最終決戦!
ファンクにケツを貸せと言われてギルバートが顔を赤らめる。
「な、なんですか? 昼間っから」
ピピカがジト目で突っ込む。
「夜ならいいんでしゅかねぇ……」
「フ〇ック! モタモタすんな! 早く尻の穴を嗅がせろ!」
大広間の天井は実体化する召喚獣達に押し上げられ、バラバラと崩壊寸前だ。
床はウネウネと波うち、柱という柱はミシミシと悲鳴をあげている。
ファンクは、ギルバートのむき出しの尻に顔を寄せて怒鳴る。
「ファ〇ク! もっと屈め! 足を開け! よく見えるように!」
「いやだなぁ、もう! 恥ずかしいですよ!」
下半身丸出しで、ポコ〇ンを王冠で隠しただけのギルバート。
その尻にへばりついて匂いを嗅ごうとしている中年妖精。
チキがゲンナリする。
「どういう構図ですの……」
「フ〇ック! 嗅ぐだけだからな! 出すなよ! 絶対に!」
「分かってますよ!」
「ファ〇ク! いいか! いくぞ!」
ファンクが覚悟を決めてギルバートの尻に『もんまっ』と、顔を埋める。
「ひゃい!」と、ギルバートが甲高い声をあげる。
その拍子に『ぷすっ』と、小さく何かが漏れてしまう。
「ファッ、てめぇ! エンッ!」
ファンクが白目を剥いてのけ反る。
そして『バッ、フゥウウン!』と、いつもより大きな音が生じた。
ファンクは大魔王に変身した。
いつもよりはるかにデカい。
大きすぎて室内では立ち上がることができないうえに、膝を曲げ、首を曲げても頭が天井につっかえている。
ファンクは親指を立ててウィンクする。
「ファッキン・待たせたな!」
ネムが目を薄くして呆れる。
「お尻の穴を嗅いでカッコつけられてもねぇ……」
ファンクは大きな掌を広げて皆の前に差し伸べる。
「ファ〇ク! みんな、この上に乗れ!」
それと同時に天井が大きく崩れ落ちてきた。
さらに召喚獣達が爆風とともに一斉に光った。
『カッ! ドッドド、ドドゥド!』
眩い光と爆音の競演に包まれる。
「うわっ!」「ひいっ!」「死むぅ!」
各自の悲鳴も絶叫もかき消されるほどの爆音と衝撃。
それがしばらく続いた。
ファンクの大きな掌に包まれて、どれぐらい真っ暗な中で耐えただろうか?
ふいに明かりが差して、周囲が明るくなった。
気が付くとラルク達はファンクに掴まれて上空に避難していた。
高台を見下ろしながらファンクが掌を広げる。
「フ〇ック! みんな、居るか?」
ラルク、チキ、ネムは3人で抱き合っていた。
ギルバートは庇うようにピピカに覆いかぶさっていたが、フリチン王冠のままだ。
ガルバードは頭を防御する姿勢で、なぜか『おむつ』を履いている。
山賊親分は両脇に着ぐるみを抱えてへたりこんでいる。
「フ〇ック! 見ろよ! きれいさっぱり消し飛んでやがらぁ!」
まるで高エネルギーの波が根こそぎ持って行ってしまったように、高台の上にあった古城は跡形もなく吹き飛んでいた。
残骸すら殆どない。
その代わりに、8体の召喚獣が高台にずらりと並んでいる。
それを見てガルバードが戦慄する。
「召喚獣が……同時に8体だと? あり得ない……」
ギルバートが首を傾げる。
「知らないものばかりですね」
手帳をめくっていたガルバードが答える。
「当たり前だ。どれもこれも伝説級の召喚獣だ。数十年に1回出現するかどうか……もちろん、その力はケタ違いで災害レベルだ」
そのうちの1体にネムが興味を持つ。
「あの6本の腕があるのは何? 昆虫みたいでキモ~い」
手帳をめくるガルバード。
「あれは、『ゲ・リーベン』。尻の穴を執拗に攻撃する召喚獣だ」
「なんですの、それ? 気持ち悪いですわね」
「6本の腕が曲者だ。伝承によると、4本の腕で対象者の手足を拘束して、残りの腕で無防備になった尻の穴を穿り回す……」
その時、1体を残して召喚獣達が四方に飛び立った。
「ファ〇ク! あいつ、召喚獣を解き放ちやがった!」
ガルバードが顔面蒼白になる。
「大変だ! 召喚獣が暴れ出したらハミマは壊滅してしまう!」
「フ〇ック! ハミマだけじゃねぇぞ。ラーソンもサブンも、みんなおしまいだ」
