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赤い屁

 ギルバートの赤い屁を吸い込んだ警備兵達がむせる。


 少し離れた位置でその様子を見守っていたチキがラルクに尋ねる。

「なんですの? 赤は初めて見ますわね」

「まあ、見てろ」


 やがて、赤い屁を吸った警備兵達に次々と異変が生じた。

 皆、一斉に血管が浮き出るほど顔が紅潮し、目が充血していく。

 さらに、唸り声をあげ、身体がビクンビクンと痙攣する。


「ど、どういうことですの? 赤のガスには何の効果が……」

「バーサクの状態異常だ。吸った者はバーサーカーみたいに暴れまわる」


「ひっ! 恐ろしいですわね!」

「敵味方に関係なく襲い掛かる。おまけに攻撃力もかなり底上げされる。攻撃の精度は下がるけど」


 あれほどビビリまくっていた警備兵達が、今や獣の群れのように、いきりたっている。

 

「もうすぐ黄色の効果が切れるな」

「あら! それは大変なのでは?」


 ラルク達と違ってギルバートは警備兵達の近くにいる。

 バーサーカーと化した警備兵達の注意がギルバートに集まる。


 そこでギルバートが坂の上を指さす。

「みなさぁーん。敵はあっちですよぉー!」


 次の瞬間、黄色の痺れ効果が切れた者から順に、警備兵達が走り出した。

「うぉぉぉおおお!」

 警備兵達は絶叫しながら我先われさきにと坂を上っていく。

 その先には敵の進軍が迫っている。


 両者がぶつかるには、さほど時間はかからなかった。

 

 ラルクが号令をかける。

「よし。俺達も続くぞ!」


 ラルクを先頭に一行は警備兵達を追って坂を駆け上がる。

 その先では怒号と悲鳴が入り混じり、壮絶な肉弾戦が繰り広げられていた。


 軍刀を振り回す警備兵達は恐れを知らず、敵の真ん中で暴れまわっている。

 その狂った戦いぶりに敵は面食らっている様子だ。


 そのうち、混戦から抜け出してきた敵兵が何人か坂を下ってきた。

 

 ラルクが怒鳴る。

「奴らを通すわけにはいかない! 行くぞ!」


 敵兵は軍刀を振り上げてラルク達に向かってくる。

 

 ラルクは小型の木槌を片手に先頭で突っ込んでいく。

 迷うことなく敵の懐に潜り込んで、得意の3秒テイム!


 ラルクの動きを1秒遅れでトレースする敵兵。

 この1秒のタイムラグがあれば、木槌で頭をぶん殴るには十分だ。


 テイムで動きを封じては『ポコン!』

 急接近してからの『ポコン!』

 敵から敵へと移動しながらリズミカルにポコン、ポコンと敵兵の出鼻をくじいていく。


 チキは雷のゲロを吐きながらラルクをサポートする。

 ラルクが『ポコン!』と殴って、チキが『ぼえっ』とゲロを吐きかける。

 これで敵兵は痺れて失神。完全に戦闘不能。

 

 ピピカは敵兵の武器を奪う役目だ。


 ラルクの死角から「死ね!」と、軍刀で斬りつけようとした敵兵が空振りして唖然とする。

 自らの手のひらを、じっと見る。

 そこには消えた軍刀の代わりにドングリが一つ。

「あれ?」と、戸惑っている間に『ポコン!』『ぼえっ』を喰らってノックアウト。


 ラルク達の攻撃をかいくぐった敵兵には、ギルバートが対処する。


 ギルバートは、小さく出した水色の屁を握って、相手の顔の前でパッと開く。

 睡眠ガスを吸った敵兵はヘナヘナと脱力して、その場で眠り込んでしまう。


 それは単なる『握りっ屁』なのだが、遠目には『へなちょこパンチ』で一撃KOしているように見える。


 そもそも、彼は自分の屁を吸っても平気なので、水色のガスを纏ったギルバートは、どんな格闘家よりも手強い。

 ギルバートに接近された敵は、ことごとく眠らされていく。


 順調に敵を痺れさせていたチキが躓いて「きゃっ」と、尻もちをついてしまう。

 そこに敵兵が軍刀を掲げて「このクソ女!」と、斬りかかる。


 それに気付いたラルクがテイムで攻撃をキャンセル。

 続いて、わざとガニ股になって股間を無防備にする。


 すかさずチキが「えいっ!」と、キン〇マを蹴り上げる。

「フガッ!?」と、股間の衝撃に敵兵が硬直する。

 とどめに「ぼええっ!」と、チキの雷ゲロが敵兵の顔に直撃。

 憐れな敵兵は、その場に突っ伏した。


「フ〇ック! 下から何か来るぜ!」


 見ると坂の下から馬の蹄の音と明かりが複数迫って来る。

「ファッキン味方か? てか! 遅いぜ!」


 馬で坂を駆け上がってきたのは、どうやらラーソンの王立兵団のようだ。


 そこで大勢は決した。

 敵は一斉に退却を始めたのだ。

 そこらじゅうで戦闘不能になっている仲間を放り出して、敵兵は我先にと坂の上に向かって逃走していく。


 ラルクが軽く息をつく。

「ふぅ。とりあえず追い払ったな」


 チキが口の周りを拭いながら顔を顰める。

「嫌ですわ。吐きすぎて、お腹が空いてしまいましたわ」


 ピピカの周りには敵から奪った武器が山積みされている。

「ドングリ全部、使っちゃったでしゅ」


 疲れ切ったギルバートは完全に惚けながら、ゆらゆら立ち尽くしている。


 ラルクが坂の上を見ながら言う。

「さすがにバーサクの効果も切れたみたいだな」


「ファ〇ク! 追わなくていいのか? このまま国境を突っ切っちゃえばいいのによ!」

 ファンクはそう言うがラルクは首を振る。

「いや、止めておこう。みんな疲れてるだろうから」


 ラルク達の活躍で、テフラ峠の敵襲は撃退することができた。

 後片付けは、遅れて到着した王立兵団に任せればいい。


「ファ〇ク。けど、奴ら、なんで急に攻めて来たんだろうな?」

「わからない。ハミマ共和国とは停戦中のはずなんだけどな」


 ラルクも首を傾げるように、ハミマ軍が国境を越えて攻めてきた理由が分からない。


「困りましたわね。このままですとハミマに入国できませんことよ?」


「ああ。何か手を考えないとな……」

 そう言ったところでラルクがピピカを見て、何か思いだした。

「そうだ。そういや、ピピカ。お前……」


 ラルクに声を掛けられてピピカは「あい?」と、上目遣いで首を傾げた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらずの下品な攻撃手段よwww [気になる点] ギルバードの屁の匂いは色ごとに違うのかな。
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