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究極魔法による迎撃

 ネムの連れてきたドラゴンに分乗して、高台にそびえる古城に向かう。


 ラルクはチキ、ファンクと一緒のドラゴンに乗り、先頭を飛ぶ。


「フ〇ック! やっぱ情報どおりだな。警備が多いぜ!」


 古城へと続く道の途中、あちこちでハミマ兵がドラゴンに襲われている。

 ネムの言いつけを守って、兵士だけを攻撃するドラゴン達。


 兵士達は逃げ惑うばかり。

「うわああ! なんなんだよ!」


「誰か対空砲火を! 魔法でも大砲でも何でもいい! 誰かっ!」

「いででで! 尻を噛むな! 尻を!」


 ドラゴン達に強い殺意はない。

 ネムの意思を反映して『お仕置き』しているという感じだ。


「重い重い! 踏まないでぇ! 足をどけてくれぇ」

「熱っ! ああ! 砲台が溶けちゃったじゃないか!」

「いいかげん離してくれようぅ! いつまで引っ張るつもりなんだ!」


 そんな様子を上空から眺めてチキが、ほほ笑む。

「ネムちゃんは優しいですわね。地上の兵士さんたち、楽しそう」


「ファ〇ク! 楽しんではいないと思うぞ?」


 前方には高台。その上には目的の古城。


 古城に向かう螺旋らせん状の坂道には大砲がずらりと並んでいたが、それを操作する兵士は誰も残っていない。


 ドラゴン達が突破口を確保してくれているうちに古城に向かう。


 飛行するドラゴンの背中でファンクがラルクに尋ねる。

「ファ〇ク! 勝算はあるんだろうな? カロンのテイム。対策はできてるのか?」


「いや……色々と考えてみたが、正直、確勝とまでは言えない」


「大丈夫ですわ。ダーリンが勝ちます! 私たちが全力でお守りしますもの!」


「フ〇ック! お前のテイムとカロンのテイムが重なったらどうなるんだろうな?」


「分からない。テイム同士がバッティングした場合は強い方が勝つんじゃないかな」


「ファ〇ク、それは同時に発動した場合だろ? 力の勝る方の効果が出るってことだな?」


「おそらくはな。タイミングをずらして上書きするのも手だ。奴のテイムで操られている時に、強くイメージしてテイムの上書きをする」


「ファ〇ク……問題はすぐに上書きできるかどうかだな」


「ああ。スピード勝負だ。奴が魔法攻撃してくるまでの間に上書きして回避しなくちゃならない」


 ワルデンガ島で初めてカロンのテイムを食らったとき、ラルクがそれを上書きして逃れるには相当の力を要してしまった。


「大変ですわね……」


「それに奴のテイムをすべて解析しているわけじゃない。今のところ分かっているのは、言葉で操れること、それから命令の有効期間が長いということだ」


「ファ〇ク! それにインタバルが分からないんだよな。最悪、連続で発動できるとなると、ラルクが上書きで支配されるのを免れても次を食らってしまう!」


「そうだ。こっちは3秒が限界。奴が言葉を発せないように操れるのはその3秒だけだ。幸い、俺のテイムはインタバル5秒で次のテイムが繰り出せるが……」


「空白の5秒ですわね。そこで相手に命令の言葉を発せられると……」


「ああ。ずっと奴の口を塞いでおく訳にもいかないしな」


「ファ〇ク! しゃべらせないってことか。それしか対策はねえか」


 そこでチキが思い出したように言う。

「それなんですけど、ひとつ、気になることが……」


 その時、チキの言葉を遮るように『ドヒュッ!』と、青白い火の玉が前方から飛んできた。


 ドラゴンが驚いて体勢を崩す。


「うわっ!」

 慌てて手綱を引くが、ドラゴンが宙で一回転して失速する。


「あれぇえ!」と、落ちそうになるチキの腕をラルクが掴んで引き上げる。

「大丈夫か!? チキ!」


「ええ、なんとか……」

「ファ〇ク! 城の方角からだ!」


「今のは魔法か?」

「ファッ〇! だろうな。って、また撃ってくるぜ!」


 城の方から炎や雷などの塊が弾のように飛んでくる。


 ガルバードが飛竜を寄せながら叫ぶ。

「魔法部隊だ! 国中の精鋭を集めた魔法部隊に違いない!」


「あの穴みたいな所から撃ってきているのか」

 城には外部からの敵に対抗する為に幾つも砲撃用の穴が設けられている。


 双眼鏡を覗き込んでいたガルバードが青ざめる。

「ま、まさか!? 大司祭様! 魔法大学の学長! 伝説の赤魔導士まで!?」


「なんだ? そんなに凄い連中なのか?」


「凄いなんてもんじゃない! 引き返した方がいい! 絶対に敵わない!」


