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お漏らし君の処遇

 漏らした罪で死刑。


 女エルフ達はギルバートを連行して公開処刑しようとしている。


 ギルバートが涙ながらに訴える。

「いやだ! いやだ! 処刑なんて嫌っ! 暴力反対!」


 彼の両腕は毛むくじゃらの女エルフにしっかり抱えられている。


 ファンクが呆れる。

「フ〇ック! ちょっとチビったぐらいで死刑かよ?」


 ラルクも困ったような顔で言う。

「悪いのはギルバートだけど、死刑はやりすぎだな」


 毛むくじゃらの女エルフがそれを一喝する。

「死刑になって当然! 聖なる泉を二度と使えないようにけがしたのは重罪よ!」


 そこで、ラルクが落ち着いた口調で返す。

「けど、連れていかれるのは困る。無理に連れて行くというなら……」


「死人がでるでしゅよ?」

 

 ピピカの言葉に女エルフ達がビクッと身を固くした。


 ギルバートは鼻水を長くぶら下げながら感激する。

「ぴ、ピピカさんっ! 僕のために、やっつけてくれるんですね!」


 ピピカは冷静に言葉を続ける。

「別に死刑でもいいでしゅけど、臭すぎて死人が出るでしゅよ?」


「え? ピピカ……さん?」

 ピピカは別に女エルフを脅したわけではないと理解してギルバートが茫然とする。


 そこでファンクのフォローが入る。

「フ〇ック! た、確かに処刑になんかしたらガスも『ミ』も垂れ流しで大惨事になるな!」


 ラルクも頷く。

「ああ。酷い匂いで広範囲に渡ってエルフの聖地は壊滅するだろう」


 女エルフは動揺する。

「ば、ばかな! そんな脅しに屈するものか!」


 ラルクは問う。

「そうかな? お前ら森の中で気絶しただろ? 俺達を追い払おうとしたときに」

 

