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多面ガエル

 多面ガエルの身体に張り付いた小型カエルの口から何かが飛び出してきた!


『バリバリバリッ!』『ブォォオッ!』


 ひとつは電撃、もうひとつは氷のブレスだ。

 ラルク達がバラバラに散ってそれを避ける。


「危ねえ! あそこに突っ込むところだった」

 ラルクが冷汗を拭う。

 いくら3秒テイムのスキルがあっても、攻撃のタイミングが読めなければ喰らってしまう恐れがある。


 そこに間髪入れず、他のカエル口が『ゲポッ!』『グポッ!』と、口を開いた。


『シュシュシュ!』『ズドドド!』

 今度は空気の刃と弾のようなものが飛んできた。

 これも寸前でかわす面々。

 

 ギルバートが表情を強張らせる。

「色んな属性を持っているようですね!」


 ラルクが頷く。

「ああ。団長が言ってた通りだ」


『ゲポッ!』『グォポッ!』『ゲッボッ!』

 次なる魔法攻撃は、水鉄砲、火球、レーザービームだ。


 回避しながらチキが驚く。

「カエルなのに火属性!? どうなっていますの?」


 そこで満を持して本体の多面ガエルが巨大な口を開けた。

『グォッポ!』


 そして結構な量の黄色い液体を吐き出した。

 一行は左右に分かれて大きく回避行動をとる。


『バッシャン! ジュジュジュ!』


 黄色い液体は、地面に落ちるなり、煙を上げて周囲を激しく溶かした。


 ラルクが直ぐに気づく。

「酸だ! これは喰らうとマズいぞ!」


 多面ガエルの攻撃魔法は多彩だ。

 小さなカエル口が放つ魔法は、それぞれ属性が異なる魔法。

 そして極めつけは本体の酸による攻撃。


「ファッキン! これじゃ近づけないぜ!」


 ギルバートがキリっと決め顔を見せる。

「逃げましょう! 無理ですっ!」


 しかし、ラルクは冷静だ。

「ピピカ、天井から垂れてくる水が見えるか?」


 ラルクの指さす方を見てピピカが頷く。

「ああ、あれでしゅね。見えましゅ」


 多面ガエルの真上には鍾乳洞の垂れ下がった岩から絶えず水滴が落ちている。


 次にラルクはチキに声を掛ける。

「チキ、ドラゴンの実で爆弾を吐き出せ」


「承知しましたわ、ダーリン。でも、とても届きませんことよ?」


「大丈夫だ。ピピカ、分かるな?」

 ラルクの言葉を聞いてピピカが察した。

「分かったでしゅ! 任せるでしゅよ!」


「よし! やれ!」


 ラルクの指示でチキがドラゴンの実を口に放り込む。

 そしてゴリゴリと噛んだところで「苦っ……」と、顔を顰め、吐きそうな顔を見せる。


「ピピカ! 頼んだぞ!」

 そう言ってラルクは3秒テイムのスキルを発動する。


 カエルのポーズをとって顔を上げ、天井に向かって大きく口を開く。


 ラルクの動きに多面ガエルがシンクロを強いられる。

 多面ガエルの本体は大口を開けて天井を見上げて、動きが止まった。


 その間に、吐き気を我慢できなくなったチキが「うげっ!」と、火球を含んだゲロを吐き出した。

 すかさず、ピピカがそれをチラ見する。

 続いて水滴に目を移して「エイッ!」と、強制交換のスキルを発動!


 ピピカは、垂れ落ちる水滴とチキのゲロを交換した!


 多面ガエルの上から、水滴の代わりにチキのゲロが落ちていく。

 しかも、それは3秒テイムで上を向いて大口を開けていた多面ガエルにピンポイントで向かっていく!


「いけっ!」と、ラルクがゲロの行方を見守る。


 すると、多面ガエルはチキのゲロを『スポッ』と、全部飲み込んでしまった。


 1秒、2秒、3秒……。

『ババババン!』


 突如、多面ガエルの口が爆発した! 

 というよりも、体内で爆発したものが口から溢れてきたように見える。


『グェゲロゲコッツ!!』

 多面ガエルは口から爆炎と黒煙を噴き出して引っくり返った。


「ファッキン! やりやがった!」

「完璧ですわ! ダーリン!」

「あわわ、あれで良かったんでしゅよね?」


 ラルクが多面ガエルの亡骸を眺めながら一息つく。

「ふぅ。うまくいった。いい連携だったな」


「フ〇ック! 考えやがったな! 遠距離魔法が使えねえ弱点をカバーしやがった」

「ああ。ピピカの能力は使えるだろ?」

「ファッキン。だから仲間にしたがってたのか! 納得だぜ」


「あら。そういえば、あのヘタレが居ませんわね?」

 チキがギルバートの不在に気が付いた。


「ファッキン! あそこで気絶してるぜ」


 見ると離れた所で大の字になっているギルバートの姿があった。

 とても元貴族とは思えない、だらしない格好だ。


 ラルクが苦笑する。

「あいつ……なにやってんだ」

 

 チキが呆れ顔でツカツカとギルバートに歩み寄り、そのケツを蹴とばす。

「いつまで気絶してんのよ!」


「あっ! ああっ! ……え?」

 目を覚ましたギルバートが、きょとんとする。


「ファ〇ク! なんで気絶する? 俺達が勝ったんだぜ?」


「そ、それは……カエルが火を吹いたから、終わったって……」

 ギルバートはラルクの作戦をまるで理解していなかったらしい。


 とはいえ、難敵である多面ガエルを倒してしまえば、あとは楽勝だった。


 流石のチャム族も、多面ガエルを倒したラルク達には手出しが出来ず、軟禁されていた手品師は無事に取り返すことができた。


 これでピピカを仲間に加えることができる。


 新たなパーティで大型モンスターを倒せたことにラルクは手ごたえを感じていた。

「さて、それじゃ、町に戻って『ざまあ』しに行くか!」


 勿論、その相手は裏切り者の元白魔導士だ。


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