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連係プレー

 トカゲ型モンスターは、身体は人間で頭が爬虫類の複合系だった。

 槍を手にしているが、知性は低い。


「ファ〇ク! リザードランだな。人型トカゲで火に弱い」

 なぜかファンクはモンスターに詳しい。


 そこでラルクが迷わず前に出る。

 そのまま敵に向かってダッシュして、距離を詰める。


 トカゲは槍を構えて攻撃態勢に入るが、ラルクの足は止まらない。

『シュッ!』と、突き出された槍を避けて、唯一の武器である小刀でトカゲに突っかける。


「ギッ!」と、トカゲが口から何かを放出する。


 その軌道を見切ってラルクが「おっと」と、ヒラリと身をかわす。

 トカゲが吐き出したのは長い舌で、それは『ジャギッ!』と、地面を抉ると、直ぐに引っ込んで口に収まった。


 ラルクは、なおもトカゲに接近して、小刀で斬りつける。

 深く入らなくてもいい。ジャブのような軽い踏み込みだ。


 2体のトカゲはラルクの動きに翻弄されている。


 そこでラルクがギルバートに指示を出す。

「ギルバート! 黄色い屁を!」


 ラルクはトカゲを引き付けて、ギルバートの近くまで誘導する。


 ギルバートが素早く放屁の体勢をとり『プゥゥ』と、黄色い屁を放つ!


 屁を浴びたトカゲ達が「ギギッ!」「ギュギッ!」と、痺れ状態に陥る。

 ラルクの「今だ!」の合図で、チキが口に含んでいた炎を「ボエェェ!」と吐き出す。


『ボボボボシュ!』と、火炎がトカゲ達を直撃!

 あっという間に2体とも消し炭にしてしまう。


「フ〇ック! 完璧だぜぇ!」


 初めての連係にしては上出来だ。

 3人の力を合わせてモンスターを一蹴した。


 チキが感心する。

「あなた、テイマーなのに前線にお立ちになるのね?」


「え? いつものことだけど?」

 ラルクは小刀を仕舞いながら言う。


「嘘でしょ? 普通、前衛ぜんえいは防御を固めたキャラの役目じゃなくって?」

「いや。前に居たパーティでは、前衛は身軽なテイマーの役目だって勇者が……」


「それって騙されているのでは!?」

「そうなのか? モンスターの特徴とか動きとか、把握して仲間に伝えるのがテイマーの能力だって黒魔導士も言ってたし……」


「よく死ななかったですわね……」

「死ぬ訳がない。だって一度も食らったことないし」


「嘘でしょ!? 危なくなくって?」

「まあ、いざという時は3秒テイムで回避できるから……」


 ファンクがニヤニヤしながら口を挟む。

「そのせいで便利使いされてたんだろ。絶対に攻撃を喰らわないから」


 その時、ギルバートが敵に気付いた。

「毒針コウモリです! 左から来ます!」


 見ると左方向からバタバタとコウモリが数体、迫って来る。

「フ〇ック! 雷に弱いが、すばしっこいぜ!」


 慌てることなくギルバートが優雅に尻を突き出して『ププピッ!』と、放屁。

 オレンジ色の屁が、ふわーっと広がった。


 それを受けてコウモリ達の動きが乱雑になる。

 飛行隊列が乱れ、壁や仲間に激突するものが続出。

 これは『混乱の屁』の効果だ。


 チキが「任せて!」と、言いながら雷草かみなりそうを口に突っ込む。

「しょっぱ!」と、しかめ面を見せながらチキがそれを咀嚼そしゃくする。

 そして、かぱっ、と口を開いて毒針コウモリに向かって盛大に吐く。


「ボエェェ!」『バチバチバチッ!』

 チキの口から広範囲に雷が放出される。


 混乱中の毒針コウモリは、無防備に雷魔法を喰らって全滅した。


 ギルバートがチキを絶賛する。

「凄いです! 強力魔法じゃないですか!」


 チキは草の残りをペッと吐き出しながら「雷草は、しょっぱいんですの」と、首を竦める。


 ラルクが先に進むよう促して、一行はダンジョンの奥に向かう。

 途中、散発的にモンスターが出現するが、特に苦戦することはなかった。

 

 先頭に立つラルクの動きは軽快で、攻撃を受ける恐れが無い分、大胆に攻め込める。

 ギルバートは効果的に屁を出し続ける。

 チキのゲロ魔法はモンスターに致命傷を負わせた。

 ファンクの知識も役に立つ。


 上機嫌でファンクが言う。

「ケケケ、面白いパーティじゃねえか! 攻撃が『ゲロ』と『おもらし』なんてYO!」


 そこでギルバートが赤面する。

「お、お漏らしじゃないですよ……失礼な」


 チキも手ごたえを感じているようだ。

「思ったよりイケてますわね。この調子で一気に行きましょ!」


 途中、分かれ道が幾つか存在したが、ファンクの指示に従って選択すれば、迷うことは無かった。

 完全に『ヤマ勘』だが、ファンクの勘はなぜか正確だ。

 これもファンクの特技といって良い。


 先頭を歩くラルクが、ひらけた場所に足を踏み入れた。

「ここが目的の場所じゃないかな?」


 小さな明かりに囲まれたスペースの先に祭壇のようなものが見える。

「間違いないわ! この場所、絵で見たことがありますわ!」


 ギルバートが周囲を確認して言う。

「兄上はまだ到着していないようですね」


「ファ〇ク! 鈍そうな連中だからな! どこかで迷ってんじゃねえか? ゲハハハ!」


 ファンクの笑い声が響く中、背後に何者かが現れた。


「誰が鈍いって?」

「迷ってなんかねえよ!」


 声の主はズングリーとムックリー。あのチョビ髭の執事の息子だ。

 どちらが兄でどちらが弟なのかは見分けがつかない。


「ごくろうさん! お前らの後をつけてきて正解だぜ」

「おいしいねぇ。あとはお前らをブッ飛ばせばいいんだからよう」


 巨漢の兄弟の数歩後ろでは、チキの兄であるボンがオドオドしている。

 どうやら主導権はこの兄弟に握られているようだ。


 そこでラルクが「ぷっ」と噴き出す。


 それを見てイキる兄弟。

「て、てめえ! なに笑ってやがる?」

「ぶっ殺すぞ! ザコが!」


 ラルクはニヤリと笑って挑発する。

「お好きにどうぞ」


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