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テイムは三代限り?

 真魔王カロンは、槍を投げる構えでギロリとラルクを睨む。

「動くな!」


 言葉によるテイムの発動!


「グッ!」と、ラルクの身体が硬直する。


 近くにいたネムとファンクも同じように硬直する。

「やン!?」

「フ〇ック!?」


「ダーリン! ネムちゃん!」


 ラルクに駆け寄ろうとするチキに視線を向けるカロン。

 今度はチキに向かって命令する。

ひざまずけ!」


「あっ!」と、チキが自らの意思とは関係なく立ち止まり、跪く。


 近くにいたギルバートとピピカも同じポーズを強いられる。

「か、身体が!?」

「あいぃいい」


 山賊一味が騒ぎ出す。

「先生! 先生! 大丈夫だべか!」

あんちゃん、大変だ! 先生がピンチだ!」

「ピンチ、ピンチだ! どうしよう?」


 右往左往うおうさおうする山賊一味。


 カロンは、そんな騒がしい山賊一味を睨んで一喝いっかつする。

「黙れ! 大人しくしていろ!」


「ふぐぅ」と、親分が口をつぐんで、気を付けの姿勢で硬直する。


 しかし、トカゲの兄弟は「大変だ、大変だ」と、グルグルその場を走り回る。

 ヒヨコとペンギンの着ぐるみがドタドタ走り回る様はコミカルだ。


 その様子を横目で見たチキが「もしかして……」と、呟く。


 カロンはラルクに視線を移す。

 そして、「死ねい!」と、ロンギヌスの槍を投げる体制に入った!


 そこでラルクがテイムを発動する。


「なっ!?」

 カロンが、まるで関係のない方向に槍を投げ捨てる。


『カラン』と、槍が床の上を転がる。


「ファ〇ク! いいタイミングだ!」


 カロンが目を見開く。

「なんだと? まさか今のは……貴様のテイムだというのか?」


「だったらどうする?」

 ラルクはニヤリと笑う。


「バカな!? どうやって発動した?」


「さあな? 考えてみろよ?」

 自らの身体が動くようイメージすることでカロンのテイムを無効化する。


「ぐ……まさか、あれから進化したというのか?」


「親父。あんたは、俺のテイムを恐れてるんだろう? グランを使ってテイムの成長を妨げたのが、その証拠だ」


 グランを操って、テイムの成長を封印する術式を太ももに施されたことをラルクは忘れていない。


 カロンは、じっとラルクの顔を見る。

「そうだ。その通りかもしれん」


 意外に素直に認めたのでラルクが拍子抜けする。

「な!? マジだったのか……」


 カロンが小さく首を竦める。

「この特別なテイムの能力は先祖代々のものだ。だが、この能力は気まぐれでな。突然、才能が開花したかと思えば、親子三代でパッタリ途切れたりするのだ」


「必ず遺伝するわけじゃないのか?」


「確かに遺伝する。先祖代々脈々と受け継がれてきたものだ。だが、目立った効果を発揮することができるものは稀だ。それは突然変異的に発生する。しかも、それが三代続くと、しばらくは鳴りを潜める」