「あっ! あれは……うっ」

 女エルフは、空中散布の匂いを思い出して吐き気を催したようだ。


 そこでチキが提案する。

「まあ、みなさん落ち着いてくださいな。解決方法ならありますことよ?」


 チキは落ち着いた様子で女エルフに尋ねる。

「聖なる泉は、絶えず水が湧き出ているのですわね?」

「そ、そうだけど?」


「分かりましたわ。それでは、泉の近くに穴を掘りなさい。できるだけ深く、大きな穴を」

 チキは、まるで教師のような口調でそう言った。


 女エルフがいぶかる。

「何を言ってるの? 穴なんか掘って、どうなるものでもないでしょ?」


「いいえ。泉の水を穴に流し込んで、いったん空っぽにするんですの。それで泉を洗浄して、新しい湧き水が貯まるのを待てば良いのですわ」


 ラルクがポンと手を打つ。

「なるほど。それは良い手だ。是非、そうするといい」


 女エルフが困惑する。

「そ、そんなことで、聖なる泉が生き返るの? 穢されてしまったのでは?」


「ファック! ただの『ミ』だ。それが除去されれば元に戻る!」


 女エルフは「ミ……ミ?」と、首を傾げる。

「ンコでしゅ」


 それでも女エルフは理解できない。

「え? ンコ?」


 なのでラルクが補足する。

「そうだ。ウンコ。ただの排泄物だ。それがちょっと、はみ出ただけだ」


「そ、そんな馬鹿な!? ええっ? それが原因で、あんな被害が?」

「ええ。信じられないかもしれませんが、事実ですわ。このお漏らし君の『ミ』は、特別、強烈なだけですの」


「と、いうことは?」

「ええ。水を入れ替えれば泉は復活しますわ」


 その言葉を聞いて女エルフ達は「やったぁ!」と、小躍りする。

 飛び上がるたびに『ふぁさっ』と、毛も揺れる。

 喜びあう女エルフ達は、さっそく仲間に知らせると言い残して去っていった。


 ギルバートがチキに縋りつく。

「あっ、あっ、ありがとうチキさん! あなたは命の恩人です!」


 チキが呆れ顔で小さく息を吐く。

「ふぅ。まったく、手間がかかりますこと」


 ギルバートは涙を流しながら言う。

「チキさんは少し頭のおかしい人だと思ってたけど、頭が良いんですねっ!」


 ギルバートの余計な言葉に、チキの蹴りが『バキッ!』と、炸裂する。

「はがぁああ!」と、地面を転げまわるギルバート。


 しかし、死刑を免れたことで一件落着。一行は港へと向かう。


     *     *     *


 サンタンの港は、大小さまざまな船が停泊する賑やかな港だった。


 それらの船は、海に向かって右手は旅行客用、真ん中が漁業用、左が貨物用という分類のようだ。


 ラルク達は、手続きを取らずにハミマに入国していたので、出国手続きはできない。

「フ〇ック! 密航するっきゃねぇな」

「そうだな。適当な船を見つけて乗り込もう」


 ギルバートが左方向を指さす。

「でしたら貨物船ですね。幾つか出航間際のものがありますよ」


「いやですわね。貨物船だなんて」

 チキはそう言って顔を顰めるが、ラルクは取り合わない。

「贅沢いうな。行くぞ」

 

 出航間際の貨物船を選んで乗り込むことにする。

「ピピカ、あの船に移動させてくれ」


 ラルクの指示でピピカが船を見上げる。

「無理でしゅよ。見えないでしゅ」


「ああ、そっか。目視できないと交換できないんだったな」

 ピピカの強制交換は、交換する対象を目で確認しなければならない。


 そこで、いったん近くの建物に上がって、甲板が見える所から移動する。


 貨物船は全長20メートルほどの平べったい船体で、積み荷の木箱が甲板に山盛りになっていた。

 難なく貨物船に乗り込んだ一行は、隠れる場所を求めて甲板上をチェックする。


 海面を覗き込んでいたチキが首を傾げる。

「あら。喫水線きっすいせんが随分と深いですわ」


 ラルクが尋ねる。

「キッスイセンってなんだ?」

「浮かんでいる船を真横から見た時の水面のラインですわ。それが甲板に近いほど船が沈んでいるということですわ」


「へえ。てことは、この船、積み荷が重すぎるってことか?」

「そういうことになりますわね」


 ギルバートが余計なことを口走る。

「チキさんのせいじゃないですよ。それぐらいの体重ならセーフです」

 ギルバートは冗談のつもりで言ったようだが、チキは激怒した。


 チキがギルバートをボコボコにしている間、ファンクとラルクが積み荷を眺める。


「フ〇ック! ホントに積み込み過ぎか? 見た目は他の船と変わんねえけどな」

「箱の中身が重いんじゃないか? 何を運んでるんだろ」


 何気なくラルクがシートをめくって箱の蓋を持ち上げてみる。

「ん? こ、これは!?」

「ファ〇ク! こりゃ、大砲じゃねえか?」


 棺桶を二回りほど大きくした木箱には大砲が収められていた。

 入っていたのは分解された砲身だけだったが、特徴的な形ですぐ分かった。


「ファッキン……これってまさか」

「密輸? もしくは秘密裏にラーソンに持ち込むためか?」

 そう言ってラルクは他の船にも疑いの目を向ける。


「フ〇ック! そういえばやけに人の出入りが少ないな?」

「ああ。一般の人を立ち入らせないようにしてるのかもな」


 武器をこっそり運ぼうとしているのだとしたら、ガルバードが言っていたハミマ軍の動きに関係している可能性が高い。

 

「ファ〇ク! ちょっくら、探りを入れてみるぜ!」

 そう言ってファンクは、ハエに変身して船内に潜入することにした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これで美しい女たちの里の復活じゃ(*ノ゜Д゜)八(*゜Д゜*)八(゜Д゜*)ノィェーィ! ピピカ→ギルバード→チキ→ギルバードがお約束になってきましたね。 しかし、武器の密輸とはキナ臭い…
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