大切なことは、おばばに聞け!
物知りな妖精の『おばば』は、失われた楽園の近くで隠居していた。
大樹の空洞に居を構える『おばば』の住処は、普通なら見つけるのに苦労するはずだが、ファンクの勘で、あっさりと発見できた。
チキが感心する。
「前から不思議に思っていましたけど、その勘の良さは大魔王のスキルだったのですわね」
ラルクも同意する
「ああ。今までずっとマグレだと思ってたが、納得だ」
ダンジョンなどで一切迷うことがなく、敵の気配や危険の存在を事前に察知するファンクの勘は、やはり天性のものだった。
「フ〇ック! まあ、大魔王だからな。当然っちゃあ当然だ。ガハハ!」
木の穴は、妖精が入るのが精一杯の大きさなのでファンクが単独で中に入り、おばばを呼んできた。
ファンクに連れられ、億劫そうに穴から出てきた『おばば』は、妖精なのに見た目が完全に老婆だった。
ということは、相当に長生きしていると思われる。
「ファ〇ク! こいつが、妖精界1の物知り婆さんの『ウィキッペ』だ!」
名前を聞いてギルバートが変な顔をする。
「ウィキッペですか。『握りっ屁』みたいな響きですね……」
「臭そうでしゅ」
おばばのウィキッペは、それを聞いて怒り出す。
「なんぞい! この失礼な人間どもは!」
ラルクが「おい、謝れよ」と、肘でギルバートを突く。
チキは無言でローキックをギルバートにお見舞いする。
「はぐわっ!?」と、ギルバートが体勢を崩しながら「すみません」と、謝罪する。
適当な倒木を椅子替わりにして、ウィキッペを囲む。
ファンクが簡単に事情を説明して助言を仰ぐ。
「ファッ〇! てな訳で、こいつの呪印を解除したいんだ!」
そこでラルクが突然、立ち上がり、下に履いていたものをスポーンと脱ぎ捨てた。
勿論、下半身はむき出しだ。
「あらぁ♪ 嫌ですわダーリンったら♪」
手で顔を覆いながらも喜ぶチキ。
「フ〇ック!? 下半身、丸出しじゃねえか!」
ラルクは四つん這いになって尻を突き出す。
「いや、この方が良く見えるかと思って」
ウィキッペは、パタパタと飛び回りながら、しげしげとラルクの尻を観察する。
「おお……綺麗な尻である」
「ファ〇ク! 尻じゃねえ! 太ももの裏だ!」
ギルバートが『トホホ』といった風に苦笑いを浮かべる。
「なんか前にも見た構図ですねえ」
ウィキッペは、じっくりと呪印を見定めたうえで断言する。
「これはナルゲンの古代文字。能力を抑え込む呪術じゃ」
「なんですの? それは?」
「北の国、ナルゲンの先住民が昔、使っておった文字じゃの」
「ファッキン・北……サブンか」
ウィキッペが頷く。
「サブンが連邦制になるずっと前じゃな。400年ぐらい前かのう」
ラルクが四つん這いのままで尋ねる。
「それで? これを消す方法は?」
皆の注目がウィキッペに集まる。
彼女は『エヘン』と、咳ばらいをして、大きく息を吸う。そして一言。
「知らんがな」
「ファッ〇! ババアでも知らないことがあんのか!?」
「知らんもんは知らん。ナルゲンがあったサブン連邦に行って、文献でもあたらんと分からんぞい」
「フ〇ック! じゃあ、北まで行かなきゃなんねえのか? サブンなんてハミマより、ずっと北だぞ?」
ウィキッペは首を振る。
「いいや。今は時期が悪いぞよ。ハミマがラーソンに侵攻してきたじゃて」
ラルクが四つん這いの状態でビクンと反応する。
「ハミマが侵攻を開始しただと!?」
「おお、さっき速報が流れておったぞい」
「どういうことですの? やはりハミマは本気で戦争を?」
「ファッ〇! その兆候はあったけど、今かよ?」
ギルバートも険しい表情で言う。
「確かに、それが事実ならサブンに行くどころじゃないですよ」
