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カロン・アシュフォード

 思わぬ場所での対面に心をかき乱されながら、ラルクは宙に浮いた人物を睨みつける。

「クソが……こんなところで会うとはな」


 ファンクは敵意丸出しで怒鳴る。

「フ〇ック! カロン! てめえ! 俺を妖精なんかにしやがって! 絶対、ぶっ飛ばす!」


 ギルバートも復讐に燃える目を向ける。

「父上の仇! よくも父上の穴を!」


 ラルク達の反応を見て、赤い光に包まれた謎の人物が吐き捨てる。

「フン。ほざけ。お前らなど眼中にない」


 ラルクが苦々しい表情で問う。

「8年ぶりか? 今まで何をしていやがった?」 


 謎の人物はラルクを見下ろしながら答える。

「お前にとっては8年ぶりか。こちらは2度、お前を見ているがな」


 やはり、謎の人物は生死不明だったラルクの父、カロン・アシュフォードだった。

 

「カロン! いや、親父! なぜだ!? なぜ、家族を捨てた!?」


 ラルクの問いにカロンは平然と答える。

「不要だったからだ」


「な、なにぃ!? 生きていたなら、なぜ帰ってこなかった? お前が行方不明になってから俺達家族は離散してしまったんだぞ?」


「それがどうした? 下らん。お前たちの存在など、どうでも良かったからな」


「お前のせいで……お前のせいで家族が! ネムネムだって苦労したんだぞ!」


「ネム? ああ、そんなものも居たな。まるで興味は無いが」


 妹のネムを『そんなもの』呼ばわりされてラルクは激怒した。

「そんなもの……だと? ふざけるな! なら、どうして家族なんか持ったんだ?」


「出世する為に必要だった。世間体というやつだ。結婚して子をもうけてこそ一人前などという、古びた価値観を持つ輩が多くてな。仕方無くというわけだ」


「出世の為だと? そっちの方が下らないじゃないか!」


「ああ。その通りだ。将軍などという地位はクソ以下だった。いざ、その地位についてみて直ぐに悟った。国王を含め、ラーソンのアホどもの為に働くことに心底、うんざりした。だから壊した」


 ラルクが怪訝そうに尋ねる。

「壊した……だと?」


「そうだ。ここ、ワルデンガでの8年前の海戦。ラーソン海軍が同士討ちで自滅した戦いだ。あれは自分が仕組んだ」


「なんだって!?」「ファ〇ク!?」「ええっ!?」「嘘でしょ……」


 カロンはニヤニヤしながら回想する。

「実に単純なことだ。旗艦に乗り込んで、艦長や幹部を操ってやった。味方の船に向けて砲撃するようにな。霧の中、アホどもはパニックになってお互いを攻撃し合ったのだ。愚かなことだ」


 ワルデンガの戦いでラーソンは多くのものを失った。


 この島がハミマに侵略されてしまったのも戦いに敗れてしまったせいだ。

 そして今、ハミマ共和国が、ここを足掛かりにラーソンに攻め入ってきた。


 ギルバートが悲痛な叫びをあげる。

「酷すぎますっ! あなた、それでもラーソンの人間なんですか? 祖国を窮地に陥れるなんて!」


「ファ〇ク! お前、西の魔王をけしかけてハミマに戦争させてんだろ? 何が目的なんだ?」


 カロンは事も無げに言う。

「ラーソンがどうなろうか知ったことではない。この世界はリセットされなければならない。世界が滅茶滅茶になればなるほど、人々は英雄を欲する。つまりは、そういうことだ」


「フ〇ック……世界中を破壊して、てめえが救世主としてヌケヌケと現れて世界を支配するってか?」


 ファンクの指摘にカロンが余裕の笑みで答える。

「さすが元大魔王。察しが良いな。今の自分にとって、大魔王に代わって世界を支配することは容易い。だが、どうせなら歓迎された方が良いだろう? そのために必要なプロセスなのだ」