「あのバカ親父……怒りで我を忘れていやがるのか?」
チキがギルバートを名指しで批判する。
「あなたのせいですわよ! 汚いズボンなんか履いているから!」
「ええ!? 僕のせいですか?」
「そうですわよ! これで世界が滅亡したら、どう責任取りますの?」
「ンコで世界滅亡でしゅ」
「ええええ!? それ、僕に言う?」
「ファ〇ク! カロンの野郎は世界を滅茶滅茶にするつもりだったからな。それが早まっただけのことだ!」
「早くクソ親父を止めないと、世界中が召喚獣にやられてしまう! 行こう! ファンク!」
「ファ〇ク! 残った召喚獣は俺がなんとかする!」
「アタシはドラゴン君たちの総攻撃でお兄ちゃんを援護するよ!」
「分かった。チキとギルバート、ピピカは俺についてきてくれ!」
ガルバードも眼鏡に手をかけて頷く。
「自分も力を貸すつもりだ。大丈夫、チビっても良いように、おむつは装着している!」
山賊親分はオロオロしている。
「あのぉ、おでは何をすりゃいいべ?」
「ファ〇ク! お前らは役に立たないから、ブタジャーネとブタジャキンを探してくれ!」
そういえばブタ姉弟とは別行動をしていた。
さきほどの爆発に巻き込まれたかもしれない。
トカゲ弟が嫌そうな顔をする。
「うげえ……兄ちゃん、死体を探すの嫌だね。おいら、グロいのは苦手だよ」
「大丈夫だ。真っ黒こげならグロくない」
「そっか! チャーシューだと思えばいいんだね?」
「それを言うなら焼豚だろ! 間違えてはいけない!」
「え? チャーシューと焼豚は違うのか?」
「ちがう! ペンギンとヒヨコぐらい違う!」
「どっちが焼き豚なんだ? ペンギン? ヒヨコ?」
「普通、焼けば黒くなる。だから焼き豚はペンギンだ」
「ああ! 兄ちゃん! おいら頭がこんがらがってきたよ!」
バカ兄弟に呆れながらファンクが言う。
「フ〇ック! あいつら、どこかで気絶してるかもしれん。魔王だから死なないとは思うが、まだ子供だかんな……頼んだぜ」
チキが心配そうにラルクに尋ねる。
「ダーリン、義父様に対抗する手段は思いつきましたの?」
「フ〇ック! そうだ! このまま突っ込んでもさっきの二の舞だぜ?」
するとラルクは不敵な笑みを見せる。
「任せとけ。秘策ならある」
そしてポケットをポンポンと叩く。
そこでガルバードが真剣な顔をみせる。
「ゲロの女、前に渡した草は持っているか? 私がハミマから持ち出した貴重な草だ」
「ありますわよ?」
「おむつに隠してた草でしゅ」
「よし。では、えんじ色に紫の縞が入った草を使うのだ。真魔王を倒すために」
「あの気持ちの悪い草? 毒ではないですの?」
「違う! あの草は、老化を促進して相手の魔力を奪う効果がある。召喚獣を止めるには術者である真魔王の魔力を無効化するしかない」
「分かりましたわ……」
「ファ〇ク! みんな、準備はいいか? いくぞ!」
そう言ってファンクは『ギュィン!』と、加速して高台に向かって飛行した。
途中でスピードを緩めて山賊一味を下ろし、残るメンバーを城の跡地に降ろす。
「フ〇ック! お前ら、カロンは任せたぜ!」
ラルクがファンクを見上げながら力強く頷く。
「ああ。任せとけ!」
そこに早速、召喚獣が襲ってくる。
武装した馬にまたがる巨大な騎士。
槍を持ち、マントをなびかせる騎士は、オス鹿のような大きな角の兜、金属っぽい鎧は身体と一体化しているように見える。
ガルバードが叫ぶ。
「オーディンだ!」
ラルク達に向かって突っ込んでくるオーディン!
「ファァアアアック!!」
大魔王ファンクが体当たりでオーディンの真正面からぶつかっていく。
『ガッツシャアアアン!』
ものすごい音と振動を伴い、両者は激突した。
ネムが「みんな! 手伝って!」と、大号令をかける。
するとドラゴン達がワラワラと集まってきて、オーディンに襲い掛かった。
「ファ〇ク! 今だ! ラルク! いっけええ!」
ファンクとドラゴン軍団がオーディンを食い止めている間に、ラルクは城の跡地に向かって走る。
「出てこいクソ親父! 決着をつけるぞ!」