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ズングリムックリ

 ラルクは、武器を出さずに手ぶらでダッシュした。

 そして、ズングリーとムックリーに接近すると、煽るように彼等の前で手を振って見せた。

「ほれ? どうした?」


 急接近されて面食らう兄弟。

「こ、この!」と、ズングリーが慌ててハンマーを掲げ、「ドスコーイ!」と、振り下ろす。


『バゴン!』

 ハンマー・ヘッドが地面にめり込む。

 当然、ラルクにはかすりもしない。


「ぶっ殺す!」と、ムックリーが強打者のようなスィングで斧を振る。

 

 ラルクは、ひょいとスウェイバックの要領でそれをかわす。


 空振りしたムックリーは「んあ!?」と、バランスを崩して片膝をつく。


 ラルクはムックリーの前に立つと、「隙だらけだぜ?」と、デコピンをお見舞いする。


「いだっ!?」と、ムックリーが額を押さえる。


 そこにズングリーのハンマー攻撃が迫って来る。

 が、ラルクは、すっと身を引いて、ヘッドの軌道から外れる。


 そして、2歩前に出て、ズングリーにもデコピンを喰らわせる。

「うぎっ!?」と、ズングリーも額に手をやって痛がる。


 しかし、ラルクは息ひとつ切らせていない。

「どうした? その程度か?」


 手も足も出ない兄弟の十メートル後ろでは、チキの兄貴が震えている。


 ラルクは兄のボンに向かって声を掛ける。

「仲間は選んだ方がいいぞ?」


 ボンは涙を浮かべながらガタガタ震えている。

 あれでは妹のチキとの当主争いに勝てそうにない。


 そこでズングリーが「うぉおおお!」と雄たけびをあげる。

「ちっくしょお! ぶっ殺してやるう!」

 怒り狂ったズングリーは、ハンマーをブンブン振り回す。


「死ねや! ぐおおらああ!」と、ムックリーも闇雲に斧を振り回す。


 ラルクが軽く首を竦めて「危ねえなあ」と、数歩下がる。

 そしてスキル発動!


 ラルクは何も持っていない右手を頭上に挙げて、2歩斜めに進んで振り下ろした。

 その動きをトレースしたズングリーがハンマーを振り下ろす。

 ちょうどそこにはムックリーの頭がある。


『バゴン!』

「ぐげっ!?」

 ムックリーの頭にハンマーが見事に命中した。


 ラルクの3秒テイム!

 ズングリーは強制的にラルクの動作を真似させられたのだ。


 唖然とするズングリー。頭を押さえて転げまわる弟。


 ブチ切れたズングリーが怒りをラルクにぶつける。

「ぶっ殺してやらぁ!」


 ラルクはもう一度スキルを発動する。

 今度は右手を自らの足に向かって振り下ろす動作だ。

 動きを真似させられるズングリーは自らの左足にハンマーを振り下ろしてしまう。


『ガゴッ!』

「ふぎぃ!」


 自らの足にハンマーを打ち下ろしまったズングリーが、弟の隣で、のた打ち回る。


 それを見下ろしながらラルクが降参を勧める。

「諦めろ。お前等じゃ相手にならん」


 涙を流しながらムックリーが首を振る。

「嫌だ! アッチョンブリ家を俺等の物にするんだ!」


 ズングリーも膝を押さえながらわめく。

「あとはチキを嫁にすれば、計画通りなのに!」


 それを聞いてチキが激怒した。

「はぁあああ!?」


 チキは黒ドレスの裾をたくし上げると、ツカツカと兄弟のところまで進み、強烈な前蹴りをズングリーの顔面に食らわせた!


「誰が嫁だって!?」


 チキは兄弟の顔面に『ガツガツ』と、何発も蹴りをお見舞いする。

 終いには火炎草を軽く口に含み、兄弟に火炎放射を浴びせた。


「ぐぎゃああ!」「げっぎぎぎ!」


 それは、致命傷ではないが、お仕置きとしては十分な痛みを兄弟に与えた。


 お嬢様であるチキのキレっぷりにファンクとギルバートはドン引きする。

「ファ〇ク! 火を吐く嫁とか嫌だよな……」

「そうですね……怖すぎです」


 暴れるだけ暴れたチキが、ハァハァと肩で息をしていると、ラルクが呆れたように言う。

「気が済んだか?」


「ま、まあね。こいつら、昔からキモかったし」

「兄の姿が見えないけど?」

「逃げたんでしょ。ホント、弱虫なんだから……」


 結局、祭壇に飾られていた家宝の皿とやらを手に入れて、ラルク達はダンジョンを出ることにした。


      *     *     *


 地上に戻ると、メイドや執事達の歓声があがった。

「チキさま! さすがです!」

「チキ様が跡継ぎで決定ですな!」


 皆、チキが勝ったことを歓迎しているようだ。

 兄の人望が無いのか、そのバックについていた兄弟が悪いのかは分からない。


 太ったチョビ髭の執事は動揺を隠せない。

「お、おめでとうございます。チキ様……」

 彼は顔を引きつらせながら心にも無いことを言った。

 そして、しきりに井戸の入り口に視線を向ける。


 そこで、ファンクが意地悪そうに教えてやる。

「バカ息子どもは、奥で失神してるぜ! 丸焦げになってな。フ〇ック!」


 チキが当主に向かって言う。

「お父様。今から私が当主、ということでよろしいのよね?」

「ああ。そうだ。たった今、お前は我がアッチョンブリ家の当主として認められた」


「そう。でしたら新当主として、最初のお仕事をさせて頂くわ」

 そう言ってチキは太ったチョビ髭の執事を指さす。


「あなたは解雇くびですことよ! 息子達を連れて、さっさと出て行って!」


 そこでまたメイド達の歓声と拍手が湧き起こる。

 どうやらチョビ髭の執事の親子は屋敷内でかなり嫌われていたらしい。


 ラルクがチキに言う。

「これで解決だな。これから大変だろうけど。まあ、達者で……む!?」


 ラルクの言葉は途中で封じ込められた。


 豪快に抱き着いてきたチキが、ラルクの唇を奪ったのだ。


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