 ファンクが小瓶のふたを抜きながら呟く。

「フ〇ック……邪魔くせえ」


 ファンクは瓶の中身の匂いを嗅ぎながらドラゴンから飛び降りる。

「エンッ‼」 『バフン!』


 そして大魔王、本来の姿に変身した。


 ちょうどそこに魔法部隊の集中砲火が襲ってくる。


『ババババッ! ズドドドッ! バンバンバンババーン!』


 ありとあらゆる属性の攻撃魔法が大魔王ファンクの胸板で炸裂する。

 ファンクの周りで光と爆炎が、ごった返す。


 ラルク達のドラゴンはそれを盾に空中で待機する。


「危ないところだった。ファンク! 助かるよ!」


「ファーック! こんなもん屁でもねえ。ギルバートのがよっぽど効くぜ!」


 それを聞いてギルバートがえる。

「さりげなく侮辱しないでくださいよ……もう」


「事実でしゅ」

「臭すぎですもの。侮辱でもなんでもありませんわ」


「みんな容赦ようしゃないなぁ」と、ラルクが苦笑する。

 それにつられて笑う面々。


 呑気のんきなラルク達とは対照的にガルバードは緊張しっぱなしだ。

「な、なんだよ、お前ら……相手が誰か分かってんのか?」


「知らん」

「知らないでしゅ」

「知りませんわ。魔法使いなんでしょう?」


「そんなに凄いんですか?」


 ギルバートの質問にガルバードが怖い顔をする。

「凄いなんてもんじゃないっ! あんな人たちを敵に回すなんて……ん?」


「どうした?」


 ラルクの問いを無視してガルバードが目を見開く。

「あ、あ、あれは……まさか!? 究極魔法!?」


 前方に目を向けると古城の付近で紫色の人魂みたいなものが一点に集まっている。


 双眼鏡を持ったままガルバードがガタガタ震えだす。

「究極魔法の競演だと!?  大司祭様、魔法大学の学長、伝説の赤魔導士が、それぞれの奥義を!? まずい! 一刻も早くこの場を離れないと!」


「そんな時間はないだろ」と、ラルクは他人事のように言う。


「フ〇ック! ほぉ~ん」

 ファンクは鼻の穴をコチョコチョしながら動く気はないらしい。


「終わった! 確実に死ぬ! ああっ! もう駄目だ!」


 ガルバードの様子を見てギルバートが心配になったのかピピカに言う。

「強制交換でなんとかなりませんか? 瞬間移動で逃げるとか……」


 もたもたしている間に、古城の方から究極魔法3連発が飛んできた。


 禍々《まがまが》しく赤黒い巨大な火球。

 竜をかたどった青白い電撃の束。

 巨人のてのひらのような紫色の大きな物体。


 ガルバードが目をつぶる。

「しまった! おむつ、履いてない! おがぁちゃーん!」


 その時、鼻をムズムズさせていたファンクが大きく息を吸い込んでクシャミをした。

「ファックショォオオオオオン!」


『ズオッ!!』


 猛烈な風、というか衝撃波が周囲の空間を歪ませた。

 

「うわわわっ!」

 まるで重力が後ろから不意打ちしてきたような感覚。


 ファンクの『くしゃみ』は、衝撃波となって究極魔法をかき消し、古城まで達する。


「ファ〇ク! 鼻水出ちまったぜい!」

 鼻水を垂らしながら「てへっ」と、笑うファンク。


「汚いでしゅねぇ」

「鼻毛も出てますわよ?」

「誰かファンクに鼻紙を……ああ、そんな大きな紙はないよな」


 まるで危機感のないラルク達を唖然としながら見るガルバード。


 究極魔法の3連発など、まるで無かったことになっている。


「な、なんなんだ……お前ら……」


「ファンク、このままじゃ近づけない。片付けてくれ」

「ファ〇ク! だな。そんじゃ、反撃すっか!」


 そして、ファンクは左手を前に突き出して中指を立てる。

「ファ〇ク・ユー!」


 すると、ワンテンポ置いて、城の周りで『ズオッ!』と、オレンジ色の光が生じて、城全体を包み込み、激しく揺さぶった。


 建物の一部が重力に逆らうように光の中で浮き上がるのが見える。


 そして『ガガガーン!』という音がここまで到達した。


「フ〇ック!? ちょいとやりすぎたかな? 手加減はしたつもりなんだが?」 


 オレンジの光が収まった古城は沈黙している。

 辛うじて、そのシルエットは城のていを成しているが、ボロボロなのは遠目にも分かる。


「原型は留めているようですわね」

「あのクソ親父が出てくれば話は早いんだがな」


 今の攻撃で真魔王カロンが死んだとは思えない。


「ファ〇ク! 行こうぜ」


 ファンクを先頭に、ラルク達は城に接近する。


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