勇者パーティ再結成
グランのパーティを再結成するにあたって、急遽、召集された面々の反応は様々だった。
集合場所に現れたバルガードはブツブツ文句を言う。
「まったく不本意だ。どうして、こんなことに巻き込まれなきゃならんのだ?」
バルガードは経歴を偽って大学の講師に採用されている弱みに加え、オムツ姿でラルクの尻に顔を近づけている写真をネタに強制召集されてしまった。
なので、不満があるのだろう。
少し遅れて来たティナは不貞腐れながらも一発逆転を狙っている。
「良い機会だわ。ワンチャン、魔王を倒して女優に返り咲くから!」
ティナは『ざまあ』された時に本性がバレて舞台女優をクビになってしまった。
だが、現在は性悪キャラのタレントとして再起を図っている最中だという。
リッツは斧を掲げて熱く宣言する。
「失うものは何にもねえ! やってやるよ! 猛特訓の成果を見せてやるよ!」
闘志満々のリッツを見ながらピピカがクスクス笑う。
「ブタゴリラでしゅ」
「んだと!? ゴルァ!」
リッツも『ざまあ』されたことで里長の地位を奪われ、肩身の狭い立場に追いやられてしまったが、激しい訓練に打ち込むことでリベンジを誓っていたらしい。
バルガードは自信を見せる。
「フン。自分も伊達に大学に居たわけではない。密かに図書館で黒魔法の極意を研究していた。それに、ラルクごときに、やられっぱなしではプライドが許さん」
そう言って決め顔で襟を正すバルガードを見てピピカが呟く。
「オムチュ野郎のくせに……」
「だぁああ! それを言うな!」
ティナは高価なローブに豪華なロッドを携えて笑みを浮かべる。
「足引っ張らないでよね。私は相当、強くなったんだから。なんせ、今度の装備は最強よ。前とは比べ物にならないわ」
そう自慢するティナにラルクが尋ねる。
「お前、そんな強力な装備、どこで手に入れたんだ?」
「フフ。有名人ともなればパトロンが沢山つくの。伝説級の装備なんて選び放題よ」
またしてもピピカが呟く。
「クソビッチでしゅ」
「な、なによ! 美人なんだから仕方ないでしょ! 女の特権よ!」
リッツは斧の刃を愛おしそうに眺めながらうそぶく。
「へっ! 伝説級なら負けてないさ。この斧はドワーフの秘宝だかんね。まあ、勝手に持ち出してきたんだけど」
それをピピカが聞き逃さない。
「盗人ゴリラはバナナでも盗んでればいいでしゅよ」
「んだと! このチビ、さっきから何なんだ! ぶっ殺されてえのか?」
そこでチキが呆れたように言う。
「止めておいた方がよろしいことですわよ。この子の能力で大事な斧がドングリに変えられてしまいますわよ?」
「げっ! まじかよ!」
リッツは慌てて斧を背中に隠す。
バルガードがニヤニヤしながらリッツに尋ねる。
「リッツ。お前もラルクに『ざまあ』されて、やり返したいんだろう?」
「まあね! うちらの方が上だってことを思い知らせてやるよ!」
バルガードは満足そうに頷く。
「ふむ。異論はない。だが、肝心の勇者殿の姿が見えないのはどういうことだ?」
その疑問にはラルクが答える。
「ああ、グランは特訓中だ。アルコールを抜くついでに、モンスターの巣に放り込んである」
ティナが「は?」と、顔を顰める。
「今頃、特訓して何とかなるものなの?」
「普通の特訓じゃない。ファンクとギルバートがついてる。ファンクは手頃なモンスターを見つけて、グランに効率よくぶつけて経験を積ませている」
ちょうど、その時、グラン達が戻ってきた。
グランの装備は、新品を与えたはずなのにボロボロになっていた。
「フ〇ック! こいつ、随分とマシになりやがったぜ!」
ファンクの報告にグランが不平を口にする。
「無茶苦茶だぜ、こいつら! おかげで28回も死にかけた」
「ファ〇ク! 大げさ言うな! せいぜい17回だろ。ホントに死にかけたのは」
グランはギルバートの方をチラ見してから訴える。
「酷いんだぜ? 疲れてヘロヘロになっても、バーサクで無理やり戦わされんだ。いくらヒールの魔法を吸わされ続けたって、命がいくつあっても足りねえよ」
チキがゲンナリする。
「嫌ですわね。ずっとガスを吸い続けていたなんて……」
「臭そうでしゅ」
それを聞いてギルバートは不満顔だ。
「僕だって大変でしたよ。ずっとガスを出しっぱなしなんですよ? 穴が休まる暇もない!」
「ファッ〇! 時々、違う匂いも漏れてたがな!」
「ちょっ、それぐらいは許してくださいよぅ!」
自信を取り戻したグランが胸を張る。
「けど、おかげでパワーアップしたのは間違いねえ! 今なら魔王を倒せる気がする!」
ラルクは余裕の笑みを浮かべる。
「ほう。そいつは楽しみだな。そうでないと張り合いがない」
見違えたように生き生きとするグランが含み笑いで返す。
「フン。言ってくれるな。後悔するなよ? 俺は『ざまあ』なんかされねえぞ!」
そんなグランにバルガード達が寄り添う。
「我々は以前より戦力を大幅にアップした。目には目を、『ざまあ』には『ざまあ返し』を!」
リッツは「倍返しだ!」と、ラルクを睨む。
ティナは挑戦的な顔つきで宣戦布告する。
「もう一度、絶望の淵に立たせてあげるわ!」
チキがラルクに耳打ちする。
「よろしいんですの? せっかく『ざまあ』を達成しましたのに」
「まあ、いいんじゃないか」と、ラルクは気にしない。
ギルバートも納得していない様子だ。
「敵に塩を送るなんて……ガスを送るなら分かりますけど」
「フ〇ック! もう一回、『ざまあ』すりゃ、ラルクの気も晴れるだろうよ? 要は負けなきゃいいんだ!」
「ファンクの言う通りだ。一度、希望を持たせておいて叩きのめす。それも因縁のあの場所で」
ラルクの目は既に魔王の城に向けられていた。
グランは不敵な笑みを浮かべて煽り返す。
「そうはいかねえ。俺達は先に魔王を倒す! それでもって、お前を追放したことが間違いじゃなかったってことを証明してみせる!」
ティナ、リッツ、バルガードもグランの言葉に強く頷く。
しかし、ラルクは冷静だ。
「だったら、お前等が間違いだったってことを思い知らせてやる。まとめて『ざまあ』してやるよ」
ラルクは密かに闘志を燃やす。
落ちぶれたグランを奮い立たせ、あの時のパーティを再結成させる。
そして、あの追放劇を完全再現したところで、逆転劇を見せつける。
それこそが、真の『ざまあ』を成し遂げるための狙いだった。
各々の思惑が交錯する中、一行は、魔王の城に向かって出発する。




