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無双パーティ、やりたい放題

 ラルク率いるファンク、ギルバートの男組は、2体の飛竜に分乗して最初の目的地に到着した。


 ターゲットはサブン連邦軍が政治犯を収容している要塞のような収容所だ。


 ラルクが地図を確認して頷く。

「ああ、あったあった。多分、アレだな」


「フ〇ック! 人が大勢、詰まってるような気配がするぜ!」

「まるっきり要塞だな。あれじゃ脱走なんて不可能だ」


 刑務所は高い塀に囲まれた大きな施設で、まるで城塞都市じょうさいとしのように見える。


 しかし、周りには何もなく、施設は雪で半分埋もれている。

 塀の中は、ある程度、除雪されているらしく、人が活動している場所であることが分かる。


 この収容所には戦争に反対する学者や著名人、徴兵ちょうへいに従わなかった若者などが収容されているという。


「ファ〇ク! まあ、あのアパチャイみたいな虐殺大好き野郎に殺されるよりはマシだろうが、過酷な環境だな」


「あの左側にあるのが軍需工場じゃないかな。あそこで強制労働させられてるんだろう」


「ファッ〇! 戦争準備でフル稼働してんのか?」

「おそらく。奴隷みたいな扱いなんだろ」


「フ〇ック! 右側にかたまってるのが兵の詰め所っぽいな」

「よし。じゃあ、あそこはギルバートに任せて、俺等は収容所に乗り込むぞ!」


 空から侵入しようとすると、左側の見張り台のような塔から攻撃を受けた。

 吹雪が止んでいるので、空から接近するラルク達は簡単に見つかってしまったのだろう。


「危ないなぁ、あいつ。いきなりぶっ放してくるか? 普通」


 塔の上でこちらに向かって大砲を撃ってくる兵士にテイムを発動する。


 ラルクの動作を真似させられた兵士が、自らの額を砲身に強く打ち付けてぶっ倒れる。


 続いてスクランブル発進した飛竜が3体、右方向から飛んできた。


 ラルクは、やれやれと首を竦める。

「やっぱ、見つかるわな」

 止む無く、接近してくる敵の飛竜にテイムをかける。


 ラルクのテイムで一体の飛竜が、急に方向を変えて隣の飛竜に体当たりを敢行かんこうする。

 その結果、空中で激しくぶつかった2体から、バランスを崩した兵士がそれぞれ落下した。


 残る一体は、垂直に急降下するようにテイムで操る。

 こちらも乗っていた兵士は振り落とされた。


「1体ずつしかテイムできないのは面倒くさいな。スキルが成長したら同時に操れるようになるのかな」


「フ〇ック! そりゃ、進化してみないと分かんねえな。けど、お前の妹を見てると、複数対象のテイムぐらいは軽くできんじゃねえか? 親父のカロンもそうだったし」


「だといいな。早く呪印を解除したいよ」


 軽く敵の警備をかいくぐったところで、ラルクがギルバートに指示する。

「ギルバートは、右側の施設から出てくる兵を片っ端から眠らせてくれ。俺とファンクは収容所を解放するから」


「え? 僕、独りなんですか?」

「無理に突っ込まなくていい。収容所に増援が来るのを阻止するだけでいいんだ」


「承知しました。それなら簡単です。任せてください」

「ファ〇ク! 眠らせるか痺れさせるかでいいんだぞ! 茶色は出すなよ!」


「努力します。でも……寒いから、ちょっと漏らしてしまうかも?」

「フ〇ック! 自重しろ! 収容されてる連中にまで被害が及ぶだろうが!」


 ギルバートの屁で兵舎と収容所を分断させる手はずを整えたところで、ラルクとファンクは、収容所に正面から乗り込んだ。


 入り口の警備兵にはテイム&木槌攻撃、建物内で巡回する監視兵にもテイムして木槌で『パッカーン』を繰り返す。


 失神させた監視兵から鍵束を奪い、どんどん中に入っていく。


 ちょうど、朝の食事時だったようで、収容されている人達の大半は食堂に集まっていた。


 当然、彼等を監視する監視兵たちは、突然、現れたラルクを制止しようと次々と近寄ってくるが、遠慮なく木槌で殴り倒す。


 一通り、監視兵を片付けてからラルクが演説する。

「ここの兵は無力化した! みんな、ここを占拠して自力で脱出しろ。政府の横暴に屈してはならない!」


 たったそれだけの演説だが、食堂内は『うおおおお!』と、熱狂した。


 奪った鍵束を渡して、閉鎖された場所の開放と、捕らわれた人々の解放を任せる。


 そして、ラルクが先導する形で、収容所内で兵が残っていそうな箇所を潰して回る。


