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飛べ! ギルバート!

 怪鳥に乗って低空飛行を続けるラルク達に森からの攻撃が続く。


 矢による狙い撃ち。

 様々な方向から矢が飛んでくる。


「フ〇ック! 木の上から撃ってきやがる。ありゃエルフだな」

「エルフだって? ファンク、見えるのか?」


「あ? ファッキン・当たり前だろ。熱を見るんだよ。ほれ。あそことか、あの辺とか」

「見えねえよ! どんな目してるんだよ?」


「フ〇ック! 知るか! てか、エルフの奴らが出てくるとは想定外だぜ!」

「妙だな。なんでエルフがドワーフの里を守ってるんだ?」


 ドワーフとエルフは仲が良くないはずだ。


 その時、ファンクの頭を貫通している矢がラルクの目に入った。

「ところでファンク。それ、痛くないのか?」


「ファ〇ク? ああ、痛えな。抜いてくれ」

「分かった。う……結構、これ……ふん!」


『スポン!』

 ワインのコルクを抜いたような音がして、矢がファンクの頭から引き抜かれた。


「ファッキン! もうちょっと、やさしく抜けよフ〇ック!」

「すまない。けど、大した腕だな。あんな距離から命中させてくるとはな」


 ドワーフの隠れ里に接近しようにも、見えない敵からの矢による攻撃で近付くことが出来ない。


 止む無く、矢が飛んでこない場所を探してそこに着陸する。

 全員揃ったところで決断を求められる。


 ラルクが唸る。

「うーん。地上を進むか、空から強行突破するか……」


「フ〇ック! どっちも同じじゃねえか? 木の上から狙い撃ちされっぞ?」

「そうなんだよな。弓矢の狙撃か……分が悪いな」


 確かに遠距離攻撃の手段を持たないラルク達にとって、この状況は著しく不利だ。

 ピピカの強制交換でチキのゲロを飛ばすという手段もあることはあるが、敵は木に隠れている。


「ファ〇ク! おそらく、エルフの弓兵が集まってる辺りに里があるはずなんだがな」

「だろうな。けど、広範囲に展開する奴らを排除するのは大変だぞ……」


 そこでギルバートが立ち上がった。

「僕に考えがあります!」


「フ〇ック!? なんだ? お前の屁じゃ届かないだろ?」


 しかし、ギルバートは自信満々に言う。

「任せてください。僕とポポちゃんならできます!」


「ポポちゃん?」と、ラルクが首を傾げる。


「彼女のことですよ」と、ギルバートは怪鳥を撫でる。


「フ〇ック! いつの間に名前を? 似合わねえファッキン・ネームだな」


「本当の名前はポポカ・ラクーシャ・ミルヒです」

「長えよ! ファ〇ク!」


 チキが呆れ顔で呟く。

「なんだかんだ言って、受け入れてますのね。夫婦愛ですわ」

「ああ。前向きというか……なんだかな」と、ラルクも苦笑する。


 ギルバートは真顔で頷く。

「ええ。やってやりますよ。茶色のガスを使います」


「な!? ほ、本気か!?」と、ラルクが狼狽うろたえる。

「ファ、ファッキン! そいつはクレージーすぎんだろ!?」


 だが、ギルバートは珍しく堂々としている。

「皆さんは風上に避難してください。僕はポポちゃんにぶら下がって、空からガスを散布します」


 ラルクとファンクが顔を見合わせる。

 チキとピピカも半信半疑の様子。


「大丈夫です。僕が出したガスは、ポポちゃんの羽ばたきで地上に拡散されます。それで敵を戦闘不能にしてやりますよ!」


 ラルクがファンクに耳打ちする。

「死人が出るんじゃないかな……」

「ファ〇ク! 考えただけで吐き気を催すぜ」


 しかし、今のところ他に手段はないので、ギルバートの作戦に委ねることにする。


 ギルバートはファンクを通じてポポちゃんに何やら伝えて、気合を入れた。

「では、行って参ります!」


 ポポちゃんが飛び上がる。その足を掴んでぶら下がるギルバート。

 やる気満々のギルバートを見送る面々は微妙な顔つきだ。


「はっ!」

 ギルバートの合図でポポちゃんが飛び立つ。


 そして、早速、茶色い屁の空中散布を開始した。


 ギルバートは「はいぃいい!」と、格好良く攻撃をしているつもりのようだが、実際にはへっぴり腰でぶら下がりながら屁を垂れ流しているようにしか見えない。


 ポポちゃんとギルバートが通過したあと、木々に薄っすらと茶色い空気が降りかかる。


 その数秒後、「くさっ!」「くさ!」「うえっ!」と、複数個所で声が発せられ、木の上からボトボトと何かが落ちてきた。


「エルフですわ!」

「フ〇ック! やっぱりそうか!」

「ああ……臭すぎて失神したんだな」


 茶色の屁は激臭。地上に存在してはならない悪臭だ。

 空中散布で薄まっているとはいえ、その威力は生物を死滅させる恐れすらある。


 ガスを撒き散らしながら飛び回る攻撃は、しばらく続いた。


 チキが呆れるやら感心するやら複雑な顔つきで言う。

「それにしても良く続きますわね。どういうお腹をしてるのかしら」

 

 ラルクが大真面目に答える。

「奴は屁の天才だ。七色の屁を操るエリート……」


「ファ〇ク……あいつが屁をこいて回れば、一国を滅ぼすことができるぜ」

 そう言ってファンクは身震いした。


 元貴族の誇りを身にまとった青年が飛ぶ。

 必死に怪鳥の足にしがみついて。


 彼は飛ぶ。

 金髪をなびかせ、小刻みに屁を漏らしながら。


 飛べ! ギルバート!


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