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襲撃! ドワーフの里

 女エルフの案内でラルク達はドワーフの里に到着した。


 ドワーフの里は大きな窪地にあった。

 まるで森の一部が大規模に陥没したような地形だ。


 集落は木々と一体化していて、里の敷地内だけで数十本の大木が枝を広げている。

 これがあるから上空からは見つけられないのだろう。


 夜の集落を見下ろしながら女エルフの説明を受ける。

「左手を見て……あの柵で囲ってある所が聖なる泉よ」

「あまり大きくはないな。で、見張りは……2人だけのようだな」


 集落の真ん中には大きな石像がある。

 それは盃を掲げたドワーフの像だ。

 盃は噴水になっていて、そこから水があふれて像の足元に水が溜まっている。


 噴水の周りには屋台が並んでいて、ドワーフ達があちこちで宴会を楽しんでいる。


 ラルクが顔を顰める。

「バカみたいにデカい像だな。にしても、趣味が悪い」


 女エルフが苦々しく言う。

「初代の里長らしいわ。ここを占領して里を創った伝説のドワーフなんですって」


 右手には店や住居が集中している。

 さらにその奥には、窪地の段差を利用した建造物があった。


 里の全貌を確認してラルクが頷く。

「なるほど、あっちがメインになるんだな。じゃあ、左から攻めよう」


 ラルクは気軽にそんなことを言うが、女エルフは気が気でならない。

「しっ! 声が大きいわよ。見つかったらどうするの? まずは敵の注意を逸らして……」


「いや。堂々と行くよ? てか、コソコソ潜入とか面倒くさい」

「は? 馬鹿なの? 敵の本拠地なのよ?」


「分かってるさ。まあ、適当に援護たのむ」

 そう言い残してラルクは、さっさと窪地の段差を降りていく。


 チキやギルバートもそれに続く。

 女エルフは少し迷ってから、仲間のエルフに合図してラルク達に続く。


 まずは、聖なる泉を囲っている場所の奪還だ。


 ラルクは木槌を片手にテクテクと囲いに向かう。

 もちろん、宣言通り小細工なしの正面突破だ。


 見張りのドワーフがラルクに気付く。

「ん? なんだ? お前」


 ラルクは笑顔で見張りに近付くと、テイムを発動しながら「お疲れ様」と、お辞儀をする。


 ワンテンポ遅れて見張りが自らの意思とは無関係にお辞儀をトレースする。

 ガラ空きになった頭頂部にラルクが『ボコン!』と、木槌をお見舞いする。


「はがっ!?」と、見張りは、前のめりに倒れた。


 近くに居たもう一人の見張りが異変に気付く。

 小走りに近寄ってきて「な、なんだ!?」と、ラルクと気絶している仲間を見比べる。

 