 所長室のドアを蹴破り、処長らしき人物を問答無用でテイムして頭をぶん殴る。

 力でねじ伏せようとしてくる監視兵は数の暴力で袋叩き。 


 蜂起りゅうきした人々のテンションは高まり、みんなトランス状態になっていく。


「ファ〇ク! あとはこいつらに任せて次、行こうぜ」

「そうだな。にしても皆、うっぷんが溜ってたのかな? 監視兵がボコボコにされてる」


「フ〇ック! たぶん、日頃から虐待してたんじゃねえの? 自業自得だ」

「だな。これも『ざまあ』だ」


 これだけの騒ぎになっているのに監視兵の増援は無い。

 おそらく、ギルバートの足止めがうまくいっているのだろう。


 この調子なら捕らえられていた人々の手によって、この収容所は解体されるだろう。

 そうなれば、軍需工場も稼働できなくなる。

 それに、反政府活動に勢いがつくはずだ。


 ひとつ目の目的を達成して、ラルク達は次の軍事拠点に向かう。


     *    *      *


 クセーナが引率する女組は、分厚い氷に覆われた湖に来ていた。


 この湖には水棲の氷結竜がいるという。


 クセーナが解説する。

「この湖は1年のうち半分は氷に覆われてるの。だから、氷結竜の生態はよく分かってないのよ」


「そうなんですの? それでしたら、今の季節、発見できないかもしれませんわね」 


「そもそも目撃事例が少ないのよ。この辺りの住民でも見たことがある人はごく少数よ」


 ネムがガッカリする。

「ええ~ せっかく来たのになあ……」


 チキがブーツの先で氷を『コンコン』と蹴る。

「この厚い氷の下に居るかもしれないのですのね」


「そうよ。でも、この氷でしょ。こうしてアタシ達が乗っててもビクともしない厚み!」

 クセーナはジャンプして氷に衝撃を与えるが、氷の厚みに吸収されてしまう。


「カッチカチでしゅ」

 ピピカは、まるでウンチを突くみたいに棒切れで氷をツンツンする。


 そこでチキがポンと手を打つ。

「それでしたら、試しに穴を開けてみましょう!」


「え? どうやって? 道具も無いのに……」


 首を傾げるクセーナをよそにチキは草を取り出して口に含んだ。


 念入りに草を噛んで、ゴックンと飲み込む。そして澄まし顔。

 

 その後のアクションが無いことにクセーナが呆れる。

「なにやってんの?」


「練っているのですわ」

「練るって何を?」

「草ですわ」

「く、草? ひょっとして今食べた草?」


 その質問には答えずにチキが準備を整える。

「そろそろ、よろしいかしら」


 チキは適当な場所を選んで「失礼あそばせ」と、断ってから吐く態勢に入る。


「お……おぇええええ!」


 盛大にゲロをぶちまけるチキ。

 赤っぽいゲロが噴水のように放物線を描いて氷の上に広がった。


 その瞬間、氷の表面が『ジュワ、ババン!』と、水蒸気爆発を起こした。

 大量の水蒸気が発生する音と氷が溶かされる音が激しく混じり合う。


 ひととおり水蒸気の発生が収まって、改めてゲロを被った箇所を見ると、大きな穴が開いていた。


 クセーナが穴を覗き込みながら驚愕する。

「え? なにこれ? 氷が溶けてる!?」


 チキは事も無げに穴を眺めて苦笑する。

「あまり綺麗な形ではありませんことね」


「でも、お義姉さん、凄い! あんな魔法が出せるなんて」


 それを聞いてクセーナが驚く。

「魔法なの!? アタシには草を食べて吐いただけにしか見えなかったけど……」


「貫通したでしゅね」

 ピピカがしゃがんで穴を観察する。


 と、その時、彼女たちの足元に微かな振動が生じた。

 それは断続的に、やがてはっきりと体感できるような揺れだった。


 クセーナが青ざめる。

「まさか、氷が割れる!? 穴を開けちゃったから?」


「そうかしら? それならヒビが入ると思うのですけど」


「てか、氷の下からコンコンしてない?」

 ネムが耳を澄ませるような仕草をみせる。


 すると、次の瞬間、穴から水の塊が浮いて出てきた。

 それはまるで水柱のように、勢いよく噴き上がった。


「で、で、何か出た!」

「な、なんですの!?」

「あいぃいい!?」

「ウソォ♪ なんだろ?」


 チキのゲロで開けた氷の穴からは、推定10メートル超の物体が出現した。


 氷の上にそびえたつ物体。

 そしてそれが『首長竜』の首と頭だと理解して、チキ達は腰を抜かした。


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