女の尻なら甘酸っぱいんだけどな」
「え? 女の尻って甘いのか? 兄ちゃん!」
「そ、そうだよ! 知らなかったのか! 大人の常識だぞ!」
「おいら、知らなかった! おいら、坊やだったよ!」
「お前も大人になったら分かるさ!」
「やっぱり、しょっぱいのは嫌だな。兄ちゃん、おいら、甘いのが舐めたい!」
「そうだな。甘ければ喜んで舐めるんだが、甘くならねえかな」
ラルクがバカ兄弟のやりとりにイラつく。
「いいから! さっさと舐めやがれ!」
ラルクは尻をトカゲ兄弟の鼻っ面に突きつける。
そこでドク爺さんが止めに入る。
「おいおい。言ったじゃろ。満月の夜でないと効果は無いぞい」
「あ、そうか……」と、ラルクが我に返る。
続いてドク爺さんが尋ねる。
「それに、そこのトカゲは魔力を持ってるおるのかね?」
「そう言われてみれば……どうなんだ、お前等?」
ラルクに問い詰められてトカゲ兄が答える。
「な、無い……です」
思い返せば、このトカゲ兄弟が魔法を使ったことは無かった。
ファンクが腕組みしながら言う。
「フ〇ック! 半人半獣で魔力を持ってる奴なら居るだろ。適任が」
ファンクの言葉にチキが手を打つ。
「豚の姉弟ですわね!」
「ファッ〇! そうだ。ブタジャーネに舐めさせればいい。あいつ等、一応、魔王だからな」
ラルクの表情がパッと明るくなる
「それは良い考えだ! 急いでラーソンに戻ろう!」
ネムがラルクに苦言を呈する。
「それはいいけど、お兄ちゃん、ズボン履きなさいよ」
「お風邪をひいてしまいますわ。ダーリン」
「あ、ああ。そうだな」
そこでドク爺さんがメモ用紙を取り出した。
「それから、これが必要じゃ。舐めるときに、特製の蜜を塗らんとならん。ここに蜜の材料を書いておいたぞい」
それをチキが受け取る。
「蜜ですって? あら。花の蜜だけじゃないのですわね」
ギルバートがメモを覗き込みながら変な顔をする。
「牛の妖精の母乳とか、越境燕の巣とか、そんなものも混ぜるんですか?」
「そうじゃ。用量や作り方はこの本に詳しく書いておる」
「材料集めが大変ですわね。お金で買えるものはいいですけど……」
ズボンを履き終えたラルクが不満そうな顔を見せる。
「なんだよ。直ぐにでも解除できると思ったのに」
「大丈夫ですわ。次の満月までに必ず揃えますから、ダーリンはご心配なく」
ギルバートがお腹を撫でながら安堵する。
「では、ラーソンに戻るれるんですね。こう寒いと、どうにもおなかの調子が良くなくって」
「ゲリピーでしゅ」
「早く帰りましょう。このままじゃ、パンツが何枚あっても足りませんよ」
ラルクが頷く。
「そうだな。サブン連邦の軍もこらしめてやったし、やり残したことは無いな」
そこで珍しく真剣な表情でファンクが口を開いた。
「ファック……まだだ」
「なんだよ。ファンク。目的は達成しただろ」
「フ〇ック! せっかくここまで来たんだ。帰る前に、北の魔王のところに寄る」
ネムが驚く。
「魔王!? 北の魔王に会うの?」
「ファ〇ク! そうだ。サブン連邦の戦争を止めるには奴に釘を刺しておかねえと」
ギルバートが頷く。
「そうですね。サブンの軍は当分、動けないでしょうけど、元はといえば北の魔王の意向でもあるんですよね?」
「ファッ〇! あの野郎、どういうつもりか知らんが、説教してやる!」
ラルクが困った顔をする。
「それはいいけど寄り道になるな……」
「フ〇ック! 皆で行かなくてもいいぜ? 先に帰って材料集めをしてていいぞ」
ラルクは首を振る。
「いや。それは付き合うよ。だったら、また二手に分かれよう」
そこでチーム編成を考える。
みなで相談した結果、ファンク、ラルク、ギルバート、ネムの4人で北の魔王を訪問することにして、残るチキ達が、呪印解除に必要な蜜の材料を集めることになった。
「分かりましたわ。安心して行ってらっしゃいまし。その間に出来るだけ材料を集めておきますわ」
「ああ。頼んだぞ、チキ。俺達はネムにドラゴンを操って貰って、ちゃっちゃと片付けてくる」
ビビリのギルバートは、この組み分けに不満があるらしい。
「ぼ、僕は留守番でもいいんですけど……」
「フ〇ック! ビビんなって! 北の魔王なんざ、抵抗したら捻り潰してくれる!」
一応、戦闘の可能性も考えてギルバートは連れていくことにした。
* * *
ネムが手懐けたファラギエナ2体に分乗して、北の魔王の城に向かう。
北の魔王の根城は、サブン連邦でも北端のさらに寒い場所にあった。
ファンクの感知能力をもってすれば、方向感が無い真っ白な世界でも簡単に城を発見することが出来た。
何重もの氷の壁にくるまれた魔王の城に乗り込む。
とりあえず、ファラギエナを降りて城の前に立つ。
ギルバートが紫に変色した唇を震わせる。
「さ、寒すぎて、ずっと顔が痛いですよ」
「フ〇ック! 早く中に入ろうぜ。確かにこの寒さはヤバい!」
「けど、どこから入るんだ? 氷だらけで入り口が分からないぞ?」
「ファ〇ク! 面倒だから……」
そう言ってファンクが小瓶の匂いを嗅いで『バフン』と、大魔王に変身する。
そして『ドガッ!』と、氷まみれの城の壁を蹴破った。
「おいおい。そこ、入り口じゃないだろ」
ラルクの突っ込みにファンクがゲラゲラ笑う。
「フ〇ック! 入り口が分かりにくいのが悪い!」
壁に開いた大穴から城の内部に入る。
ラルクとネムは「寒い寒い」と、遠慮なく入るが、ギルバートは不安そうだ。
「いいのかなぁ。北の魔王さん、怒っちゃうんじゃないですかね」
「フ〇ック! 知らんがな」
城の内部は、ヒンヤリとはしているが、吹雪が入ってこないので随分ましだ。
相対的に暖かく感じる。
「ファッ〇! こっちだ」
ファンクの先導で洞窟のような長い廊下を進む。
ラルクが尋ねる。
「ファンクは、この城に来たことがあるのか?」
「フ〇ック! まあな。何度か来たことがある。けど、こんな寒い時期には来ない」
「そうだろうな。ここは本当に氷の世界だ」
しばらく進んだところで前方に動く物の気配。
立ち止まって様子を伺う。
ギルバートが情けない声を出す。
「ほらあ! やっぱり。怒ってるじゃないですかぁ」
前方に現れたのは氷の骸骨兵の団体だった。
剣と盾を装備した兵たちは、明らかに敵意を持ってこちらに迫って来る。
ネムが物珍しそうにそれを見て感心する。
「キモいけどキラキラしてるね♪」
「こ、怖っ! ど、どうするんですか!?」
ギルバートが後ずさりしてファンクの後ろに隠れる。
ラルクはネムを庇いながら頭を掻く。
「やれやれ。やっぱ、こうなるか」
どうやらラルク達は北の魔王に歓迎されていないようだ。




