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潜入は大胆に行動するのがコツ

 暗くなるのを待ってラルク達はワルデンガ島に上陸することにした。


 無人の港町で休憩した後、闇夜に紛れて飛竜で海を渡る。


 まずは、破壊光線でファンクに壊された沿岸を目指す。

 ラーソン側の港町から島までは最短で1キロも無い。


 敵に発見されないように、念のために黒い海面すれすれに飛んで右から回り込む。


「なんだか焦げ臭いな」

「フ〇ック! 土と鉄が焼ける匂いだな」


 島の南側は岸壁が続いていて、砲撃はここから行われていたと推定される。


「穴だらけでしゅ」


 ピピカが言う通り、岸壁には人工的な穴が無数に開いていた。

 幾つかの穴からは煙が外に漏れだしている。


 岸壁は至る所で崩落しており、破壊光線の威力を物語っていた。


 ラルクが六角形の穴を観察しながら首を傾げる。

「ここから砲撃してたのか? てことは中に大砲が……」


「フ〇ック! おそらくな。入ってみっか? 奥に続いてるかもよ?」


 だが、翼を広げた状態の飛竜で突入するには穴が狭すぎる。


「どうだろう。飛竜が入れそうなサイズの物があればいいんだけど」


 ギリギリまで岸壁に接近して、地形をなぞるように飛ぶ。

 しばらく進んだところで、ひと際大きな六角形が目に入った。


「あれならいけそうだ!」と、ラルクが手綱をしごく。


 ラルクを先頭に飛竜で穴に突入して内部に乗り付ける。

 それに続いてチキとギルバートも飛竜で中に入ってきた。


「これは……」と、チキが飛竜から降りながら天井を見上げる。

 内部は、建物2階分の高さはあろうかというトンネル構造になっていた。


「フ〇ック! こんなものよく作ったな!」


 ギルバートが怪訝そうに周囲を見回す。

「これだけのトンネルを作るってことは、相当、前から要塞化するつもりだったんでしょうね」


 穴の内部は、まだ熱気が残っていた。


 ラルクが鼻を摘まむ。

「焦げ臭い。それに焼けた跡がある」


 大魔王ファンクの破壊光線による爆発の影響なのだろう。

 おそらく、爆発が穴の内部にまで入り込んできたと考えられる。


 チキが足元の線路に気付く。

「あら。線路のようなものがありますわ」


 ギルバートが前方を指さす。

「あ! あれを見てください! 車両に大砲を積んでいますよ」


 脱線して傾いた車両は台座だけで、その上には、ひしゃげた大砲が設置されている。


 ピピカが目を見張る。

「でっかいチ〇チンみたいでしゅ!」


 確かに、その形はそう見えなくはない。

 だが、サイズが桁違いだ。長さはゆうに10メートルを超えている。

 砲口も大人ひとり分の身長に匹敵する口径だ。


 チキが溜息をつく。

「こんなもの……これでラーソンの沿岸部を攻撃したのですわね?」


 ラルクが苦い顔をする。

「ああ。超長距離砲なんだろう。これはもう大砲ってレベルじゃないな」


「ファ〇ク……人間って、とんでもねえモン作りやがるんだな」


「あら。この大砲……先っぽの方が若干、溶けてますわね」

「ファンクさんのえげつない攻撃のせいですよ」


「ファッ〇! あれでも一応、手加減して浅く狙ったんだがな」


「そうか? この辺りが全部吹き飛んだかと思ったぞ?」

 ラルクの指摘にファンクが首を振る。

「フ〇ック! そこまでやんねえよ! 本気ならもっと強烈なのを出してるぜ」


 ラルクが頷く。

「ああ、そうだな。ファンクは無益な殺生はしない主義なんだよな」


「まあ! 優しい大魔王なんですわね」

 チキの言葉にギルバートが突っ込む。

「優しい大魔王は目から破壊光線なんて出しませんけどね……」


「それにしても敵の姿が見えませんわね」

「フ〇ック! 避難というか撤退したんだろ。ケガ人も大勢出ただろうし」


 ラルクが奥の方に目を向ける。

「奥に続いているようだ。たぶん、この辺りのトンネルは、どこかで繋がってるんだろ」


 どうやらハミマ軍は、この島を要塞化するために、トンネルを張り巡らせているようだ。

 そして、岸壁に開けた穴から大砲を撃てるようにしているのだ。


 線路を辿って奥に進み、突き当りの扉を開けると、大きな空間が出現した。

 予想通り、この空間を中心に幾つかの穴がある。

 