ラルクがズボンを履きながら考えを口にする。
「なるべく、ハミマ軍のいないところを進めば何とかなるんじゃないか?」
「フ〇ック! それで、ハミマを突っ切ってしまえばいいってことか!」
しかし、ピピカとギルバートが反対する。
「危ないでしゅ」
「そうですよ! 移動手段はどうするんです? それに、ハミマに入ったとしても自由に行動できませんよ?」
そこで、ラルクがアイデアを思いつく。
「そうだ。ブタジャーネに頼んで、魔法で転移させてもらおう!」
魔王の姉ブタジャーネは、一瞬で弟の城に飛んできた。
ということは転移の魔法を使いこなすことができるはずだ。
「なるほどですわ!」
「フ〇ック、無理だな」
「どうしてですの?」
「ファ〇ク! あいつ、決まったところにしか瞬間移動できねえんだ。自分の城、弟の所、それからお気に入りのピーナツ屋だけだ!」
ラルクがガッカリする。
「なんだそれ。使えないな」
「ファ〇ク! あいつの転移魔法は、実際に行ったことがある場所にしか移動できねえ。移動したい先に印をつけておく必要があるからな!」
ラルクが考え込む。
「うーん……それじゃあ、強行突破するしかないな」
ギルバートが疑うような目つきで言う。
「また密航するんですか? なんだか嫌な予感しかしないんですけど」
その時、チキが連絡帳(魔法で遠方の人間と手紙をやり取りするメールのようなもの)を見ながら声をあげる。
「あら。ネムさんから連絡が来ていますわ」
「なに? お前、ネムネムと連絡取り合っているのか? いつの間に……」
「義理の妹ですもの。当然ですわ」
「で、なんて?」
「ラーソンに来るそうですわ」
「なに!? あいつ、何しに来るんだ? こんな大変な時に」
「お母様が見つかったのかしら?」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな。けど、今じゃなくていいだろ。危ないな」
妹想いのラルクは、国境地帯が危険な状況でネムが入国することに気をもんだ。
「入れ違いになってしまいますわね。どうしましょう?」
「そうだな……ネムネムの奴、どうやってラーソン入りするつもりなんだろ?」
「ええと、ですわね……ワルデンガ島を経由すると書いてますわ」
それを聞いてラルクの顔色が変わる。
「ワルデンガ!? ハミマ軍が要塞化しようとしているところじゃないか!」
ラルク達はラーソンに戻ってくる際に、ハミマ軍が違法な大砲を島に持ち込むのを目撃している。
「ファ〇ク! ワルデンガ島なんて、ハミマ軍がウヨウヨしてるだろ!」
「ネムネムが危ない! 俺が行って守らなければ!」
ラルクの言葉にギルバートが顔を顰める。
「またぁ! 危ない橋を渡ろうとする!」
しかし、ラルクの決断は早かった。
「ワルデンガ島に向かうぞ! ネムネムと合流する。ついでに、ハミマ軍の要塞を無力化してやろう」
ギルバートは拒否反応を示す。
「ええっ!? そんな無茶な! それはラーソン軍に任せましょうよ……」
一方、チキは賛成の意向。
「さすがダーリンですわ! 妹を守るだけでなく、この国の為に戦うなんて! 素敵すぎますわ!」
「ファ〇ク! まあ、うまくいけば戦火の拡大を防げるかもな。それに、その足でハミマを抜けて北上すれば最短距離だぜ」
「そうですわよ! 一石二鳥ですわね」
「ドングリ一個で二度おいしいでしゅ」
皆がラルクの決定を受け入れるのを見てギルバートが拗ねる。
「はいはい。どうせ多数決なんでしょう? 行きますよ。行けばいいんでしょ。怖いけど」
ハミマの侵攻がどの程度なのかは分からないが、もたもたしていられない。
ラルク達は、ワルデンガ島に向かう。




