陽キャラだらけの妖精界
ラルク一行は、蠢きの森を出たところでグラン達と別れることになった。
ラルク達は、ラルクの父であるカロン・アシュフォードを倒すために、まずはラルクの呪印を解除しなければならない。
その後で、北と西の魔王に接触して、カロンの動向と行方を探る。
一方のグラン達は、パーティを解散して、各々の生活圏に戻る。
それは、グラン達の総意だった。
グランは頭を掻きながら言う。
「正直、俺達の力じゃ、お前達の足元にも及ばねえ。かえって足手まといになっちまう」
それに対してラルクが「そうだろうな」と、素で返すが、グランは反論する気にもならない。
「ちぇっ、言ってくれるぜ。けど、認めざるを得ないもんな」
リッツも素直にラルクを称える。
「アンタラは強い。今回は完敗さ。けど、訓練は続ける! いつか追いついてやるよ!」
ティナはラルクの耳元で色っぽく囁く。
「必ず有名になってね。いくらでも気持ちいいことしてあげるから」
耳に吐息を受けたラルクが赤面する。
「な、なに言ってんだお前!」
勿論、チキはそれを見逃さない。
「ちょっと! ダーリンに、ちょっかい出さないでいただけますこと?」
ピピカは「修羅場でしゅ」と、クスクス笑う。
別れ際にバルガードがチキに声を掛ける。
「なあ、ゲロ吐き女。いつか俺を弟子にしてくれないか? お前さんの魔法は最強だ」
だが、チキは嫌そうな顔でそれを拒む。
「お断りですわ!」
「いや、本当に研究させて欲しい。なぜ、草からあんなに強力な魔法を生み出すことが出来るのか?」
ガルバードは大まじめに懇願するが、チキはにべもない。
「知りませんわよ。他をあたってくださるかしら?」
止む無くガルバードは、ターゲットを変更する。
「では、屁の男。君はどうだ? 研究の対象にさせてもらえないだろうか? 君の尻の穴は実に興味深い」
ギルバートもゲンナリした顔で首を振る。
「嫌ですよ。穴をジロジロ観察されるなんて! いやらしい!」
ピピカは両者を見比べながら「どっちも変態でしゅ」と、クスクス笑う。
「フ〇ック! そんじゃ、俺達は妖精の村に向かうぜ!」
ファンクはラルクの呪印を解く鍵が妖精の村にあるという。
ここからさほど遠くはない、ということだが……。
ラルクが心配そうに尋ねる。
「ファンク、お前、嫌じゃないのか? 村八分にされてたんだろ?」
「ファ〇ク! まあな。妖精界1のトンマとか言われて虐められてたからな」
「あら。でも、ファンクの正体が大魔王だって知ったら妖精たちは驚くのではないかしら」
「フ〇ック! それは伏せておいてくれ。考えがあるんだ」
ファンクにとっては因縁の村。
ラルク達は一路、次の目的地である妖精の村に向った。
* * *
妖精の森は、外部からの接触をシャット・アウトするために、特別な手順でないと辿り着けない場所にあった。
森を抜け、河を下り、洞窟を通って、幾つかの石碑で転送されて、ようやく目的地に到着する。
そこは妖精たちの楽園であり、本拠地でもあった。
花と緑と水で満たされた空間。
花たちは年がら年中、狂い咲きの状態を維持しているらしく、カラフルで幻想的だ。
露や蜜をふんだんに含んだ植物は、絶えず甘い香りを周囲に供給し、至る所で噴水や滝が涼しげな音を立てている。
穏やかで心地良い風。管楽器のような自然の音色。明るく清潔な空気。
チキとピピカは、あまりの美しさに目を奪われっぱなしだ。
「凄いですわ! 本当に天国に来たみたい!」
「キレイすぎて落ち着かないでしゅ」
ファンクを先頭にラルク達は、妖精たちの楽園に足を踏み入れる。
少し進むと、前方の神殿のような場所に笑い声が集まっているのに気づく。
ギルバートが目を細める。
「ああ、あの辺りに妖精が集まってるみたいですね。宴会でもしてるんでしょうか?」
妖精たちは随分と盛り上がっているようだ。
『ウエェエイ!』とか『ギャハハハ!』とか、賑やかだ。
よく見ると、酒を飲んでいるらしい。
音楽に合わせて、ごきげんに踊る者もいれば、イチャコラするカップルも少なくない。