 端っこには階段があって、それで上下に移動するらしい。

 真ん中には昇降機のようなものがある。


 ラルクが周囲を見回して言う。

「やっぱりな。ここからそれぞれの穴に分岐して、弾を補充するんだろう」


「大きな昇降機ですこと! あそこまで線路が続いてますわね」


「フ〇ック! 面白ぇな。線路が、あそこに集約してやがるぜ?」


 ギルバートが知った風な口をきく。

「ああ、あれはですね。昇降機の前に大きな円があるでしょう。あれが回転して、他の線路に移れるような仕組みなんですよ! ターン・テリブーというんです」


「テーブルでしゅよ。ボケナス」


 ピピカに指摘されてギルバートが赤面する。

「そ、そうとも言うようですね……」


 ラルクが昇降機を指さしながら明るい声で言う。

「あれに乗ってみよう。面白そうだ」


「フ〇ック! いいな、それ! こんな大掛かりな設備が地中にあるなんて素敵やん!」


 しかし、ビビリのギルバートは乗り気ではない。

「また無謀なことを……いきなり敵に出くわしたらどうするんですか」


「ファッキン・大丈夫だぁ!」


 ラルクは、昇降機の前にあるレバーやボタンを適当に操作した。

 そのうちに『ガッコン!』と、大きな音がして、昇降機が動き始めた。


 大きな音にギルバートが冷や冷やしながら周囲を警戒する。


「ビビリでしゅねぇ」と、ピピカは呆れる。


 やがて『ガコン!』と、金属同士がハマるような音がして、昇降機の扉が開いた。


「とりあえず乗ってみよう」

 ラルクを先頭に、全員が昇降機に乗り込む。


「大きいですこと! 何を運ぶのかしら?」

「ファ〇ク! 大砲とか弾だろ。補給すんじゃねえか? 弾が無いと困るからな!」


「玉無しは最低でしゅよ」


 ピピカの視線を感じてギルバートが股間を押さえる。

「ぼ、僕は、ちゃんとありますよ!」


 おバカなやり取りをしているうちに、昇降機が動き出した。

 そして到着したのは最下層だ。


「ファッ〇!? なんか下にきちまったぞ?」


 昇降機を降りてラルクが「この部屋は……」と、目を丸くする。


 山積みになった木箱、並べられた大砲の弾、大砲の部品……。

 人の気配は無く薄暗いが、作業台や機械が沢山あって、工場と武器庫を兼ねているようにみえる。


「フ〇ック! 弾の貯蔵庫か!」


 チキが首を竦める。

「みたいですわね。ここから武器をあちこちの穴に運搬するのでしょう」


 ギルバートが大砲の弾が詰まった木箱に手をかける。

「凄い数ですね。弾や火薬だらけですよ」

 

 しばらく考え込んでいたラルクが唐突に言う。

「よし! ここを爆破しよう!」


「ええっ?」「ダーリン!?」「ファ〇ク!?」「あい」


 驚く面々とは対照的にラルクは至極、冷静だ。

「ここを吹っ飛ばせば、ラーソンへの無差別砲撃は止むだろ?」


 ギルバートは「そ、それはそうでしょうけど……」と、戸惑う。


「大丈夫だ。幸い、人も居ないようだし」

 ラルクは簡単にそう言うが、ことの重大さにチキも躊躇する。

「大胆ですわね……でも、大丈夫かしら?」


 ギルバートは早口で、まくし立てる。

「止めときましょうよ! 第一、どうやって爆破するんです? すごく爆発すると思いますよ? 巻き込まれたら僕らもタダでは済みませんよ? 危ないですって!」


 そこでファンクが妙案を口にする。

「ファ〇ク! じゃあ、俺の油を使おう!」


「は?」と、ギルバートが間抜けな顔で反応する。


「フ〇ック! ちょうど腹の具合が良くねえんだ。いくらでも尻から油が出そうだ!」


 ファンクは、そう言ってパンツを脱ぐと、ゆっくり低空飛行しながら尻から油をポタポタ垂らし始めた。


「汚ったないでしゅ」と、さすがのピピカも引き気味だ。


 だが、ラルクは意図を理解して賛同する。

「そうか! 導火線の要領で着火までの時間を稼ぐんだな! いいぞ、ファンク!」


「嫌な作戦ですわね……」と、チキは顰め面。


 ギルバートもゲンナリする。

「そりゃ、ファンクさんの油はランプ代わりになるぐらいですから……でも何か嫌ですね」


 だが、ラルクは、すっかり乗り気だ。

「切れ目が無いようにしないと! そうだ、そこの棒を使おう!」


 尻から油を垂らしながら飛び回るファンク。

 床に落ちた油の筋を棒の先でなぞるラルク。


 何ともいえない奇妙な作業に没頭する二人。

 チキとギルバートが呆れながらそれを見守る。


 最初は首を傾げていたピピカだが、途中から嬉々として作業に参加した。


 ピピカは、室内にあった火薬の箱を抱えて、あっちこっちにバラ撒く。

「楽しいでしゅ!」


 こうして、油の一本道をジグザグに作って、部屋の中を何周かした。


 作業を終えてラルクが「ふぅ」と、手応えを感じたような表情を見せる。


「よし! みんな、昇降機に戻れ!」

 ラルクの合図で、一同が急いで昇降機に乗り込む。


 昇降機のレバーに手をかけながらラルクが指示する。

「チキ! 火をつけろ」


「え、ええ……」 

 チキは火炎草の先っぽを噛み切って、モグモグしてから飲み込む。

「どうなっても知りませんことよ?」


 そして、炎のゲロを「うぇえっ」と、吐き出した。



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