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グランの呪い

 バルガードの告白にラルクは衝撃を受けた。


 訓練所時代から行動を共にしていたグランが、自分を追放しただけでなく呪いまでかけていたとは……。


 ラルクが声を絞り出す。

「呪い……だと? 嘘だ……あのグランが俺に呪いを?」


 バルガードが指を組みながら言う。

「正確には封印術だ。ラルク。お前、左の太ももの裏に入れ墨があるだろう?」


「な!? 入れ墨だと? そんなものは……」

「ありますわよ」と、黙って聞いていたチキが答える。


「え!? チキ、なんでそんなこと知ってるんだ?」

「そ、それはダーリンが眠ってらっしゃる時に、お身体をなめなめして……」


「眠り草でか?」

 ラルクに指摘されてチキが『ゲフン、ゲフン』と、誤魔化そうとする。


 バルガードが頷く。

「やはりそうか。グランが言っていたことは本当だったようだな」


「バルガード! グランは他に何か言ってなかったか?」


「成長を抑制する封印だと聞いている。どんなに経験を積もうと能力がレベルアップしないようにき止めるものだ」


「酷いですわ!」と、チキがいきどおる。 

 チキが大きな声を出したので部屋の隅っこでギルバートとピピカがビクッとする。


 ソファのひじ掛け部分で胡坐あぐらをかいていたファンクが鼻くそをほじりながら口を開く。

「フ〇ック! 聞いたことがあるな。普通、能力は使えば使うほど磨かれる。それを抑え込む封印術だ」


 そこでラルクが突然、ズボンを脱ぐ。

「バルガード! 見てくれ!」


 ローテーブルを挟んでバルガードが「えっ?」と、顔を顰める。

 ラルクは太もも裏の入れ墨をよく見るよう懇願する。

「どうだ? どんな具合だ? 良く見てくれ!」


 下半身をあらわに尻を突き出すラルクとそれを見るオムツ男の図。


 そこにちょうど女学生がお茶を持って入ってきた。

「あっ!」と、小さく叫んでお盆を落とす女学生。


 バルガードが「ちょ、これは違うんだ!」と、余計な弁解をする。


「失礼しましたっ!」と、女学生が全速でUターンするのを見送る面々……。


 バルガードがラルクを責める。

「お前のせいで誤解されてしまったぞ! 学内で変な噂が広まったら、どうしてくれる?」


 お尻を突き出したままラルクが反論する。

「そういうお前こそ、上ぐらい着たらどうなんだ!」


 それに対してオムツ一丁のバルガードは「服が濡れるの嫌なんだよ」と、口を尖らせる。

 そしてデスクから即席カメラ(ポラロイドカメラ)を取り出して写真を撮る。

「ほれ。これでお前も見れるだろ」


 プリントアウトされた即席カメラの写真。

 ラルクの入れ墨を接写した写真を前にラルクが考え込む。


 入れ墨の大きさは金貨一枚分。

 見たことのない文字が円の中に小さく描かれている。


 ラルクが、ぽつりと呟く。

「これって消せないのかな?」

「フ〇ック。どうかな。調べてみねえと」


 バルガードもお手上げだ。

「見たことも無い文字だ。呪術なんだろうが……こればかりは、かけた本人に聞かない限り、手のほどこしようがない」


 そこでラルクが勢いよく立ち上がる。

「よし! グランを捕まえて問い詰めるぞ!」

「ファ〇ク! で、あてはあんのか?」


 ラルクがバルガードに顔を向ける。

「おい! グランの居場所は?」


「わ、分からない。ラーソンに戻るとは聞いたが……」

「ラーソンか。よし、戻るぞ!」


「え? 今からですの?」

「ああ。いま直ぐだ!」


 ギルバートが不満を口にする。

「ええ~ せっかくハミマまで来たのに。もっと観光しませんか?」


「フ〇ック! 俺はどっちでもいいぜ」

「私はダーリンに従いますわ」


 ギルバートはピピカに同意を求めるような視線を送る。

 だが、ピピカは興味なさそうに言う。

「ご飯があればどこでもいいでしゅ」


 ラルクが力強く頷く。

「決まりだな。早速、出発だ」


 多数決では仕方が無い。

 結局、ラルク達は、ラーソン王国に戻ることにした。


 その時、バルガードが「ちょっと待て」と、ラルクを呼び止めた。


「なんだ?」と、ラルクが振り返るとバルガードは忠告した。

「国境を越えるなら気を付けろ。どうも軍の動きがキナ臭い」


「軍だと? まさか……」

「軍が出払っているというのは本当だ。それに俺の授業にも若い兵士が送り込まれている。軍の上層からの依頼でな。『英雄の素晴らしさ』を叩き込んでくれとな」


「英雄か……フン」と、ラルクは鼻で笑う。


 だが、ガルバードは真剣だ。

「バカバカしいと思うかもしれんが、軍は兵士の戦意を高めようとしているように感じる」


 それを聞いてギルバートが不安を口にする。

「そういえば、ハミマ軍はテフラ峠の国境を越えて攻撃してきましたよね? 戦争の可能性はゼロではないかもしれませんよ?」


 それを聞いてバルガードが驚く。

「国境を越えた? そんな報道は無かったが?」


 ラルクが首を振る。

「いや。ギルバートの言ってることは本当だ。現に俺達は戦闘に巻き込まれた」


 バルガードは顎に手の甲をあてて唸る。

「ううむ。それが事実だとしたら、やはり、あの噂は……」


「フ〇ック? 何か思い当る節でもあんのか?」

「い、いや。気にしないでくれ。単なる噂だ」


「なんだよ。言ってみろ」

 ラルクに促されてバルガードが言葉を選びながら答える。

「ハミマ軍の動きが活性化しているのは、魔王のせいだと……」


「ファッキン・魔王だって!?」

「バルガード。お前、本気で信じてるのか?」


「もちろん、噂話に過ぎないと考えている。だが……あり得なくもない」


「まあ! その魔王というのはダーリン達が倒そうとしていた相手ですの?」


 バルガードは首を振る。

「いや、違う。我々が倒そうとして失敗したのはラーソン南部に住む魔王だ。ここからは遠い」


 ギルバートが青ざめる。

「なにそれ、怖いですぅ。魔王が軍隊に味方するなんて!」


「フ〇ック! 味方かどうかは分からんぞ? 単に軍をけしかけてるだけかもしれねえ」


 ラルクが腕組みしながら険しい顔をみせる。

「ファンクの言う通りだ。魔王が一国の軍隊に接触するなんてロクなもんじゃない。まあ、噂で済めば良い話だがな。それよかグランだ。奴をとっつかまえる!」


 バルガードの話は頭の片隅に置いておくが、今のラルクにはグランを捜すことの方が先決だった。


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