「クソ野郎でしゅ」

「酷すぎますわ……そんな私利私欲のために戦争を起こすなんて」

「ファ〇ク! 他の魔王たちを操る為に俺を排除しやがったんだな!」


「そうだ。大魔王の存在は邪魔だったからな。残念ながら殺すことはできないので、世界中の古い封印術を集めて回った。おかげで色々と面白い術が手に入った」


 そこでラルクは自らに施された封印術について思い出した。

 太ももの裏に記された能力を抑制する呪印だ。


 ラルクが問う。

「行方不明になってから2度、俺を見たと言ったな? グランを操って、俺の成長を止める封印術を使わせたのはなぜだ? 俺達家族には興味が無かったはずでは?」


 その質問に対し、カロンは微かに険しい表情をみせる。

「フン。人をも操るテイム能力を持つ者は自分だけで良い。それに、この能力は継承されると……」


 その時、島中にサイレンが響き渡った。

 ギルバートのガス攻撃を免れた敵兵が非常事態を認識して戦いに備えているようだ。


 カロンはそれを察知して話を切り上げようとする。

「そのままの姿勢で朝を待つがよい。本土からハミマの援軍が来るだろう。お前たちの処遇は彼等に任せる。さすがに自分の手で息子を殺めるのは気が引けるからな」


 カロンは、そう言い残して『パチン』と、指を鳴らす。

 すると、赤い光が一瞬、強く輝き、やがて収束した。


 宙に浮かんだ赤い光が消え失せると同時にカロンの姿も見えなくなった。


 その反面、周囲はにわかに騒がしくなった。

 生き残りの敵兵の怒号が聞こえる。


 ラルクがもがく。

「くそ! 動けない!」


 ギルバートが焦る。

「ままま、まずいですよ! 僕ら、こんな無防備な状態では殺されちゃいますってば!」


 確かに、まずい状況だ。

 カロンのテイムで跪かされたままでは、敵の攻撃に晒されてしまう。


 チキも引きつった顔で危機感をあらわにする。

「このままでは何もできませんわ! どうしましょ!」


 朝まで待つまでもなく、敵兵は直ぐにラルク達を発見するだろう。


「フ〇ック! ギルバート! 屁だ! お前の屁を嗅がせろ!」


 ラルクがその言葉に驚く。

「ファンク? どういうつもりだ?」


「フ〇ック! せめて、大魔王に変身して戦えるようにする。お前等を守るためにな!」


「そうか! 酷い匂いを嗅げば大魔王に戻れるんだな?」

 ラルクは納得するが、ギルバートは顔を真っ赤にして悪戦苦闘する。

「うぎぎぎぎ、無理です! 出せません」


「ファ〇ク! 出せ! 屁を寄越せ! くっさい屁を嗅がせろ!」


 ファンクの妙なリクエストにピピカが反応する。

「へ、変態でしゅ!」


「ファッ〇! 仕方がねえだろ! 緊急事態だ」


「僕だって出したいですよ! けど、力が入らないんです! まるで動けない! ああ、でも、逆に緩めるならなんとか……」


 チキが警告する。

「でも『み』を出したら許しませんことよ!」


「そ、そんな保証はできません! ああああ! あれ? 出してはいるつもりなんですが……」


 そこで『ぷすっ』と、蚊の鳴くような屁が出た。


 次いで、チキとピピカが同時に「おえええ!」「ぼええ!」と、同時に嘔吐する。


「臭いですわ! 臭すぎて……ごふっ」

「くっさいでしゅ! ンコより臭いでしゅ! おえええ」


 ラルク、ファンク、ギルバート、チキ、ピピカは、横一列で跪かされている。

 なので、風下のチキとピピカだけが屁の被害を受けてしまったのだ。


「殺す気なんですの! こんな酷いガスをするなんて人殺しですわよ!」


「そ、そんなこと言ったって! これ以上、緩めたら何かが出ちゃう!」


 止まないサイレン。動きを活性化させる敵兵。

 このままでは敵兵に見つかってフルボッコにされるのは時間の問題だ。


 さすがにラルクの表情にも焦りの色が濃くなってきた。


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