 すかさずラルクが「お疲れさん」と、テイムを発動。

 「なんだお前」と、口にしながらも忠実にラルクの動きを真似るドワーフを『スコーン!』と、木槌でぶん殴る。

 こちらもあっさり気絶した。


 女エルフが驚愕する。

「え? な、なにをしたの?」


 ラルクは事も無げに答える。

「挨拶しただけさ」


 見張りを排除したところで、囲いを何とかしなければならない。

 中に出入りする扉には頑丈な錠前が据えられている。


「ピピカ、取っちゃいな」

「あい」


 錠前は『ポフン』と消え失せて、代わりにドングリが、ぽとりと落ちた。


 扉を押し開いて中を覗くと、小さな泉があった。

 小さなプールぐらいの泉には綺麗な水が溜まっている。


 女エルフが感激する。

「ああ! これよ! 夢にまで見た源泉! これだけの水をドワーフから買ったら、幾らお金があっても足りないわ!」


 囲いの高さは十メートルほど。頑丈そうな木をきつく縛り付けて組まれた柵になっている。


「ファック! これっぽっちの泉を囲うのに大げさだな!」

「それだけ貴重な水なんでしょうねぇ」と、ギルバートが感心する。


「チキ、これ燃やせるか?」

「そうですわね。火炎草とドラゴン草を混ぜ合わせれば溶岩が作れますわ」

「そっか。じゃ、頼む」


 ラルクの指示でチキが、ポシェットから取り出した草を口に含む。

 モシャモシャと良く噛んでから、ごっくん。

「うう……やっぱりドラゴン草は苦いですわね」


 チキは目を閉じて眉間に皺を寄せる。

 そしておもむろに「うぉえっぷ!」と、オレンジ色のゲロを柵にぶちまけた。


 ゲロは『ジュッ!』と、貼り付くと直ぐに発火して柵を炎で包み込んだ。


「おえっ!」「ぼえっ!」と、チキはゲロを吐いて回った。

 そして複数個所で同時に発火させ、柵を激しく燃やした。


 女エルフが慌てる。

「な、なにしてくれてんの!? あいつらに見つかるでしょうが!?」


 ラルクが不思議そうな顔で答える。

「え? その方が、手間が省けるじゃないか」


 その言葉の通り、激しく燃え上がる柵を見たドワーフ達が里の中心部からこちらに向かってきた。


「ファッキン! 来やがったぜ!」


 いつものようにラルクが先頭に立って「よし! 迎え撃て!」と、合図を出す。


 そこから大乱戦が始まった!


 飛び出してきたドワーフ達の主力は斧を持った戦士たちだ。

 ドワーフ特有の太い体型の男達が身体ごとぶつけてくる。

 得意の接近戦を仕掛けてくるつもりだ。


 しかし、パワー自慢のドワーフは、得てしてスピードに劣る。

 ましてや、大振りの斧攻撃がラルクに当たるはずもなく、テイムで動きをスカされ、挙句の果てには同士討ちしてしまう始末。


 チキは痺れさせるゲロで確実に敵を仕留めていく。

 ギルバートは襲い掛かってくる敵を水色のガスでバタバタと眠らせていく。


 明らかにラルク達が優勢なのを見て、女エルフ達も弓攻撃で参戦する。


 距離を取って弓を放つエルフ達にもドワーフ兵は襲い掛かるが、所々で「くさっ!」という怒号が聞こえる。


 茶色の屁の残り香をまとったエルフ兵との接近戦をドワーフ達は嫌がった。

 そこは狙い通りだ。

 エルフ達が攻勢をかける。


 聖なる泉を囲っていた柵は完全に燃え尽き、その辺りではギルバートが敵と交戦していた。

「あっ!?」という悲鳴と『ドポォン』と、水に何か落ちる音。

 敵に囲まれたギルバートが泉に突き落とされてしまったらしい。


「つ。冷たいっ! なんでこんなに冷たいんですかっ!」

 泉は意外と深いらしく、落ちたギルバートがジタバタする。


 それに気付いた女エルフが叫ぶ。

「ああっ! 汚いっ! 聖なる泉が汚れる!」


 ギルバートが溺れながら助けを呼ぶ。

「助けて! おなかが冷えるっ!」

 

「ファ〇ク! なんかヤバそうだぜ?」

「みたいだな。引き上げてやらないと」

 ファンクとラルクが急いで救出に向かう。


 泉では女エルフがギルバートを引っ張り上げようとしている。

「早く出なさいっ! 泉が穢れるでしょ! この屁こき野郎!」


 ギルバートが溺れながら訴える。

「屁どころか……おなかが冷えすぎて……何かが出ちゃう!」


 発狂した女エルフは人格が変わってしまう。

「なにぃ!? てめぇ! 漏らしたらブチ殺すぞ! 絶対に出すな!」


「む、無理です! ああ、おなかがゴロゴロと!」


 アップアップのギルバートを水から引き上げる為にラルクも手を貸す。

「ギルバート! 頑張れ! もう少しだ!」


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