皆、アゲアゲで、いわゆる『パーティ・ピープル』という人種のようだ。
ざっと見て50体以上は集まっている。
神殿の広場は右も左も妖精だらけだ。
ラルク達の存在に気付いた何体かの妖精が、なんで人間が居るんだろうという表情を見せた。
そのうちの一体が、ファンクの姿を見て不機嫌になる。
「おい! ブサイク!」
それはファンクに向けられた言葉だった。
天然パーマの妖精は、続けて凄んでみせる。
「二度と顔を見せるなと言ったはずだよな?」
天然パーマの隣で酒瓶をラッパ飲みしていた妖精が怒鳴る。
「追放された奴がなんでここに居る!? 消えろ!」
その騒ぎで続々と妖精たちが集まってくる。
「ブサイクなファンクじゃないか! なんで戻ってきたんだ!」
「やーい! 妖精界1のトンマ!」
「ブサイク界のブサイク! お前が居ると妖精界の顔面偏差値が下がってしまうんだよ!」
陽キャラの妖精たちは口々にファンクを馬鹿にする。
見かねたラルクが一言いってやろうと前に出ようとするのをファンクが押し留める。
「ファ〇ク! お前等、大魔王から命令されてるよな? なんで、ここでさぼってる?」
ファンクの言葉を妖精たちはゲラゲラ笑い飛ばす。
「は? バカか? 誰がそんなクソみたいな命令をきくか! ボケ!」
「誰があんなくだらない仕事なんかするかよ! レッツ・パーティだぜ!」
「フ〇ック! お前等が仕事をさぼると人間界に悪影響が出てしまうだろうが!」
「ハハッ! 人間? あんな下等生物、放っておけばいいし」
「なんで俺たち妖精が人間みたいなクソ共のために働く必要がある?」
「ファッ〇! それで酒池肉林、やりたい放題か。良いご身分だな」
ファンクの冷たい視線に対して、妖精がうそぶく。
「あったりまえだろ! 妖精だぜ? 妖精! 我々は神に愛されし存在なの。高尚な生き物なの。人間みたいな出来損ないのカスと一緒にしないで」
ラルクがチキに耳打ちする。
「なんか腹たってくるな」
「そうですわね。妖精のイメージが崩れますわ」
「ファッ〇! お前等、大魔王の言うことを守らないでいいのか?」
「大魔王なんてクソ! どっかで野垂れ死んでんじゃね?」
「あいつ、大嫌い。マジで死んでほしい!」
「クッソ無能なくせに偉そうだし、臭いし、居なくなって清々したわ!」
言いたい放題の妖精たち。
ファンクが苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
「ファ〇ク……お前等、言い残すことはそれだけか?」
「おいおい、ブサイクが何か言ってるよ!」
「聞こえないんですけどぉ? ビビリのクソ野郎が!」
そこでファンクが、無言で一番近くに居た妖精の頭を鷲掴みにした。
心なしかファンクの手が大きくなっている。
手のひらにすっぽり頭が収まるということは、普段の倍、いや四倍はある。
脳天を掴まれた妖精が足をばたつかせる。
「いでででで……離せっ! 離さないとブツぞ!」
しかし、ファンクは無表情に相手の顔を眺める。
『メキメキメキ』とヤバい音がする。
頭を締め付けられて「あ、ああっ! ぐげっ!」と、妖精が失神&『ジョジョジョジョジョー』と盛大に失禁した。
それをポイ捨てするファンク。
妖精たちに動揺が広がる。
そこで、イケメンで筋肉質な妖精がパタパタとファンクの前に飛んでくる。
「おい! ブサイク! お前、こんなことして、タダで済むと思ってんのか?」
ファンクはシラケた表情で「ファ〇ク」とだけ返す。
イケメン・マッチョが激高する。
「なんだ!? その態度は? ここでは、俺が絶対的リーダーなんだ! ぶっ殺すぞ!」
「フ〇ック……お前がリーダー? 笑わせんな、カス」
そう言ってファンクは、懐から瓶を取り出す。
ギルバートがそれを見て何かに気付く。
「あれ? あの黒い液体はまさか……」
ファンクはコルクを抜いて、中身の匂いを嗅ぐ。
「ファッ、臭ぇ!」
ファンクが顔を歪めた次の瞬間、『カッ!』と、閃光が広がった!