「なんだよ、それ。だからなんだって言うんだ?」


 カロンは天を仰ぐ。

「遺伝すると能力が強力になるのだよ。手が付けられんほど劇的にな。父よりは子、子よりは孫、特に男子に限ってその傾向にある」


「親父、じいさんはテイムの能力があったのか?」


「いいや。テイムは使えなかったはず。まあ、犬ぐらいは操れたかもしれんがな」


 ラルクが意地悪く言う。

「はっ! じゃあ、俺の能力に嫉妬してるのか? あんたは!」


「それは否定しない。息子であるお前は、より強力なテイムを持っている」


「へえ、だったら俺に子供ができたら、もっと凄いテイムを持つことになるのかよ?」


「なるだろうな。多くの文献、伝承を調べ尽くした結論だ」


「バカバカしい。そんなことの為に、あんたは俺のテイムを封印しようとしたのか……」


 カロンが答える。

「ああ。今思えば、愚かなことをしたものだ……」


「何をいまさら……」


 カロンは能面のような顔つきで言う。

「愚かだった。あのような回りくどいことをせずとも、殺しておけばよかっただけの話」


「くっ!? クソ親父め!」


「やはり、お前には消えてもらう。この能力を持つものは、ひとりだけでいい」


 そう言ってカロンは、すっと指先をラルクに向けた。

 そして一言。

「死ね」


 次の瞬間、『ザクッ!』と、強烈な衝撃がラルクを襲った。


「え?」と、反応できないラルクの口元から鮮血が一筋。


 何が起こったか理解できないラルクに代わってチキとネムの悲鳴が耳につく。

「ダーリン!」 「お兄ちゃん!」


「な、何を……うぐっ! 痛えな、おい……」


 槍がラルクの背中を貫き、その先端が胸から覗いている。


「フ〇ック!? あの槍、どこから!?」


 それは先ほどラルクがテイムで取り上げたロンギヌスの槍だった。

 床に転がったところまでは記憶にあるが……。


 カロンが冷たく笑う。

「フン。見えない動きを操ることはできまい」


 確かに、カロンは指先を向けただけだった。

 ラルクのテイムはイメージするだけで発動可能だが、今のは防ぐことができなかった。


「ファ〇ク!? まさか、召喚魔法!」


「ククク。テイムだけではないのだよ。様々な魔法を貪欲に吸収したことで、このテイムをより有効的に使えるようになったのだ!」


 チキ達がカロンに命じられたテイムは、すでにラルクが上書きで解除していた。

 チキが半狂乱になってラルクにすがりつく。

 ネムは号泣しながらラルクの頭を抱きしめる。


 ギルバートがパニックになりながら荷物を漁る。

「ななな、なにか! く、薬になるものを!」


だが、豚小僧のピンクの手鏡とか、ピピカが買った羊のお面とか、役に立たないものしか出てこない。


荷物を引っ繰り返して頭を抱えるギルバート。

「もうやだぁ! ガラクタばかりじゃないですかぁ!」


 カロンはニヤニヤしながら尋ねる。

「どうする? 楽にしてやろうか? それとも、このまま苦しみながら死ぬか?」


「フ〇ック! そうはさせるか!」

 

 そう言いながらファンクはふところを探る。

 しかし、例の小瓶こびんが出てこない。

「ファ〇ク!? どこかで落としちまったか?」


 ギルバートが泣きそうになる。

「何やってんですか、ファンクさん! あれが無いと大魔王に変身できないじゃないですかぁ!」


 万事休す! 

ファンクが大魔王になれないとなると、真魔王カロンに対抗する手段がない。


 カロンは顎髭あごひげを撫でる。

「せめてもの報いだ。お前の仲間たちも、あの世に送ってやろう。せいぜい、あの世で仲良くするんだな」


 その邪悪な表情に皆が震え上がる。


 その時、ピピカが動いた。

「えい!」 『ポフン!』


 ピピカの強制交換でカロンの顔面をズボンがバサッと覆う。


「むおっ!?」と、カロンが呻く。


 続いて「うげっ! くさっ!」と、いう悲鳴にも似た声をカロンが上げる。


「フ〇ック!? ギルバートのズボン!?」


 驚いてギルバートを見ると、下半身は裸で、股間が王冠で隠れている。


「え? あ? な、なんですか、これ!?」

 

 ピピカが咄嗟とっさの機転でギルバートの匂い付きズボンとカロンの王冠を強制交換したのだ。


 顔を覆うズボンを取り去ってカロンがわめく。

「なんだ! この汚い物体は!? 臭い! 臭すぎるぞ!」


 股間を王冠で隠しながらギルバートが文句を言う。

「失礼ですね。ひとの一張羅いっちょうらを」


「臭い臭い臭い! うぬぬ! 顔を洗わねば!」


 カロンはラルク達に背を向けると一目散に走り去っていった。


「ファ〇ク! 今のうちにラルクの治療を!」


 とはいえ、ラルクは虫の息だ。


 ロンギヌスの槍は、ピピカの強制交換で抜くことができたものの、背中から胸を貫かれた傷は深く、致命傷だと思われた。


 ギルバートが、ネムの膝枕で苦しそうに呼吸するラルクに尻を向けながら言う。

「回復のガスじゃ追いつきませんよね?」


「フ〇ック! 見りゃ分かるだろ! くそっ! せめて俺が変身できればな!」


 パーティ結成以来のピンチに絶望感が漂う……。



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